第26話 ――刃は強さではなく、噛み合いで決まる
作業台の上には、草原階層で集めた素材が並んでいた。
鱗。
角。
爪。
そして――風属性の魔核。
「……数は、足りてる」
「質も悪くないね」
ひよりは、鑑定眼を通さずとも分かるほど、素材の“癖”を感じ取っていた。
「でも……」
「うん」
問題は、組み合わせだ。
■ 一度目:欲張りすぎた失敗
「まずは、今の刀をベースに拡張」
ひよりは、鍛冶陣を展開。
鱗で耐久。
角で貫通力。
風魔核で射程拡張。
――理屈は完璧。
だが。
「……魔力、流してみて」
「分かった」
恒一が、手に取る。
魔力を、刀に流した瞬間――
ぶれた。
「……重い」
「うん。魔力伝導が、不安定」
振るたびに、刃が遅れる。
「これ、強いけど……」
「兄の動き、殺してる」
ひよりは、即座に分解した。
■ 二度目:軽さを重視した失敗
次は、鱗を減らし、爪主体。
軽さ。
速度。
「……今度は?」
「振れる」
だが――
草原想定の魔力斬撃。
――届かない。
「……射程、足りない」
「軽くしすぎたね」
恒一は、首を振った。
「悪くはない」
「でも、“今の俺”には、合わない」
再び、解体。
■ 三度目:視点を変える
ひよりは、少し黙った。
「……ねえ」
「?」
「“万能”に、しようとしてた」
恒一は、気づく。
「……役割、分ける?」
「うん」
刀は、切るもの。
防具は、耐えるもの。
それを――
混ぜすぎていた。
■ 成功:兄の刀
刀は、“刃”に集中。
爪:切断力
角:一点突破
風魔核:射程補助(短距離限定)
余計な防御は、持たせない。
完成。
「……どう?」
「――いい」
振った瞬間、分かる。
遅れない。
迷わない。
「届くけど、振り切れる」
「うん。兄専用」
■ 妹の防具
ひより自身の装備。
軽装。
鱗:要所のみ
魔力循環重視
詠唱補助陣内蔵
「……防御、薄くない?」
「当たらない前提」
笑う。
「魔術師だから」
「……納得」
■ 仕上げ:試着
自宅ダンジョン、浅層。
軽く、スライム。
恒一が、一振り。
――消失。
「……速い」
「余計な抵抗、全部削った」
ひよりは、魔術を一つ。
詠唱が、半分で済む。
「……楽」
「だろ?」
二人は、顔を見合わせた。
「……強くなった?」
「ううん」
ひよりは、首を振る。
「噛み合った」
夜。
作業台を片付けながら、恒一は言った。
「ありがとう」
「当然」
兄妹だから。
「次は?」
「実戦。四十一階層」
地下の階段が、静かに待っていた。
今回は、
・武器・防具制作回
・失敗 → 分析 → 視点変更
・「強さ」より「噛み合い」を重視
・兄妹それぞれの役割確立
を描きました。




