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1,これって事件ですよね

(ハコ勤務から世田谷東署の刑事課勤務に異動となった)


(ああ、ハコって交番の事)


(空き巣犯や下着泥棒を逮捕した功績はなし)


(でも、ばーあちゃん達には人気があった)


(暇潰しの相手をしてあげてたからだろう)




(体育会系でもなく)


(文系卒)


(なのに就職したのは場違いな体育会系の仕事場)



(友人からはお前には無理だと笑われた)


(ゼミの教授からも警察に就職するなら国家公務員一種試験を受けて警察キャリアを目指せと言われた)


(体力に自信があった訳でもなく)

(警察学校でも持久走ではいつもビリケツ)


(柔剣道は一度も勝てず)


(それでも何とか警官になれた)



(それまで警官に拘った訳を友人に聞かれたが)


(その訳は誰にも話していない)



「ちっと待って・・・ッと」


(何ですか係長)


「誰もいないのか・・・みんな捜査に出ていないのか」


(俺いますけど)


「仕方ねーお前でいいや、鬼平ちょっとこい」


(俺、鬼塚純平)


(課内では皮肉を込めて「鬼平」と呼ばれてる)


(一番下っぱの成り立て新米刑事だ)



(南田係長に手招きされた)


「はい」


「受付にお客様が来てるから取りあえずお前が話を聞いてこい」


「はいわかりました」

「いいか、話を聞くだけだぞ余計な事は何もするな」

「はい」


(仕事は課内の資料整理)

(現場の聞き込み)



(一人前の刑事みたいで聞こえはいいが)

(聞き込みは二人一組で行う事と決められているからだ)


(人手のない時の数合わせ、ただのお供だ)


「それから、お客様に失礼のないようにしろ」

「はい」


(分かってます)


「署長に言われてるんだ警察もサービス業だからな」

「はい」

「いいか忘れるな何もするな」

「わかりました」



(受付に三十代後半の男が待っていた)


「どうぞお座りください。お話をうかがいますので」


(話を聞くだけ)


「どうしました」

「死んだはずの妻から電話があったんです」

「電話ですか、奥さまから」


(まさかー!)


「ええ」

「亡くなられた奥さんとお話しになった」


(ウソだろ)


「本当なんです!」

「はい、分かってます落ち着いてください。奥さんとお話しになったのですね亡くなられた奥さんと」


「話はしなかったのですが・・・でも妻からの電話でした」


(そうだろう)


「それじゃ直接お話にはなっていないのですか」


(当然だろ)


「でも、私のケータイに妻のケータイ番号が登録してあって、電話は妻からのだとわかったんです」

「ケータイからですか」

「着信音が鳴って画面を見ると妻の名前が・・・」


「これです、これ」


(本当かよ)


「でも何も話されなかった」


「ええ、私が出ると電話が切られたんです」

「向こうが切った」

「妻の名前を呼んだのですが切れたんです」

「そうですか・・・」


「本当なんです」


(他の署に相談したが勘違いだろうと取り合ってくれなかったらしい)


「本当なんです刑事さん」




「何だよ、まったくしょうがねーなッ」

「・・・」


(そんな事言ったって)


「話を聞くだけで何もするなって言っただろう」

「・・・」


(これ事件かもと思って)


受け付けちゃって・・・しかも幽霊からの電話かーァ、テレビのワイドショーじゃないんだ。警察で扱う話かよ」

「・・・」


(でもやっぱりこれ事件ですよ)


「受理して何にもしなかったら文句言われるじゃないか、この忙しいのにどうするんだよ」


(でも・・・)



「後始末は私がやりますよ」

「そうだな、山さんに責任とって後始末やってもらおうか」


(お帰りなさい山さん)


(責任とるて何のことですか?山本さん)


「山さんに説明して後始末してもらえ」


(山さんは刑事課最古参のベテラン刑事)



「今時プリペード式の携帯電話か、珍しいな」


(プリペモバイルです)


「それにチャージ済みのプリペードカードも一緒に奥さんのお棺に入れたそうです」

「そうか・・・」



「自宅で納棺の時、内緒で奥さんの使っていたケータイを入れたと言ってました」

「そのまま焼き場で遺体と一緒に携帯電話も焼かれた筈だと言う事だな」

「はい」

「その携帯電話から旦那の携帯電話に電話が入ったて話しか」

「はいそうです」


「旦那は何で誰も居ない時を選んでお棺に携帯電話を入れたんだ」

「お棺に金属など余計なものは入れない様にと葬儀屋に言われたそうです」


「すると電話の相手は幽霊か」


(そこがなんか引っ掛かっちゃって)


「幽霊が電話を掛けるなんてあり得ませんよね」


(だから事件だと思って)


「そりゃそうだ」


「歴史小説によく墓荒らしの話が」

「ピラミッドの盗掘とかか・・・」

「日本では墓男が墓を掘り起こして中の金品を奪う事件がありますから」

「それは昔の土葬時代の話だろ。田舎でも今じゃ火葬だ。墓泥棒なんかあり得ない話だ」

「でもお棺に入れたケータイが火葬になる前に抜き取られていたとしたら」


(事件ですよね)


「盗難事件か、それとも旦那の一人芝居って事もある」

「どっちも事件ですよね」

「ああ、事件だな」


「盗難事件だとしたら自宅で納棺した時から次の日の葬祭場で火葬場に出棺するまでの間ですよね」



「棺桶に釘が打たれるまでの間だな犯行可能なのは」


(事件ですよ)


「闇でケータイ欲しがってる連中奴はいますから盗む価値はあります」

「旦那が携帯電話を入れた所を犯人が見ていた」


「ええッ」


「ちょっと捜査してみるか」

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