ド、ド、ド、ドラゴンって、動物だったん?!
そう言えば・・・1年以上書いてなかったなあ。
夏場に農作業を始めたこともあったのだけれど、魔芒の月が暗い話になって行くので、書くのを躊躇していた事もあったんだ。こっちは突然思いついて書き始めたけれど、とりあえずエピソードは二つほど考えている。最初は脳筋の魔法使いがいたら面白かろうとタイトルをつけて書いてみた物の、自分の文体と筋にそぐわないと感じて、タイトルを変更しました。面白いと感じてくれたなら幸いです。よかったら応援してね。
「起きろ、オッサン! まだ寝てんのか!?」
「起きとるよ、小娘。夜這いにでも来たか?」
「エロクソジジイ!!!」と、放ったエリザベスの渾身の一撃はセーフテントの防護障壁に阻まれ、甚大な痛みを被る事となった。
ミッション中にキャンプを張る場合、セーフテントという魔道具を使う。
長さ2メートルほどに伸びる杖の先端にランプがあり、そのランプを点けると半径2m程の淡い青色の防護障壁が発生する。音と光は阻害しないが、物理攻撃や魔法攻撃を防ぐことが出来る。
また、このセーフテントは中からの操作で、救難信号を発することも出来る。その信号はギルドにある救急救命部署へと送られ、救助隊が救助に向かうという仕組みになっているのだ。
<紅の翼>の一行はダンジョン13階層の開けた場所にキャンプを張っていた。2時間ごとの見張りを置く決まりで、今はあらかたのメンバーが就寝中である。
「痛たたたた・・・。」
「馬鹿タレが、冗談に決まってんだろ。」
メギドはセーフテントのスイッチを切ると、ニヤケ顔でそう言った。エリザベスはメギドの近くによると、胡座を掻いて座る。
「防護障壁は張らないのか、オッサン。」
「探査魔法が使えなくなるからな。それより小娘、お前はもう寝ろ。」
「・・・・・あのさあ、メギド・・さん。その”小娘”ってのは止めてくれない? あたしにはエリザベス・ポンティアックってれっきとした名前があるんだからさあ。」
メギドはニンマリとほほ笑むと、腕組みしてこう言った。
「すまんな。俺は・・・・」
「俺は?」
「人の名前と顔が覚えられん!」
(なんで偉そうなんだよ。)と、全員の心の声・・・やっぱり全員起きていた。
ちなみに・・
アレン=兄ちゃん
シャール=大将
エリザベス=小娘
サブリナ=嬢ちゃん
と、言った具合である。
「フン。まあ、オッサンは年だから仕方ないと思うけどさあ。」
「だーれが、ジジイかっ!」
「そんな事、言ってねえだろ。クソジジイ!」
「言っとるじゃねえか、小娘!」
「あ~、止めた止めた。オッサン、あたしの事は”リズ”って呼んで。みんなもそう呼ぶし。直るまであたしもオッサンって呼ぶからねっ!」
「いいとも。後で泣きを見るなよ、小娘。」
・・・意味不明である・・。
「オッサン、D級ってウソだろ。」
「いいや、紛れもなくD級だ。」
そう言って見せた認識証はまぎれもなくD級である。
(だから、なんで偉そうなんだ?)=4人
「・・・んーん。じゃあさ、D級でもいいんだけどさ、オッサン。あんた、<紅の翼>のメンバーになる気無い?」
「・・・・・」
「だからあ。ギタンも突然死んじゃったし、凄腕の魔術師は必須なんだよ。」
それは他のメンバーも同意見だった。
アタッカーのアレン。タンク兼アタッカーのシャール。シーフのリズ。回復系白魔術師のサブリナ。攻防兼務の赤魔術師のギタンと、バランスの取れたパーティーの<紅の翼>の一角が崩れたのだ。今までのメギドの力を見て来たアレン達にとって、これほど打って付けな人材はいなかったと言えよう。
「ふん。」
メギドは微笑みを浮かべると、そのごつい手で頭を掻いた。
「どうなのさ。A級にパーティーに入れるんだよ。」
「悪いがなー、小娘。俺は一人が好きなんだ。今回はセリーヌの頼みだから手を貸してるが、パーティーに入るつもりはねえ。」
「・・・」
「あ、気を悪くするなよ。お前さんたちがどうこうという訳じゃねえんだ。お前さんたちのパーティーはいいチームだと思うよ。嘘じゃねえ。本気でそう思ってるんだ。気のいい連中ばかりだしな。たまたま一緒に組んだとはいえ、結構楽しんでるよ。」
「だったら・・・」
「その話はナシだ。すまないな。この仕事が終わって無事に上に戻れたら、一緒に飯でも食おうや。」
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さて、ようやく剣呑な一夜が過ぎると、一同は再び14階層を目指して歩き始めた。今はリズが先頭に立っていて、時々皆を止めては先行し、前方を探っては戻る。今日のメギドは後衛に甘んじ、後方の索敵を行いつつ、一同の後をついて行っていた。
何度かの往復を繰り返した後、リズの顔は真っ青になって帰って来た。
「どうした、リズ。」
「ヤバイよ。ドラゴンがいる! それもデカいのが!」
その一言にアレン達は絶句した。
最強最悪の魔獣とも呼ばれるドラゴン。その攻撃力は他の魔物の比ではないし、硬い鱗は並みの攻撃では傷一つ付けられない。しかも大きさから察するに年を経たドラゴンだろう。年を経たドラゴンともなれば狡猾で俊敏。パーティー単独で簡単に倒せる相手ではない。
リズの報告によれば、14階層の入り口付近は広大な広場になっているが、その入り口の前に体長5~6m程のドラゴンが眠っているのだという。
「まずいな・・・。」
「滅多に出くわさないんだけどねー。」
「どうするアレン。14階層の入り口は今のところここだけだ。」
「このままドラゴンが立ち去るのを待ちましょう。私たちが傷ついては元も子もないわ。」
常識的にはサブリナの言う通りだ。
しかしアレンは迷っていた。
今はギタンがいない。それに救出ミッションは時間との勝負だ。なんとか、ドラゴンを回避して14階層に降りる事が出来れば最善なのだが、その手が思い浮かばない。
<紅の翼>にとって、ドラゴンは決して倒せない相手ではない。しかし、こちらも相当な被害を被るかもしれない相手であることは間違いなかった。事実数度の戦いの中で、メンバーの何人かが大けがをしている。メギドの実力が想像以上だったとしても、チームを組んで間もない今は危険な賭けになるだろう。
「寝込みを襲えば、あるいは・・・」
「やめようぜ。A級パーティー<紅の翼>はもっとカッコ良くなくちゃな。」
アレンが振り向くとニコニコと笑っているメギドがいた。
「だが、正面から立ち向かえば、間違いなくケガ人が出る。僕は・・・」
「寝込みを襲って手負いになったドラゴンなんぞ、それこそ手がつけられんぞォ。まあ、ここは俺に任せておきなって。」
メギドはニコニコしながら、ゆっくりと前に向かって歩き出した。
「よせ! 危険すぎる! いったい何をする気だ!?」
メギドは少しだけ首を傾げると、事も無げにこう言った。
「話し合いだ。」
その言葉に皆が凍り付いた。
「相手は魔物だぞ。話し合いなんかできる訳ないだろ、オッサン!」
「そうだ。魔物は人語を解しない。奴らにとっちゃ俺たちはエサでしかないんだ!」
メギドは不思議そうな顔をして<紅の翼>の面々を見回した。
「大将。ドラゴンは魔物か?」
「え?」
「魔物だって長年生きて来たヤツは頭も回るようになるし、人語を話す奴も出て来る。もっとも魔物は話し合いにはならんがな。だがよ、ドラゴンは動物だぞ。年を経たヤツは無鉄砲じゃねえ。人語をある程度理解する奴もいる。」
「ウソだろ。」
「ドラゴンって魔物じゃないの?」
「お前ら、ドラゴンの卵を見た事無いのか?」
言われてアレン達は初めて気が付いた。
魔石に集まる魔素で構築される魔物は、定義で言えば生命ではない。便宜上は疑似生命体と呼ぶが、動物や植物のような生命体ではない。それ故に子孫を残す事は出来ないのである。
理屈は分からないが、魔石と言う因子が魔素の濃い場所に放置されると、魔素を集積してその疑似生命体を作る。それが魔物である。
魔物にあるのは渇望である。
己の魔素をより多く集めようと生命体を屠る。生命体の魔素を多く取り込んで、強大な魔物へと変貌していくのだ。
確かにメギドの言う通り、ドラゴンの卵は非常に貴重だが高値で売買される。それに異国ではドラゴンを使役して騎兵団を編成していると聞いたこともあった。
「・・・だからって・・」
メギドはアレンの言葉を手で制止した。
「だから試しだって。もしそいつが分からず屋なら仕方ねえさ。そん時は俺が囮になって入り口からヤツを放す。お前らは隙を見て14階層に潜れ。俺はヤツをまいてから、それとなーく合流するさ。」
やっぱりメギドは笑っている。
「おめえら、やっぱりいい奴だな。酷い輩は真っ先に俺を囮に使うだろうさ。」
メギドは笑いながら散歩にでも行くようにドラゴンのいる方向に歩み始めた。
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灯りの魔法に照らされた大広間には確かに巨大な紅い竜が眠っていた。
メギドは躊躇することなくドラゴンに近づくと、気軽に声を掛けた。
「やあ。元気そうだな。」
ドラゴンはス~っと片目を開けた。
このドラゴンにとって、人間一人ぐらいは羽虫程度でしかないのだろう。
「安心したよ。お前さんが話の分かりそうなヤツで助かった。」
メギドは通りすがりの町人に話しかけるようで屈託がない。普通の人間ならドラゴンの傍に寄っただけで総毛立つものなのに。
「ちょっと頼みがあるんだ。俺はあんたの後ろの穴から下に降りたいんだ。眠ってたところ悪いんだが通しちゃくれねえかな?」
ドラゴンは両目を見開くと、突然立ち上がってメギドに向かってゴォオオオっと吠えた。
「ヤバイ!」
飛び出そうとしたアレンの腕を、サブリナが掴んだ。
「だから、謝ってンじゃねえか。俺だってあんたなんかとやりあいたかあねえんだぜ。」
ドラゴンの恫喝にもメギドはビクともせず、ドラゴンの両目を見据えていた。
ジリジリと焼けつくような圧をドラゴンは放つが、メギドは柳のように受け流している。
ほんの2~3分程度の時間。
しかし アレン達にとっては1年もたったかのような時の流れだった。
やがてドラゴンはメギドに顔を背け、ドシンドシンと地面を響かせながら暗闇へと姿を消した。
「さあ、行こうぜ。」
メギドはアレン達に親指を立てて見せた。
昔、クイズ番組で出来るまでの年月の順に並べなさいという(多分性かな)問題があって、そこに”土”があったのだけど、僕は1年くらいかなあと思っていたのだが、答え合わせで100年かかると聞いて驚いた。
実は土は人間の手では作れない物質の一つで、中にいる微生物の仕組みも解明されていない。土はどこにでもあると思われがちだが、その生成には途方もない年月を要している。植物は土が無いと生育できない。ゆえに火星や月に人間がコロニーを作れるようになっても、植物の栽培は水耕栽培以外は出来ない。 もっとも、地球から土を運べば別だが、土を作成するのに地球の環境下でも100年かかるので、他の星では効率的ではないのである。驚くべきことに、土を今ある環境下から取り出すと、微生物のネットワークが途切れて別物になってしまい、同じ土には戻らなくなってしまうらしいのだ。
我々が生きている地球と言う星は、まさに奇跡の星なのだという事を、改めて思う。
という訳で、100年後の未来の為に夏場は農作業に勤しもうと思うのである。




