第14話 ――自宅ダンジョン探索(6)/変わった“報酬”
地下への扉を開けた瞬間、
恒一は、はっきりとした違和感を覚えた。
「……空気、軽い?」
「うん。でも、嫌な感じ」
数値化できない感覚。
だが、これまでの探索で培った直感が、
“何かが変わった”と告げている。
「今日は浅めから確認しよう」
「了解」
慎重に、一階層相当のエリアへ。
出現したのは、
いつものスライム。
だが――
動きが、わずかに速い。
「数、増えてる」
「でも、連携は薄い」
恒一が前に出て、
確実に仕留める。
一体、二体、三体。
そして――
「……ん?」
床に、剣が転がった。
「魔物武器?」
「早すぎない?」
Eランク換算なら、
五百匹に一本レベル。
だが、今日は――
まだ十体も倒していない。
「鑑定する」
恒一の鑑定眼が走る。
《名称:ダンジョン生成刀剣》
《性能:基礎性能向上/対魔物補正(中)》
《隠し性能:自己修復(微)》
「……普通に当たりだ」
「ねえ、お兄」
ひよりが、スライムの残骸を指さす。
そこには、
スキルロールが落ちていた。
「……は?」
「連続?」
二人は、顔を見合わせた。
「偶然……じゃないね」
「確率、変わってる」
探索を続行。
ゴブリン、
オーク。
討伐数が増えるにつれ、
明らかになっていく。
魔物武器。
スキルロール。
ほぼ百体に一つの頻度で、
確実にドロップしている。
「報酬テーブルが違う」
「意図的だね」
しかも、
質が悪くない。
武器は即戦力。
スキルロールも、
使い道が広い。
「……誘ってる?」
「うん。“進め”って」
ダンジョンが、
明確な意思を持っているように感じられた。
中層に差し掛かったあたりで、
異変はさらに顕著になる。
「……床、文字ある」
「石碑?」
刻まれていたのは、
古い日本語に近い文体だった。
《挑戦者に、相応の対価を》
《深度に応じ、報酬を改める》
「……完全に、管理者いるね」
「しかも、日本語」
偶然じゃない。
ここは、
この国で作られたダンジョンだ。
戦闘は、
これまでよりも激しくなった。
だが――
装備の更新が追いつく。
ドロップ率が高いため、
武器の選別、スキルの検討が可能になっている。
「これ、成長速度おかしい」
「普通のダンジョンじゃ無理」
恒一は、
冷静に分析した。
「管理課に知られたら……」
「即、接収案件」
だからこそ、
黙っていなければならない。
帰還後。
リビングで、
戦利品を並べる。
「武器、三本」
「スキルロール、二つ」
一回の探索で、
ありえない成果。
「……このダンジョン」
ひよりが、静かに言った。
「私たちを、育てに来てる」
「同感だ」
それは、
善意か、利用か。
どちらにせよ――
拒否権はない。
夜。
恒一は、ノートに記録を書き込んだ。
・自宅ダンジョン
・ドロップ率変更
・魔物武器/スキルロール:1/100
・明確な管理意思あり
「……試験、か」
誰かが、
未来のために仕込んだ装置。
そして今、
それが動き出している。
「お兄」
「ん?」
「次、どうする?」
恒一は、
地下への扉を見つめた。
「進む」
「うん」
選択肢は、
最初から一つしかなかった。
自宅ダンジョンと一般的なダンジョンではドロップ率が異なっていることが分かりました。
このダンジョンは「報酬で行動を制御する」
極めて作為的な存在である。




