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勧誘のお話

今日はショッピングモールに来ていた。

いつもみたいに観光がてらの見回りではなく、立派な用事があってのことだ。

裏口についているインターホンで、約束をしていた鹿島さんというショッピングモールの担当者の人の名前を告げると、中から偉そうな人が出てきて、管理棟の方へと案内された。

そしてそこの応接間で待つこと5分。


「どうもお待たせしてしまって申し訳ございません」

「いえいえ。こちらこそわざわざ時間を取っていただいてありがとうございます」


ドアを開けて鹿島さんらしき青年が入ってきた。

互いにペコペコとおじぎをしあって、名刺交換をした。

ちなみに秋原さんには、いつものように『見回りと散歩』と言って、お昼休憩と言う名の時間をもらってきた。ぶっちゃけ時間がない。


「それで、町長さん自ら来られたということは、どういったご要件でしょうか? 噂の秘書さんもお連れでは無いようですし」

「えっ、秋原さんって、そんなに有名なんですか?」

「有名ですよ。アレだけ美人な秘書さんをお持ちな町長さんは、滅多にいませんからねぇ」

「いやはやお恥ずかしい限りです」


ポリポリと頭をかいた。

そして鹿島さんが視線で『そんな話をしにきたんですか?』と催促したように思えた。

俺は少し前のめりになって、鹿島さんに聞いた。



「では早速本題に入りましょうか。ちょっと小耳に挟んだんですけど、鹿島さんって高速道路の計画に携わっていたとかなんとか」

「…どうしてそれを?」

「僕だってそれなりに情報網は持ってます。それで、県議会の方と繋がっているとか」

「そこまで知っているんですか。なら隠す必要もないですね。そうです。高速道路をこの町に引っ張ろうという計画のうろな町の担当者でした。まぁいろいろあってその話は無くなりましたけどね」


やっぱり情報通りだった。


「それがどうかしたんですか? もう白紙になった話ですよ?」

「高速道路の話はなくなったとは言っても、県議会さんとのつながりが途絶えた訳ではないでしょう?」

「またまた。そこまで情報を仕入れているんですから、知らないわけ無いでしょ? もう私は用済みですよ」


鹿島さんは、最初の好青年の印象を脱ぎ捨てるかのように、背もたれに背中を押し付けて両手を上げた。


「だから私はもうただのショッピングモールの担当者ですよ」

「そこで今日はご提案があって時間をいただきました」

「…提案、ですか?」

「はい。僕のほうとつながる気はありませんか?」

「はぁ?」


驚いたのか、素な声をあげる鹿島さん。


「その、県議会の方とつながっていたのって、妹さんの新薬の件ですよね? 今となってはもう解決されたと聞きましたので、どーかなーって思ったんですけど…別に必要ないですか?」

「いやいや。ちょっと意味がわからないです。第一私自身、前の町長さんが作り上げてきたものを壊してまで高速道路を作ろうとしていたんですよ? なのに、なぜですか?」


確かにそこは疑問でしかないわな。


「僕も、このショッピングモールの方とつながりを持っておきたかったんです。まだまだ新米で、前町長の引継ぎでのつながりしかなかったもので、ちょっと情報交換なんかしたいなぁって思ってまして」

「情報交換?」

「僕は、前町長がこのショッピングモールを建てるというお話があったときに言っていたんです。『これで町も少しは賑やかになるかな』と。前町長は前町長で、若い人たちが離れていくのが寂しかったみたいです。現に商店街なんかは、個人経営で長くやっている方がほとんどで、若い子達は市の中心部とかに遊びに行ったりしています。でもここの施設が出来たことによって、若い子達も町内で遊んでくれています。町長としては、若い子達が町内で満足してくれるということは、嬉しいことなんです。ですが、現実は厳しいもので、商店街側からの『あのショッピングモールのせいでうちの商品が売れない』とかっていう声が少なからず来ているんです。商店街から見てみれば、ここは脅威以外の何ものでもないですからね」

「ちょっと待ってください。何が言いたいんです? 私に商店街を納得させろとでも言うんですか?」


手の平を俺に向けて、話を遮った。


「違いますって。情報交換をしましょうって言っただけじゃないですか。納得させるのは僕の仕事です」

「情報交換って…まさか…」

「そのまさかです。もしも商店街を潰そうとかいう、えっと…反町長側の人たち、ですか? その人たちに何か動きがあれば教えていただきたいんです」

「つまり、スパイをやれと」

「そこまで入念に調べなくても良いです。聞いた情報を、教えてくれれば幸いです」

「町長さん…あんた、結構やり手か?」

「そんなこと初めて言われました」


いつの間にか前かがみになっていた鹿島さんは、また背もたれにからだをあずけた。


「清水といい、町長さんといい、変なところに精力注ぎすぎだろ」

「清水さんも僕も、この町が好きなんですよ。それだけです」

「好き、ですか。じゃあ私は、そんな情報を耳に入れたら、町長にご連絡しますね」

「ご協力ありがとうございます。連絡はメールにしてください。これ、パソコンのアドレスです」


あらかじめ書いてきたパソコンのメールアドレスが書かれた紙を、鹿島さんの前に差し出した。

それをマジマジと見た鹿島さんは、大事そうに名刺入れにしまった。


「はぁ。また厄介なことに関わちゃった気分です」

「厄介って、情報交換ですよ」

「一方的ですけどね」

「ちゃんと交換しますよ。鹿島さんは僕に情報をくれる。僕も鹿島さんに情報を教えますよ」

「どんな情報ですか?」

「商店街の美味しいお店とか紹介します」


俺が笑顔でそう言うと、鹿島さんは大声で笑った。

YLさんの清水先生と、鹿島さんをお借りしました。

結構リンクさせちゃったので、なにか不都合があればお願いします。

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