第36話 ――刃が応える距離
二十六階層。
自宅ダンジョンの空気は、これまでとは明らかに違っていた。
草原。
だが、風が強い。
「……視界、いいようで悪い」
「うん。隠れる場所、少ない」
恒一は、新しい刀を構えた。
力を入れなくても、刃が“そこにある”感覚。
「……来る」
草を割って、魔物が姿を現す。
四足。
全身に、
硬質のうろこ。
そして――
角。
「……複合型」
「角で突進、うろこで防御」
最初の一体が、走る。
速い。
「……っ!」
恒一は、避けきれないと判断し、受けた。
防具が、衝撃を流す。
完全ではない。
だが――
骨までは、響かない。
「……いける!」
一歩踏み込み。
刀が、角に触れた瞬間。
魔力が、内部に“滲んだ”。
「……?」
次の瞬間、角が――自壊した。
「……中から、ほどいた?」
「……多分」
ひよりの魔術が、追撃。
魔物は、倒れた。
群れ
草が、揺れる。
「……複数」
「うん。五……いや、七」
爪持ち。
牙持ち。
そして――
さっきと同型。
「……包囲、来る」
「位置、固定する」
ひよりは、魔術陣を足元に展開。
恒一は、前へ。
速くない。
だが――
迷わない。
一体、
二体。
刃は、毎回“同じ深さ”で止まる。
「……刃が、勝手に止めてる?」
「うん。魔核まで、行き過ぎない」
結果――
素材が、壊れない。
「……お兄、これ」
「うん。想定外だ」
だが――
ありがたい。
変化
戦闘後。
恒一は、息を整えた。
「……疲労、少ない」
「防具の循環、うまくいってる」
ひよりは、魔力残量を確認。
「……私も、まだ余裕」
だが――
表示が浮かぶ。
《ダンジョン反応:上昇》
《適応進行中》
「……嫌な表示」
「うん。“見られてる”」
外部・管理課
「……和歌山、反応がまた変わった」
「深度は?」
「二十六以上。だが――」
研究員が、言葉を選ぶ。
「構造が、成長している」
「……人工?」
「いいえ。自己進化型」
沈黙。
「……最悪、Sランク相当になる」
「二名で?」
「はい」
誰も、冗談とは思わなかった。
夜
地下工房。
恒一は、刀を布で拭いた。
「……刃、応えてる」
「うん。お兄の動き、学んでる」
「……生きてる?」
「……生きてないけど」
ひよりは、少し考えてから言った。
「一緒に成長してる」
「……それで、十分だ」
二人は、静かに笑った。
この話では、
・新装備の実戦投入
・26階層以降の群れ戦
・刀の「内部破壊・素材保護」という隠れ特性
・防具と魔術の循環効果
・ダンジョンが“成長”している兆候
を描きました。




