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第2話「大丈夫、もう教会へ行く準備はできてるよ父さん」

本日2話目の投稿です、1話目をお見逃しなく。

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 勇者達は以前立ち寄った村があった。とびきり綺麗な景色があるわけでも、有名な食べ物があるわけでもない。しかし、村人達も親切で、子供達の笑い声がよく聞こえてきていた。


 村の唯一の宿屋は小さいけれどご飯もおいしく、調理担当の女将は美人で明るい人だった。


 冒険者を辞めて宿屋をやろうと言った店主は料理の腕がからっきしで、その筋骨隆々とした腕で受付、ウェイターをしていた。


 そこがこの宿唯一の不満だと夕食時に他の宿泊客と笑った事を覚えている。店主本人も自慢の右上腕二頭筋をヒクつかせながら笑っていた。


 モンスター退治の遠征で、野営をした後の朝食に携帯食を食べていた勇者達は、そんな村の宿を思い出し唯でさえまずい携帯食がさらに味気ないものとなり、


「味気ない携帯食の責任はあの店主にある! 女将にうまい夕飯を作ってもらおう!」


 と満場一致で行き先をその村へ変更した。


 陽が落ちる少し前、村に着いた勇者達が見たものはドラゴンにより更地にされた村だった。


 勇者達が急いで宿屋があった場所に向かうと、そこには店主と女将が呆然と立ちすくむ姿があった。


 勇者達の気配にこちらを向いた店主は、泣き笑いのような顔でこう言った。


「すまんなぁ。飯食わす事も、ベットで寝かしてやる事もできねぇや。一瞬で宿がなくなっちまってなぁ」


 絶景はないが美しく平和な村だった。


 名産があるわけではなかったが、温かい料理があった。 


 明るく笑顔の絶えない夫婦だった。


 こんな顔をさせるドラゴンが許せなかった。


 これからもこんな顔をする人が増えて欲しくなかった。


 勇者達はドラゴンを倒す旅に出た。


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「ソフィーア、どうしたの?」


 紫色のストレートヘアーをポニーテールにし、メガネを掛けたメイドさん。ソフィーアに問いかける。


「昼食の準備が整っております。皆様もそろそろ向かわれているかと思いますので、ヴェルナー様もご準備をお願いいたします」


 ソフィーアがメガネのつるを指で持ち上げながら僕に伝える。

 もうそんな時間だったか。僕はわかったよ。と返事をし、本棚へ本を戻しソフィーアの後ろをついて歩く。


 トコトコと廊下に響く足音がひとつ。なぜ僕の足音しか聞こえないのだろう、謎だ。


 紫色のポニーテールが揺れているのを見上げる。僕が小さいのもあるが、ソフィーアは身長が高い。165cmほどあり、スレンダーな体型をしている。15歳で成人のこの世界で13歳からメイドとして家で働いている。一度父に理由を聞いてみたが、教えてもらえなかった。


 ソフィーアが笑っている所を見たことがない事や、言葉にあまり感情が篭っていない事に何か関係があるのだろうか?


 そんな事を考えて歩いていると、大きな扉の前に着く。ソフィーアが扉を開けると10人ほどが同時に食事を取れるテーブルが見える。


「ヴェル、遅いぞ。また本を読んでいたのか? 今日は誕生日なんだから色々忙しいぞ」


 キラキラとした灰色の髪、少し困ったように僕を注意する顔すらキラキラと爽やかな父フリッツ。ガッシリとした体格ではあるがムキムキではなく、物語に出てくる主人公のようである。


「大丈夫、もう教会へ行く準備はできてるよお父さま」


 そう言っていつものおばあさまの隣の席へ座る。


「まぁまぁフリッツ、ヴェルくんはいつもマイペースだけれど約束を破った事はないでしょう?ね、ヴェルくん」


 女神のような笑顔で僕を庇う母マリーナ。キラキラと光る金色のロングヘアーで整った容姿で怒った所は見たことがない。いつも笑顔で僕たちに笑いかけてくれる。


「マリーナさんの言う事はもっともじゃ。まぁ、もうちょっと外を走り回ってもいいと思うがの」


 祖父ハルトムートは父と同じ灰色の髪をオールバックにし、父とは逆に筋肉質の腕を組み眉間にちょっと皺を寄せている。


「本を全部読み終わったら、そうしてみようかなぁ」


 僕は苦笑いをしながら、おじいさまにそう答えながらそっとおばあさまの方に視線を送り無言で助けを求める。


「あらあら、あなた? ヴェルはまだ5歳になったばかりじゃない。可能性は沢山あるわ。今は好きなことをさせたっていいじゃない」


 小柄で黒髪をお団子にまとめ、目を細め笑っている祖母アルマにそう諭され、ぐぬぬとおじいさまの勢いが止まる。おばあさまにありがと。とアイコンタクトを送りほっと一息つく。


「ヴェルのマイペースさの行く末のお話もいいですが、司教様とのお約束もあるでしょう?それに私もお腹が空きました」


 父の爽やかな顔と母のキラキラした金髪を持つ兄アルフォンスが、一番まともな事を言う。さらにちょっとした可愛さもアピールしていく、イケメンすぎてつらい。


「アルフォンスの言う通りだね、じゃあ食べようか」


 アリーセ様への祈りを捧げ現在の僕の家族、ツァイス辺境伯家の食事が始まる。

初投稿記念キャンペーン中。本日3話更新予定!

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