第18話 ――Dランク解放/一段上の世界
管理課からの正式通知が届いたのは、
自宅ダンジョンでの“選択”から三日後のことだった。
《探索者 日高恒一》
《ダンジョン適性評価 更新》
《Dランクダンジョン入場許可》
画面を見た瞬間、
恒一は思わず声を上げた。
「……っ、来た!」
「ほんとだ! Dランク!」
ひよりも端末を覗き込み、
珍しく分かりやすく喜んでいる。
Dランク。
二十階層構造。
Eランクとは、明確に“壁”が違う。
それは危険度だけではない。
探索者として認められた証でもあった。
「普通なら、半年はかかる」
「私たち、早すぎだよね」
自覚はある。
だが――それでも。
「……正直、うれしい」
「うん。すごく」
否定する理由は、なかった。
週末。
二人は、管理課指定のDランクダンジョンへ向かった。
場所は京都寄り。
既に複数回クリア実績のある、安定型。
受付の空気が、Eランクとは違う。
探索者たちの装備は重く、
表情は引き締まっている。
「……雰囲気、違うね」
「気を抜くと、死ぬ層だから」
恒一は、自然と剣を握り直した。
一階層。
敵は、強化スライム。
動きが速く、粘性も高い。
「来るよ」
「了解」
連携は、もう言葉すら要らない。
剣で切り裂き、
ひよりの魔術で動きを縛る。
数は多いが、
統率はない。
「Eとは別物だけど……」
「戦えるね」
恒一は、自分のステータスを実感していた。
STR、VIT、AGI――
どれも、一般人の域を明確に超えている。
それでも、油断はしない。
十階層。
ゴブリンが、
隊列を組んでいた。
盾役、攻撃役、後衛。
「……知能、上がってる」
「本来の“魔物”って感じ」
一体ずつ、確実に落とす。
被弾は、最小限。
ポーションの消費も抑えられた。
「安定してる」
「D、行けるね」
その言葉に、
恒一は小さく笑った。
二十階層、ボス部屋。
オーク・キャプテン。
Eランクのボスとは、
明確に違う圧。
「……正面から、来る」
「迎え撃つ」
一撃が重い。
防御を抜いてくる。
だが――
剣が、通る。
ダンジョン産武器の“対魔物補正”が、
はっきりと効いていた。
数分後。
オークは、崩れ落ちた。
《Dランクダンジョン・初回クリア》
表示が浮かぶ。
「……終わった」
「うん」
二人は、
しばらくその場に立ち尽くした。
達成感。
安堵。
そして――
「やっぱ、うれしい」
「うん。怖かったけど」
Dランク。
それは、もう“趣味”ではない。
生業になりうる領域だ。
換金所。
素材と魔核を提出すると、
金額はEランクの倍以上になった。
「……現実的だね」
「生活、変わる」
だが、恒一の意識は、
別のところにあった。
自宅ダンジョン。
あそこでは、
魔物武器も、スキルロールも、
異常な確率で落ちる。
(1/100)
このDランクが“普通”。
自宅が、
どれほど歪んでいるか――
今なら、よく分かる。
帰宅。
地下への扉の前で、
二人は立ち止まった。
「……今日は、行く?」
「うん。少しだけ」
扉を開ける。
空気が、違う。
そして――
胸の奥に、
微かな“指示”が浮かぶ。
《次段階準備》
《探索者の外部適応、良好》
「……見てたね」
「全部」
恒一は、深く息を吸った。
Dランクに行けるようになった。
それは、素直にうれしい。
だが同時に――
もう戻れない地点に
立ったことも、理解していた。
「進もう」
「うん。一緒に」
地下へ続く階段を、
二人は並んで降りていった。
今回は、
「Dランク解放の喜び」と
「普通を知ったからこその異常認識」を
知りました。
E→Dは、
探索者にとって最初の本当の関門です。




