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第34話 ――名前を問われる段階

管理課からの連絡は、思ったよりも早かった。


「……和歌山県、私有地ダンジョンの件で、お話を伺いたい」


電話越しの声は、丁寧で、慎重で、

そして――警戒していた。


「兄さん」

「うん。行こう」


恒一は、一瞬だけ母の顔を見た。


「……危ないこと、しないでね」

「大丈夫。もう“勝手に潜る段階”は終わったから」


それが、本当かどうかは分からない。


だが――

そう言わなければならない段階に来ていた。


ダンジョン管理課・臨時支部


会議室には、三人。


管理官一名。

研究員一名。

そして――

自衛隊からの連絡将校。


「まず、確認させてください」


管理官は、淡々と告げる。


「あなた方の自宅地下ダンジョンは、現行法では未分類です」


「Eでも、Dでも、Cでもない」

「……はい」


「そして、五十階層を超えている」


沈黙。


「質問します。

 ――あなた方は、どこまで潜りましたか」


恒一は、一拍置いた。


「五十一階層」

「……それ以上は?」

「まだ」


嘘ではない。


だが――

隠していることは、山ほどあった。


条件付き黙認


結論は、意外なものだった。


「――管理課としては、当面、黙認します」

「え?」


ひよりが、思わず声を上げる。


「ただし、三条件」


一、

外部への無断素材流通禁止。


二、

ダンジョン由来武器の第三者提供禁止。


三、

定期的な情報提供。


「守れますか」

「……はい」


恒一は、即答した。


なぜなら――

守る方が、楽だから。


隠し続けるより、管理される方が。


変わる日常

学校。


「最近、あの兄妹、雰囲気変わったよな」

「わかる。 なんか…… 静かに強い」


同級生たちは、Eランクダンジョンを“攻略”と呼び始めていた。


だが――

恒一とひよりにとって、Eランクは、もう“作業”だった。


問題は、Cランク。


特に――

二十一階層以降。


石畳のフィールドに現れる、

ゴブリン・アーチァー。

ゴブリン・メイジ。

そして――

ゴブリン・キング。


「……統率、取ってる」

「うん。明確に」


矢が、連携して飛ぶ。


魔術が、タイミングを合わせて来る。


「Eとは、言えないね」

「うん」


だが――

それでも、“普通のダンジョン”。


問題は――

自宅。


兆候

五十二階層。


床は、土。


草が、生えていた。


「……草原」

「Cランク以降の、典型的フィールド」


だが――

違う。


風が、ある。


匂いが、ある。


「……ここ、生きてる」

「うん」


そして――

出てきたのは、うろこを持つ魔物。


爬虫類系。

だが――

魔力反応が、異常に高い。


「……来たね」

「26層以降、想定通り」


戦闘は、拮抗した。


恒一の刀が、うろこを弾く。


ひよりの魔術が、内部から焼く。


「……防具、改良必要」

「うん。次、作ろ」


だが――

勝った。


素材は、

牙。

爪。

角。

そして――

高純度の魔核。



地下工房。


ひよりは、

黙っていた。


そして――

言った。


「……お兄の、刀」

「え?」


「作り直す。この素材なら、もっと合う」


恒一は、止めなかった。


失敗も、知っている。


成功も、知っている。


「……任せる」

「うん」


炎が、灯る。


次の段階へ。

ここまでで、

・管理課との条件付き黙認

・普通のダンジョンと自宅ダンジョンの明確な差

・Cランク以降のフィールド変化

・26層以降の新魔物群

・次回「武器・防具再構築」への布石

を描きました。

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