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5,マル被は・・・収集敵と末裔に坊主か

「牛丼屋の店長、犯行時間には店で勤務中でした」



(丼に牛丼屋の店長)


(やっぱ安易過ぎ)



「そうだろうな」



(でしょー)



「店の丼は使いませんよ」

「関良子と愛人の方はマル害に内緒で多額の保険金を掛けていた」

「保険金目当の犯行」

「奥さん不満だらけだったからな」



(愛人と共謀)



「二人、任意で引っ張りますか」




「その時間にはホテルにいました」

「ホテル・・・お一人で」

「彼と一緒でした」



(ラブホですからね)



「金子正次さんですか」

「調べてもらえばわかります」

「お二人でホテルですか」

「そうです・・・何がいけないの」

「まあ」

「それよりも怪しいのは招き猫の収集敵、ライバルよ」

「招き猫の」

「オークションで張り合ってる同じ収集家」

「収集敵」

「競り落としたり競り落とされたり何度もしてたわ」

「その人とトラブルでも」

「二週間前にも相手が欲しがってた物をわざと値をつり上げって」

「旦那さんがつり上げた」

「ええ、三千万で買わせたって喜んでたわ」



(ひぇー、招き猫に三千万!)



「終わってから、相手が殺してやると殴りあいの喧嘩になったって」



(それが動機)


(わかりやすーッ)



「相手が殺してやると」

「それから嫌がらせの電話も何度かあったわ」



(おまけにイタズラ電話)


(決まりかな)



「電話ですか」

「あの男よ、だから私は関係ないわ」



(まあ何でも話してくれる事)


(疑いを晴らしたいもんね)



「その男の名前は」

「確か・・・大井次郎って言ってた」




「オークション会社に問い合わせたら住所は下北沢」

「下北か」

「大柄な、マル害と同じ背格好の五十代だそうです」


「逮捕した!」



(びっくりした!)



「何ですか係長」

「連続強盗犯のマル被(被疑者)を逮捕したそうだ」

「逮捕された」

「山さんのヤマもこれで解決だな」



「山さん、連続強盗のマル被が連行されて来ましたよ」



(あの男かー)



「小柄だな?」

「そうですね、弱そうです」

「俺達も取り調べ覗いてみるか」

「はい」



「あいつ、あっさり歌っちゃいましたね」

「しかし、認めたのは三件だけ」

「豪徳寺はやってないと言ってましたね」

「関のおっさんを襲うには無理がある」

「小柄だし体格負けしてます。自分ならやりませんね」



(下手したら逆に殴られちう)



「山さんの方も解決しちったかな」



(あッ!鑑識の真田主任だ)



「まだだな」

「無駄だったかも知れないが、これ」



(何すかその書類)



「頼まれてた豪徳寺の現場にあった動物の足跡の結果」



(分かりました!)


(犬猫じゃないすよね)



「狸のだった」



(やっぱり)



「狸、町中に狸がいるのか」



(山さん知らないしか)



「います。ハコにいた頃、庭に狸がいると通報が何件かありましたから」

「そうかー」

「豪徳寺にいてもおかしくないです」

「狸ねー」



(ああッ!もしかして)



「そうか狸だ・・・ちょっと行ってきます」

「鬼平、どこ行くんだ」

「豪徳寺で確かめたいので行ってきまーす!」

「何だー、あいつ慌てて飛び出して行きやがった」




(縁の下だな)


(お堂の縁の下か)


(わーッ!蜘蛛の巣だらけ)



「鬼塚さんでしたか、どうしたんですか」

「駅前の・・・この前はお疲れ様でした」

「泥だらけで何してるですか」

「探し物です」

「ええ」

「巡回中でしたので寄ってみたんですが」

「もしかして狸が窃盗事件のマル被じゃないかと思ってね」

「強盗?・・・手伝います」

「ありがとう」



「あった!ありました!」

「そのビニール袋ですか探し物は」

「やっぱり狸がマル被でした」

「良かったです」

「マル害が買った鴨肉が入ってたのでしょう」

「その中に」

「ビニール袋ごとくわえてここまで運んだ様です。狸さん」




「財布でました。盗難のマル被は狸です」

「狸の犯行か」

「はい」

「所で財布の中身葉っぱに化けてなかったか」



(まさかー)



「狸、逮捕しますか」

「まあなーッ」

「でも山さんの思った通りでしたね」

「ああ、あの小柄な強盗犯には始めから無理があった」

「三件ともマル害は女性」

「しかも脚を強打して怯んだすきに金を奪ってる」

「凶器も金属バットだし」

「関のおっさんは百八十五センチと大柄。強盗犯は百六十センチだ」

「襲うには獲物が大きすぎますよ」



「鬼塚くん」

「立花ハコ長(交番の班長)、どうしたんですか」

「自分が非番の時に山本刑事と来られたと聞いたので寄ってみた」

「立花さんお元気でしたか」



(山さん、知り合いだったんだ)



「やー、久しぶり」

「確か・・・先輩」

「ああ、今年定年だよ」



(ハコ長、半人前でご迷惑掛けました)


(有難うございました)



「わざわざすいません関孝三の事で何かありましたか」

「事件と言うか、天狗堂いや関質店で騒ぎがあったんでね」

「わざわざすいません」

「隣の住民が質屋に強盗が入って騒いでいると通報があって」

「強盗ですか」

「店に到着した時、二人が返せ返さないと口論中でした」

「金銭トラブルですか」

「店に入ると話を止めて。何も無かったと」

「聞かれたらまずいもめ事だったんでしょか」

「二人とも何もなかったと、事件にもならずでしたので調書も有りません」

「そうでしたか」

「でも、相手の名前と住所を聞いておいたので」

「たすかります」

「大柄な男で、関孝三と同じ位の背丈でした」

「お手数お掛けました」

「名前と住所だけで申し訳ない」

「いやー助かります」

「金田広司、住所は調布です」

「もしかして母屋(警視庁)が捜査してる線かも知れんな」

「母屋ですか」



(母屋の事、山さんやけに詳しいな)



「後で聞いてみる」

「それじゃ私は失礼します」

「立花さん、有難うございました」



(そうだ!)


「気になる事を聞きました」

「何だ」

「豪徳寺の住職さんが話してくれたのですが」

「やっぱり問題の多いおやじだなマル害。今度はどんな事件だ」

「豪徳寺で開催されたイベントの時なんですが」

「イベント、豪徳寺で・・・招き猫のお祭りか何かか」

「いえ、歴史関係です」

「歴史・・・豪徳寺に関係のある歴史」

「はい、彦根と水戸のイベントです」

「こりゃまた随分と大掛かりだな」

「豪徳寺は代々彦根藩井伊家の菩提寺です」

「ああ、桜田門外の変で暗殺された大老井伊直弼の墓もある」

「ええ」

「そのいわば敵同士が何で一緒にイベントしたんだ」

「和解のイベントです」

「ほーッ」

「彦根と水戸の遊び心と洒落の観光イベントだったそうです」

「そんなイベントにマル害がなんで参加したんだ」

「マル害は関係者だったんです」

「関係者?」

「襲った水戸藩元浪士で首謀者の関鉄之助の遠縁だそうです」

「出身は水戸か」

「水戸です」

「だから天狗堂と立花さんが言われてたのか」

「水戸の天狗党ですか」

「トラブルの相手は誰なんだ」

「桜田門外で死んだ井伊家家臣の末裔だそうです」

「マル害に殴り掛かった」

「いえ、マル害が殴り掛かったんです」

「その末裔さんは」

「名前は今井信一、都内在中です」

「でも、恨むのは襲われて死んだ方じゃないのか」

「それが襲った浪士達も後で捕らわれて打ち首になっているんです」

「鬼平さん歴史に詳しいな」

「歴史小説好きでしたから」

「やっぱりトラブルの多いおっさんだ」

「そうですね」

「トラブルメーカーって事・・・収集敵と桜田門外の末裔と盛り沢山だな」




「母屋が内偵していたのはマル害が裏でやってたヤミ金融だったぞ」



(山さん、母屋に特別なルートがあるんだ)




「その客リストがこれだ」



(ええー、リストまで手に入ったんですか)


(随分太いパイプだ)



「中に、立花さんの言っていた金田広司の名前があった」。

「調べてみますか」

「ああ」




「あの寺です」

「金田広司は住職だったな」

「ええ・・・誰か出てきました」

「奴が金田広司か」



(怪我でもしたか、足引きずっる)



「寺には坊主は一人ですからあいつですね」

「立花さんが言ってた通りタッパがあるな」

「金田は幼稚園や居酒屋も経営してるそうです」

「坊主も多角経営か」

「儲かってるみたいですね」

「どうかな」

「駐車場には外車が三台もありますよ」

「なーに、内情はどうだか」

「えッ」

「資金繰りはキューキューかも」

「何で分かるですか」

「ヤミ金で借りるくらいだからな」

「よし、お話を聞きに行くか」



「三軒茶屋の関質店に行かれましたよね」

「ええ行きました」

「事業の事で相談に、それが何か」



(闇金の相談かー)



「関さんの事件ですが、ご存知ですよね」

「ええー新聞で」

「豪徳寺に行かれた事は」

「宗派が違いますから豪徳寺さんには行った事はありません」


「足、怪我でもされたのですか」

「ええ、庭で転んだだけです」

「所で牛丼はお好きですか」

「えッ、食べますよ」

「そうですかー」

「たまにですけど」

「所で、事件の時何処にいらっしゃいましたか」

「アリバイですか」

「念の為です」

「映画を観てました」

「どちらで」

「下高井戸シネマです。入場券の半券あります」

「半券」

「これです」

「拝見します」



(こいつ、左利きだ)


(どれどれ)




「山さん、アリバイありましたね」

「半券か、あんなものどうにでもなる」



(えッ!)



「あの半券には日付だけで時間はなかった」


(さすが山さん)



「奴さん待ってましたと出しやがった」

「そうでした」

「それにわざわざ半券を持っているのも怪しい」

「普通は捨てちゃいますよね」

「後で使う目的ならとっておく」



(確かに)



「奴のアリバイは百%じゃない」

「本ボシをあげるまでは疑惑が一%でも残っていれば疑ってかかれですね」

「そうだ。まっゆっくり調べさせてもらうさ」

「はい」

「次のマル被を調べるぞ」

「はい、下北ですね」




(すげー)



「山さん、ここです」

「随分と大きな家だな」

「大井次郎は近所では有名な資産家らしいです」

「貸ビル業か」

「下北沢駅前の再開発で大金が入った様です」

「金がある所には金がを吸い寄せられる」

「三千万位で危ない橋は渡らないかもしれませんね」

「いや、そう言う奴の方が金に固執するものだ」

「そんなもんですか」

「金の恨みは根が深い、何をするか分からん」

「へーっ」

「奴さんの顔を拝んでいくか」


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