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第3話:蹂躙の夜、調律の始まり
ゲーム内に戻った岳を待っていたのは、最悪の不協和音だった。
「ぎゃははは! 見ろよ、このバグ・モンスター!」
時計塔の地下で、聖騎士団長ゼノスが、無残に潰された銀色の塊を踏みにじっていた。ヌルチーの遺した銀糸は引き裂かれ、光を失っていた。
「規約に基づき、このオブジェクトを『未定義バグ』として処分した」
ゼノスは管理者権限という名の理不尽を振りかざす。岳の怒りは頂点に達したが、ゼノスの「規約の盾」には一撃も通らない。
「おしまいどすな。……そのままやと、ただの『ノイズ』として消去されてしまいますえ」
闇から現れたのは、リセ。現実世界の一ノ瀬凛と同じ声を持つ少女だった。
「貸しなはれ。……ヌルチーさんが遺したこの『銀糸の残骸』、あんたの槍にパッチとして当ててあげます」
リセの指が空中で鍵盤を叩くと、銀糸が岳の槍に巻き付き、透き通った音を立てた。
「……これが、ヌルチーの……」
「さあ、ガクチー。あの五月蝿い黄金の置物、黙らせてきなはれ」




