第2話 ――スキルという「結果」
ダンジョン冒険者資格を取った同級生は、翌日、英雄だった。
教室に入るなり、視線が一斉に彼へ向かう。
羨望、好奇心、不安、そしてほんの少しの恐怖。
それらが混ざった空気の中心に、恒一はいた。
「で? 何もらったんだよ」
誰かがそう切り出すと、堰を切ったように質問が飛び交う。
「剣術、レベル1だけどな。あと、アイテムボックス。小さいやつ」
「俺は魔術の火属性だけ」
教室がどよめいた。
剣術、魔術、アイテムボックス。
どれも“当たり”とされるスキルだ。
「ボックスどれくらい?」
「リュック二つ分くらいかな。時間停止あり」
時間停止あり。
それだけで、教室の空気が変わる。
ダンジョンで拾ったものを劣化させずに持ち帰れる――
それは、命と直結する能力だった。
「弓術のやつもいたぞ」
「鑑定眼もいたらしい」
「錬金術は……いなかったな」
その言葉に、なぜか俺は引っかかりを覚えた。
スキルはランダムじゃない。
これまでの生き方で決まる。
そう、講義資料にも書かれている。
「お前はどうだったんだよ、日高」
突然、名前を呼ばれて俺は一瞬だけ言葉に詰まった。
「……俺は、まだ」
そう答えると、何人かが「あっ」と気まずそうな顔をした。
責められているわけじゃない。
ただ、もう“取らない”という選択肢が、少数派になりつつあるだけだ。
昼休み、屋上で一人弁当を食べながら、俺は考えていた。
もし俺が入ったら、何をもらうんだろう。
運動は得意じゃない。
成績も中の上。
ただ、家のことはずっと考えてきた。
母を楽にしたい。
妹を守りたい。
兄として、できることを増やしたい。
それは、スキルとして評価されるのだろうか。
放課後、家に帰ると母は夜勤の準備をしていた。
「今日も学校どうだった?」
「……資格取ったやつ、増えてきた」
母は少しだけ手を止めて、俺を見る。
「無理はしないでね」
「分かってる」
その会話の裏で、俺は決めていた。
逃げる理由は、もうない。
翌日、ダンジョン管理課のサイトで、
冒険者資格講習の申請フォームを開いた。
名前を入力する。
年齢、住所、連絡先。
最後の確認画面で、指が一瞬止まった。
――この選択で、人生が変わる。
だが、それはもう世界の前提条件だった。
「……行くしかないか」
送信ボタンを押した瞬間、
胸の奥に、重いものが落ちた気がした。
それが、覚悟だったのだと思う。
同級生たちはダンジョン資格を取り、会話はダンジョンのことが多くなった。
恒一は家族のことを思い、ダンジョン資格を取ることを諦めていたがついにとることを決意する




