第30話 ――試練は、敵ではない
自宅ダンジョン五十一階層。
白い空間に、変化が起きたのは――二人が踏み込んだ瞬間だった。
床の円が、淡く光る。
「……来る」
「うん」
だが、魔物ではない。
情報だ。
文字が、空中に浮かび上がる。
《適合者確認》
《条件一致》
《試練モード、起動》
「……モード?」
「訓練用、みたいだね」
空間が、ゆっくりと区切られる。
広さは、学校の体育館ほど。
「……戦闘、来る?」
「いいや――」
ひよりは、首を振った。
「これは、制御の試練」
■ 第一試練:制限下戦闘
光が、二人を包む。
次の瞬間――
「……魔力、減ってる」
「私も。半分以下」
ステータス制限。
スキルは、使える。
だが――
出力が制限されている。
出現したのは、単体の魔物。
牙と鱗を持つ、近接型。
「……弱い?」
「いや」
恒一が、一歩踏み出す。
刃が、止まった。
「……防御、異常」
「“工夫しろ”ってこと」
力では、斬れない。
恒一は、深く息を吸う。
動きを、見る。
爪の軌道。
重心。
――関節。
刃を、“当てる”。
断。
魔物が、消えた。
《評価:合格》
■ 第二試練:役割交換
空間が、再構築される。
「……次」
「うん」
今度は――
ひよりが、前に立たされる。
「……近接?」
「たぶん」
恒一が、後衛。
「……魔術、制限厳しい」
「その代わり――」
刀が、軽くなる。
「……兄が、サポート?」
「やってみる」
敵は、遠距離主体。
ひよりは、避ける。
恒一は、間に入る。
「……今」
ひよりが、短詠唱。
最小限の魔力で、最大効果。
敵が、消えた。
《評価:良》
■ 第三試練:判断
空間に、三つの道が現れる。
「……選択?」
「うん」
表示。
安全・時間長
危険・時間短
不明
「……どうする?」
「……“不明”」
ひよりは、即答だった。
「ここ、そういう場所」
「同感」
進む。
罠。
だが――
致命的ではない。
二人は、冷静に解除した。
《評価:最適》
■ 試練終了
光が、消える。
白い空間が、元に戻る。
《試練モード終了》
《適合度:高》
《次回解放条件:Sランクダンジョン51階層単独踏破》
「……単独?」
「だね」
つまり――
一人ずつ。
地上。
二人は、無言で座った。
「……怖い?」
「少し」
恒一は、正直だった。
「でも――」
「うん」
「やる」
「やろう」
自宅ダンジョンは、育てる。
壊すためではなく、生き残らせるために。
地下の階段は、静かに待っていた。
この話では、
・Sランク準備層=試練ダンジョン
・自宅ダンジョンの目的の明確化
・制限下での判断力・役割理解
・次の目標「単独踏破」
を描きました。




