表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/37

第31話 ――一人で立つということ

自宅ダンジョン、五十一階層。


階段の前で、恒一は立ち止まった。


「……行ってくる」

「うん」


ひよりは、止めなかった。


止められないと、分かっていたから。


「帰ってきて」

「当然だ」


それだけ言って、恒一は一人、階段を降りた。


白。


だが前回とは、違う。


空間が、“狭い”。


体育館ほどだった広さが、廊下のように絞られている。


《単独試練開始》

《同行不可》


「……随分、露骨だな」


刀を抜く。


新調した刃は、静かだった。


■ 第一層:判断の遅れ


出現したのは、小型・高速個体。


群れではない。

一体。


だが――

速い。


「……速さ特化か」


恒一は、斬りにいかない。


待つ。


――判断が、半拍遅れた。


爪が、脇腹を裂く。


「……っ」


痛み。

初被弾。


だが――

致命傷ではない。


「……なるほど」


この試練は、殺しに来ていない。


だが、“間違い”は確実に刻む。


次は、待たない。


一歩前。

斬。


魔物は、消えた。


《評価:可》


■ 第二層:選択の重さ


空間が、歪む。


分岐。

三方向。


正面:魔力反応・強

左:弱・複数

右:反応なし


「……普通なら、右だな」


だが――

恒一は、立ち止まる。


「……ここは、“普通”じゃない」


左へ。


弱いが、数が多い。


削られる。


体力。

集中力。


だが――

突破。


《評価:良》


右を選んでいれば、“別の罠”があった。


そんな確信が、残った。


■ 第三層:自分の限界


空間が、一気に広がる。


草原でも、石畳でもない。


――何もない。


出現したのは、模倣体。


恒一自身。


「……俺?」

「……そうか」


模倣体は、同じ刀。

同じ動き。


「……力比べ、じゃないな」


正面から、斬り合えば負ける。


恒一は、

呼吸を変えた。


“いつもの自分”を、捨てる。


一歩、遅らせる。


模倣体が、“正解の動き”を取る。


――そこに。


不正解の、刃を差し込む。


断。


模倣体が、消えた。


《評価:優》


■ 代償


空間が、静止する。


《単独踏破:完了》

《代償付与》


「……代償?」


胸が、重くなる。


《反応速度・一時低下》

《回復まで72時間》


「……なるほど」


死なないが、無傷では帰さない。


これが――

Sランク。


地上。


階段を上がると、ひよりがいた。


「……おかえり」

「ただいま」


恒一は、少しだけ、膝をついた。


「……成功?」

「ああ」


ひよりは、すぐに分かった。


「……代償、来たね」

「三日、鈍る」


ひよりは、何も言わず、兄の肩を貸した。


「……怖かった?」

「正直――」


恒一は、笑った。


「楽しかった」

「……変な人」


だが――

その笑顔は、本物だった。


地下の階段は、何も語らない。


だが、確実に――

“認めた”。

この話では、

・兄の単独Sランク試練

・試練の本質=殺さないが甘くない

・判断ミスは必ず代償になる

・Sランクは「力」ではなく「選択」

を描きました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ