第2話:Laknoff連隊
広い大海原。
遠くには“メトロポリス”が見れる。
ノイズが聞こえ、
一番先頭を走る船“Laknoff号”の無線が音声をキャッチした。
『こちら“メトロポリス”監視塔。』
船を操縦しているウィルバー船長にかわり、
となりに座っている女性が無線機をとった。
『こちら“メトロポリス”監視塔。そちらは?』
「こちらLaknoff号。我々の入国を許可させてもらいたい。」
『数は?』
「125人。」
『国は?』
「アメリカです。」
『感染被害は?』
「今のところ報告はない。」
女性がやりとりをしている間、
連隊の右端の船に動きがあり、
猛スピードでメトロポリスに進んでいった。
『待て!まだ入れると許可はしていないぞ!』
監視塔の職員が声を荒げ始めた。
「クソッ!エヴリン、無線を!」
職員の異変に気がついたウィルバー船長はすぐさま女船員からマイクを奪い取り、
走り出した船、“dv:FISH号”に連絡をとった。
「dv:FISH!dv:FISH!こちらLaknoff!止まるんだ!」
『おい!襲撃するつもりか!』
ウィルバー船長は無線をかえた。
「待て!話を聞いてくれ!
“メトロポリス”、
こちらLaknoff号のウィルバーだ!
我々は善良なるアメリカ市民だ!
断じて襲撃ではない!」
『じゃああの船は!?』
そう話している間にもdv:FISH号は“メトロポリス”へ0.4マイルまで近づいた。
「クソ!
エヴリン、“メトロポリス”との交信でdv:FISHにこっちの無線がつながっていない!
そっちの無線からdv:FISHにつなげてくれ!」
「わかりました、船長。」
『ぶつかるぞ…』
女船員がdv:FISH号に周波数を合わせた。
すると激しいノイズが聞こえ、
その後に鉄を擦るような音になった。
そして。
『た…!…助けてくれ!かいぶ…』
dv:FISH号は強い火柱を上げ、
その火は“メトロポリス”に引火し始めた。
火は“メトロポリス”の大きさに比べかすかのモノであるが煙はキノコのように変形していった。
“メトロポリス”からまた轟音が聞こえた。
きっと攻撃の音だ。
そして“メトロポリス”から無線が入った。
『もう一度聞く、襲撃か?』
「違う!信じてくれ!」
『…。』
ウィルバー船長は汗をかいていた。
大勢の命を守る為に自らこの5万6000人を指揮し、
火の海になった故郷のロサンゼルスのサンタモニカから抜け出した。
その努力、自分の誉れが水の泡になってしまうかもしれない。
ウィルバー船長は焦っていた。
30秒ほど経つと“メトロポリス”から連絡が入った。
『わかった、信じよう。
君の船が“メトロポリス”から100ヤードの距離に近づいたら一隻ずつ私の指示に従い一隻ずつ“メトロポリス”に入るんだ。』
「わかった…」
ウィルバー船長は“メトロポリス”の屋上にあるミサイルの砲口を見た。
その砲口は無数にあり、
ウィルバー船長のLaknoff号、
そしてLaknoff号に続く連隊50隻に標準をあわせていた。
もし攻撃されたとしたらほぼすべての船が破壊されてしまう事は間違いなかった。
Laknoff号とLaknoff号に続く連隊が“メトロポリス”まで100ヤード以内に近づき止まった。
すると“メトロポリス”から無線が入った。
『今から門を開ける。
一隻ずつ入ってくるんだ。』
その指示を聞いたLaknoff号は一隻だけ前に出た。
次の瞬間、
Laknoff号が“メトロポリス”のライトによって光につつまれた。
と同時にまるで“メトロポリス”全体にヒビが入ったかのような大きな音がした。
すると、
Laknoff号の正面からまわりの光よりはるかに眩しい閃光のような光が見え始めた。
その光はこの薄暗い海を遠くまで照らしてしまうほど眩しかった。
しかしすぐに光の中が鮮明に見えてきた。
それは無数の、
ウィルバー船長の連隊を出迎える作業員達であった。
そしてLaknoff号は、
今まさに“メトロポリス”入ろうとしていた。