第21話 ――Cランクへの境界/草原に立つ者たち
Dランクを安定して周回できるようになってから、恒一とひよりの探索頻度は落ち着いていた。
無理をしない。
だが、止まらない。
その積み重ねが、管理課の評価に反映される。
《探索者 日高恒一》
《適性評価 更新》
《Cランクダンジョン入場許可(条件付き)》
「……来たね」
「うん。Cランク」
喜びはある。
だが、浮かれた気持ちはなかった。
Cランクは、“強くなった証明”ではない。
生き残れなければ意味がない領域だ。
選んだのは、管理課が「標準的」と定めるCランクダンジョン。
内部構造は、一~二十階層までが共通規格。
石畳の床。
低い天井。
直線と曲線が混ざった通路。
「……普通だ」
「うん。いつものダンジョン」
だが、出現する魔物は違う。
一階層。
最初に現れたのは、ゴブリン――だが。
「弓持ち」
「アーチャー型だね」
《ゴブリン・アーチャー》
矢は速く、狙いが正確。
これまでの“突っ込んでくるだけ”の個体とは違う。
「来るよ!」
盾代わりに剣で弾く。
石畳に火花が散った。
「……一体ずつ、役割持ち」
「Cランク前提だね」
五階層。
今度は、後方に陣取る個体。
《ゴブリン・メイジ》
短い詠唱。
火球。
「魔術、完成してる」
「妨害優先!」
ひよりの魔術で詠唱を乱し、恒一が距離を詰める。
倒れたゴブリンの足元には、素材だけが残った。
「……武器もロールも出ない」
「出現率、普通だね」
それが、当たり前。
十階層。
空気が変わる。
通路の奥に、一段高い石壇。
その上に立つ存在。
《ゴブリン・キング》
王冠のような骨飾り。
装備は粗末だが、目だけは鋭い。
「……来る」
キングが腕を振る。
合図。
左右から、アーチャーとメイジ。
「指揮してる!」
「順番、間違えると詰む!」
まず後衛。
次に射手。
最後にキング。
戦闘は、計画通りに進んだ。
だが、余裕はない。
二十階層。
再び、キング。
だが今度は――
複数の役割が同時に出現。
「……これが、Cランク前」
「通過試験だね」
激戦の末、最後のキングが崩れ落ちる。
《二十階層 制圧》
表示が浮かんだ。
「……Cランク、まだ入ってないんだよね」
「うん。ここまでは“前座”」
恒一は、深く息を吐いた。
二十一階層への階段。
降りた瞬間、景色が――変わらなかった。
「……まだ石畳」
「でも、圧が違う」
魔物の気配が、明らかに濃い。
ここからが、本当のCランク。
帰還後。
換金所での評価は、淡々としていた。
「標準的な成果ですね」
「Cランクでは、このくらいが基準です」
素材。
魔核。
どれも、“妥当”。
恒一は、妙な安心感を覚えた。
(……これが、普通)
夜。
自宅ダンジョンの地下。
同じ一~二十階層相当。
だが――
空気が違う。
魔物の密度。
出現頻度。
そして、戦闘後の光。
「……武器」
「ロールも」
魔物武器。
スキルロール。
1/100という異常な取得率。
「……やっぱり、別物だ」
「普通のダンジョンと、同じ階層でも」
自宅ダンジョンは、“基準”ではない。
意図的に歪められた育成空間だ。
恒一は、静かに言った。
「普通を知れて、よかった」
「うん」
比較できるからこそ、理解できる。
「Cランクは、普通なら――ここまで」
「でも、私たちは」
二人は、地下の奥を見た。
自宅ダンジョンは、その“先”を、最初から見せている。
それが、祝福か。
呪いか。
まだ、分からない。
Cランクから、ダンジョンは明確に**「戦術ゲーム」**になります。
ですが「普通のCランクダンジョン」と「自宅ダンジョン」では魔物の発生条件が違います。
ここから先は、単純なレベル差では勝てなくなるでしょう。




