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第10話 ――学校/資格者と非資格者の境界線

朝の教室は、以前と同じ騒がしさに包まれている。

だが恒一の目には、そこに見えない線が引かれているように感じられた。


資格者と、非資格者。

ダンジョンに入る者と、入らない者。


たったそれだけで、

世界の見え方は、ここまで変わるのか。


「なあ日高、聞いたか?」


席に着くなり、同級生が身を乗り出してきた。


「何を?」

「昨日、Cランクダンジョンで事故。

 無資格のやつが入り込んで……重傷者が出た」


教室のざわめきが、一瞬止まる。


「無資格で?」

「らしい。刑事罰確定だってさ」


それは、遠い話じゃない。


教習で繰り返し教えられた。

力を持つ以上、責任が生じる。


「ダンジョン管理課も、これから締め付け強くなるらしい」

「まあ、当然だよな」


軽く言っているが、

その言葉の裏にある重さを、恒一は知っている。


もし自宅ダンジョンが露見すれば――

管理課は必ず動く。


兄妹だけで抱えられる問題じゃない。


昼休み。


資格者たちが、自然と集まっていた。


「スキル何だった?」

「俺、弓術と索敵」

「いいなー、俺なんて筋力上昇だけ」


そこには、微妙な優劣と、

隠しきれない羨望が混じっている。


恒一は、少し離れた席でそれを聞いていた。


「日高は?」

また、聞かれる。


「……剣術と鑑定」


「鑑定? 便利だけど地味じゃね?」

「戦闘向きじゃないだろ」


笑いながらの言葉。

悪意はない。


だが、恒一は思う。


――見せていないだけだ。


鑑定眼MAX。

それが何を意味するか、

彼らは想像すらしていない。


「日高って、あんまり潜ってないよな?」

「まあな」


本当は、

誰よりも深い場所を見ているのに。


午後の授業中。


教師が、黒板の前で話す。


「最近はダンジョン関連の事故が増えている。

 資格を取っても、無茶はするな」


恒一は、ノートを取りながら思った。


無茶と、覚悟の違い。

それを、どれだけの人が理解しているだろう。


ダンジョンは、

努力を裏切らない。


だが同時に、

慢心を確実に殺しに来る。


放課後。


校門を出たところで、

管理課の職員がチラシを配っていた。


《ダンジョン管理課からのお知らせ》

《新規登録・調査協力者募集》


恒一は、足を止める。


調査協力。

つまり、深部探索要員。


「……」


今の自分たちなら、

声がかかってもおかしくない。


いや、

かかってはいけない。


自宅ダンジョンの存在は、

まだ伏せるべきだ。


帰宅。


ひよりが、すでに地下の準備をしていた。


「学校、どうだった?」

「境界線が見えてきた」


「資格者と、そうじゃない人?」

「それだけじゃない」


恒一は、真剣な表情で言う。


「浅いところで満足する人と、

 深いところを知ってしまった人」


ひよりは、黙って頷いた。


「ねえ、お兄」

「ん?」

「私たち、いずれ管理課に知られるよね」


避けられない未来。


「……その時に、選ばされる」

「何を?」

「従うか、利用されるか」


ひよりは、少し笑った。


「どっちも、嫌だな」

「同感だ」


だからこそ、

力を持つ必要がある。


夜。


恒一はステータスを確認し、

ポイントをVITとAGIに振った。


速さと、生き残る力。


派手さはないが、

死なないための選択だ。


「……焦るな」


自分に言い聞かせる。


自宅ダンジョンは逃げない。

だが、世界は待ってくれない。


恒一は、

深く息を吸い、目を閉じた。

「資格」という制度が生む分断と、

主人公の立ち位置を描きました。

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