その1 「おいでませー」
初投稿です。
何番煎じって感じの内容だけど気にしない。中編予定です。
お見苦しいところが多々存在すると思いますが、太平洋より広い心と、冷めかけのホットミルクのような生暖かい目で見てやって下さい。
下校途中、足元不注意でうっかり工事中の「おいでませー」とばかりに黒々した穴を曝す、マンホールにダイブ。
悲鳴を上げながら落ちていって、その傍ら「コレ、死んだな」なんて冷静に考える。
けれど、気がつくとそこは天国でも、まして地獄でもない。
テレビで見たヨーロッパの観光名所のような神殿の中で、不思議な格好の外人さんたちに囲まれていた。
そして「召喚が成功した」だのどうのと騒ぐ、周りの状況についていけないまま、「魔王から世界を救う勇者」なのだと告げられる。
そんな、よくあるRPGみたいな話。
何処にでもいる平凡な学生という立場が一変して、世界の命運を握る重要な人物になって、魔王を倒すための旅をする。
その行く先々での、多くの人との出会いや、仲間たちとの触れ合いの中で、色々なことを体験し、泣いて、笑って、時に誰かと恋をして、少しずつ成長していく。
そんな素敵な物語に憧れていなかったわけじゃない。
当事者になれたらと、そう考えたこともあった。
そして結果的に……私は当事者となった。
………なったんだけど、
マンホールダイビングの先で私がたどり着いたのは、旅立ちの場所である、神聖な雰囲気に包まれた厳かな神殿ではなく、
私の周りを囲んでいたのは、神官服の穏やかな外人さんではなく、
状況に困惑する私に手を差し伸べてくれたのは、初期パーティーメンバーになるであろう、金髪碧眼のキラキラしい王子様や騎士様ではなく、
それどころか、世界の希望の光である、勇者やら聖女やらとして召喚されたわけですらなく、
「―――私が魔王とかなんでぇぇえぇええ!!!」
「今更ですよ、陛下」