第37話 ――指揮するもの
二十七階層。
草原は、少しずつ様相を変えていた。
背の低い草。
だが――
一定方向に、踏み固められた跡。
「……通路、作られてる」
「うん。群れが、定期的に動いてる」
つまり――
統率者がいる。
恒一は、刀を下げたまま進む。
新しい装備は、不用意に振るうと逆に疲れる。
「……来るよ」
「分かってる」
指揮個体
現れたのは、一段大きな魔物だった。
うろこは、厚い。
角は、前後二対。
そして――
目。
「……知性、高い」
「うん。キング……でも、ゴブリンじゃない」
その背後。
通常個体が、距離を保って待機している。
「……命令、出してる」
「まず、あれを落とす」
恒一は、前に出た。
ゆっくり。
相手も、
動かない。
だが――
一瞬。
「……っ!」
左右から、爪持ちが突進。
「お兄!」
ひよりの魔術が、一体を止める。
もう一体。
恒一は、受けた。
衝撃。
だが――
防具が、耐えた。
「……よし」
踏み込み。
刀が、指揮個体の脚へ。
だが――
弾かれる。
「……硬い」
「魔力、集中してる!」
ひよりは、即座に判断。
「お兄、時間稼いで」
「了解」
刀の反応
恒一は、深く息を吸う。
構えを、変える。
「……今まで、使ってなかった振り」
力を、入れない。
ただ――
合わせる。
指揮個体が、角を突き出す。
その瞬間。
刀が――
震えた。
刃が、自ら“流れ”を変える。
「……っ」
接触。
角の根元。
一瞬、遅れて――
内部から、崩壊。
指揮個体が、悲鳴を上げる。
群れが、一瞬、止まった。
「……指揮、切れた!」
連鎖崩壊
その隙を、ひよりは逃さない。
広域魔術。
だが――
威力は抑える。
「……素材、残す!」
魔物たちは、混乱。
連携は、戻らない。
恒一は、一体ずつ。
確実に。
「……刃が、判断してる」
「うん。お兄の意図、読んでる」
最後の一体が、倒れた。
ドロップ
素材は、過去最高だった。
うろこ。
牙。
爪。
角。
そして――
高密度魔核。
「……これ、自宅ダンジョンでもかなり上位」
「普通のCランクじゃ、出ない」
表示。
《自宅ダンジョン:適応完了》
《次階層解放条件:達成》
「……次、三十か」
「うん」
だが――
二人は、すぐには降りなかった。
変化の自覚
「……お兄」
「ん?」
「前より、踏み込み、迷ってない」
「……ああ」
恒一は、刀を見た。
「この刀、“助けてる”だけじゃない」
「うん」
「……一緒に考えてる」
「それが、ちょうどいい」
二人は、笑った。
この話では、
・27階層の指揮個体戦
・群れ戦の知性化
・刀の「自律的最適化」の発現
・指揮個体撃破による連鎖崩壊
・自宅ダンジョンが段階的に“応える”構造
を描きました。




