第23話 ――混ざる牙、重なる役割
二十六階層を越えてから、探索の“手触り”が変わった。
「……安定してる」
「うん。被弾、減ってる」
刀は、ただ強いだけではなかった。
判断を早くする。
斬れると分かっているから、迷いが消える。
二十七階層。
出現魔物は、三系統混成。
鱗持ち(防御)
牙・爪持ち(近接)
ゴブリン・メイジ(後方)
「……役割、重ねてきたね」
「普通のダンジョンと同じ構成だ」
石畳の広場。
射線を切り、距離を詰め――
恒一は、牙持ちを優先。
刀が、爪ごと腕を断つ。
「……早い」
「前衛処理、想定通り」
ひよりは、魔力制御に集中。
後衛の詠唱が、成立しない。
戦闘時間、過去最短。
二十八階層。
初の“複数部屋連戦”。
「休ませない構成か」
「ポーション管理、ちゃんと見て」
素材回収。
鱗。
角。
爪。
「……これ」
「自宅ダンジョンでも、同じの出るね」
差は、ドロップ率だけ。
普通のダンジョンは、他の探索者と同じ。
自宅ダンジョンは――
素材の質が、少し良い。
「……鍛冶、忙しくなるな」
「望むところ」
二十九階層。
管理課の臨時掲示。
《注意》
《二十六階層以降、魔物構成の急激な変化を確認》
つまり――
今までが、緩かった。
恒一は、苦笑した。
「やっと、“ダンジョンらしくなった”」
「だね」
三十階層。
ボス。
《獣系上位個体》
《角・牙・鱗複合》
一体。
だが――
圧が違う。
「……単体で、この威圧」
「集中しよ」
正面突破は、危険。
ひよりが、一歩後ろに下がる。
「三十秒、足止めできる」
「十分だ」
恒一は、左へ。
回り込み。
角の可動域。
首の付け根。
「――今」
踏み込み。
魔力を流す。
断。
首が落ちる。
沈黙。
「……やった」
「うん。Cランク帯、完全に越えたね」
帰還後。
管理課職員が、少しだけ目を見開いた。
「……三十階層、到達確認しました」
「昇格、申請しておきます」
つまり――
安定探索者。
夜。
自宅ダンジョン。
恒一は、刀を手入れしながら言った。
「……この先、もっと変わるな」
「うん。三十一階層以降は、“群れ”が来る」
「武器、また更新いる?」
「たぶん。でも、今度は――」
ひよりは、にやっと笑った。
「一人用じゃない」
「……ああ」
二人用。
役割が、完全に噛み合った今だから。
恒一は、階段の闇を見下ろした。
鱗も。
牙も。
角も。
すべてが、素材になる。
「……行けるな」
「うん。兄なら」
兄妹は、同じ方向を見ていた。
この話では、
・26~30階層の安定攻略フェーズ
・魔物の構造混成
・刀による戦闘判断速度の向上
・管理課からの正式評価
を描きました。
ここで主人公たちは
「強い初心者」から
**“戦力として数えられる存在”**になります。




