罪人を招くため
「病人が罪人のように扱われることを拒否するイエスの言葉より」
昔々、とある国のお妃様が一人の男の子を産みました。
国中の人が、王子の誕生を喜びました。
けれど、その赤ん坊を見て人々は声を失いました。
赤ん坊の額には雄牛のような角が生えており、目は赤、手足には鱗のような模様が浮かんでいたのでした。
けれど、お祝いに呼ばれた十二人の魔法使いの内、十一人はお祝いの魔法をかけました。
しかし。
「この子は魔物の子。すぐに殺さなければならない」
十二人目の魔法使いがそう言って男の子が死ぬ呪いをかけた時。
「やあ、よくも私を呼ばなかったね?」
窓際に漆黒の影。
そこにいたのはこの国で一人だけ、お祝いのために呼ばれなかったルフランという闇の魔法使いでした。
「おやおや、もう子供は生まれて――」
ゆっくりとお妃に近づき、子供を見た途端ルフランは眉をひそめました。
そして、「はぁ」と溜め息をつくのでした。
「これは見事に呪われてるね。
よし、決めた!」
ルフランは子供の頭を優しく撫でながら、杖を振り上げ、歌うように言葉を紡ぎます。
「この子の名はアンジュ。そしてこれが私からのお祝いだよ。
『この子が十五歳になるまでは誰であろうと、この子に手出しは出来ない。
そして十五歳の誕生日、この子は錘に刺されて長い眠りにつくだろう。
この子を真に愛する者が現れるまで……』
」
ルフランは国で一番の魔法使いでした。だから、他の十二人の光の魔法使い達はその“お祝い”を破る魔法をかけることができませんでした。
大広間の中で、ただ恐怖する母の腕の中でアンジュは静かに眠っていました。
タイトルはお題サイト「HENCE」様から頂きました。(URL:http://m-pe.tv/u/page.php?uid=co4nine1&id=1)