10 アンビバレンツな反応と感想(2)
※ 今回は自作語りがメインです。必要のない方、興味のない方はとばしてください。
私はどんでん返しのある話が好きです。
自分自身が思い込みの激しい性質であるため、だからこそかえって、固定観念や思いこみを覆されるような作品が大好きです。
映画や漫画などもそうですが、特に内面を濃く描くことのできる小説は、自分とは違う視点や視野から物事を見たり考えたりするよい(疑似)体験にもなります。
しかし、世の中には自分とはタイプの違う読者も当然存在する。
そのことは頭ではわかっていたつもりでしたが、「不愉快」との感想を目にしたとき、私は動揺してしまいました。誰かを不愉快にさせるために書いた作品ではなかったからです。つまらないとか下手くそとか、そういう感想だったら受けとめられたと思うのですが。
つまりは、その読者の方の予定調和的な展開から外れていたゆえの「不愉快」という感想のようなのですが、対する私も、自分の小説の読者の中にもそういうタイプの方がいらっしゃるとは思っていなかったゆえの動揺ということになります。要するに、書き手として腹を括りきれてなかったということです。
いろいろ考えてみましたが、私はこういう読み手であり、書き手としてもこういうスタイルが好きですし、これからもやっていくと思います。
「アンフェア」の二つ名でしたら、謹んで拝名いたします。
相反する読者の反応として、一部では非常に不評だった番外編の「クリスが実は女の子」というネタが、「クリスが将来トーマスと恋をする」という部分で、一部では非常にウケました。私の知る限りでは、ウケたのはすべて女性の読者です。
昨今はBL流行りなので、クリスが男の子でトーマスとくっつくというネタでもウケたような気はしますが。
いや、むしろそっちのほうがウケたかもしれない。……しまった。
冗談はそれくらいにして、他の登場人物――トーマスについても、意見がきれいに分かれました。男性と一部の女性からは「ありえない」「嘘っぽい」と不評。残りの女性からはおおむね「癒し系」「優しくて素敵」と好評でした。
「緑の冠」のコンセプトは80~90年代前半あたりの「少女漫画」で、女性をメインの読者ターゲットとして考えていました。なので、トーマスも昔の少女漫画風フェミニスト青年にしてあります。小学生くらいの女の子が憧れるような王子様タイプといいましょうか。
だから、男性からみたトーマスの「ありえねー」という感想と、それとは反対に女性に好評だったというのも作者としては納得できます。
ちなみにユージンは、美形だけれども美形らしからぬ性格で、ちょっと不器用だけど実は気のいい普通のあんちゃん。男性からみてもあまり嘘っぽくないように作ったつもりでした。幸い、彼に対しては今のところ特に不評は聞いたことがありません。
ただ、作者としては、最初はトーマスに好感、対照的にユージンには反感をもってもらい、最終的にはユージンに好感をもってもらえるようになれば、と思っていたのですが、トーマスが好きな女性は最初から最後までトーマスが好きで、ユージンが好きな女性も割と最初からユージンが好きだった方が多かったようです。
これはちょっと想定外でした。女心ってわからないものですね……。
※「緑の冠」の改稿にあたってアドバイスなどありましたら、遠慮なくお聞かせください。参考にさせていただきます。