エピローグ
ひゅjjjj_$HYUうううううううううううう
うちのニャンコが書いた文字。 記念に取っておきましょう。
(だから邪魔しないでくれーー!)
スパカブ村から北西へ3kmほど入った森の中に小さな丸太小屋があった。森に入った猟師や木こりたちが、帰りが遅くなった時などに使う一種の簡易宿である。
そこに今、4人の人物がいた。
フードを目深に被った人物2人の前に、アーモンとヘイゼルの二人は跪いて相対している。
「首尾は? どうでしたか?」
おもむろに口火を切った声は女性のようだ。
「へい。上々でさあ。この通り魔力羅針盤もガメてきましたし。」
ずぶ濡れでほほ笑むヘイゼルが見せた魔力羅針盤に、女は興味を示さず懐から出した皮の袋を二人の前に投げただけである。
「あ、ありがとうございます!」
ヘイゼルはそそくさと皮の袋をカバンにしまい込む。
「それで、私たちはこれからどうしたら?」
「南へ行き、名を変えなさい。しばらくはその金で遊んで暮らせるでしょう。そうねぇ・・カルメラの港町あたりがいいかしら。あなたたちに働いてもらいたい時は、また連絡するわ。」
あまり抑揚のない声だった。
「ありがとうございます。ですが、これだけですと・・・」
女は何も言わずもうひとつ袋を投げた。
「ありがとうございます! それと・・」
「まだ何かあるのか!」
女の後ろに控えていたフードの男がイラついたように口をはさんだ。
「いえ、いえ。そうでは。ただ、この魔力羅針盤をどうしようかと・・」
「お前たちの物にすればよいでしょう。用はそれだけです。さっさと行きなさい。」
二人は下卑た顔をニヤつかせ、ペコペコと頭を下げながら小屋を出て行った。
「始末しますか?」
少しして、フードの男が言った。
「・・・・・・いいえ。放っておいていいわ。下種には下種の使い道はあるものよ。」
「はっ。」
女は閉ざされた窓から入り込む日の光をじっと見つめていた。
「・・・・・・あの、何か?」
「・・・監視されているようね。あなたの殺気に誰か反応したみたい。」
そう言うと、女は床に腰を下ろした。
「私が行きます。」
「ダメよ。もう相手の殺気は消えたわ。」
「こちらに来るのでは?」
「来ないでしょうね。そんな三流の相手じゃないみたいよ。今度は反応しないわ。・・自分を諫めたのね。多分、相手の目的は一つ。私たちがどこへ行くかを見定める事。だから夜まで待ちましょう。あなたも少し落ち着いたらいいわ。」
男は不満げだったが、主の言う事には逆らえなかった。
気づくとすでに、女はスースーと寝息を立てていた。
******
「それで・・。」
「見失いました。」
「失態だな。」
「はい。責めはいかようにも。」
サスケは傅いたまま微動だにしない。
二人とも言葉は淡々としている。お互いに予測していた結果だったのかもしれない。
「・・・ご苦労だった、下がっていい。少し休みなさい。」
サスケを労う青年は金髪の巻き毛を指で巻いた。
彼はまだ若く、その表情にもまだ幼さが残っている。身なりは上等で、襟には王家の紋章が刺繍されていた。髪をいじるのはその青年の考え事をする時の癖なのだということを、サスケは知っている。
「どうしたんだ? もう下がっていいよ。」
「新たな下知があるかと。」
金髪の青年は、ふと何かを話しかけたが、急に沈思に落ちた。
「・・・今はまだいい。シスの街に戻るのか?」
「はい。まだ何かあるやもしれませんので。」
「そうか・・何かあればボクに報告してくれ。」
「御意。・・・」
「どうした?」
「恐れ多い事でございますが、ひとつだけお願いがございます。」
「あれは駄目だ。あれは父君のオモチャだからね。ボクが勝手に使うことは出来ないよ。」
サスケは静かに頭を下げると、霧のように消えてしまった。
男は巻き毛の金髪をかき上げると、深くため息をついた。
「また戦になるのか・・・・。」
そう言うと、椅子に深く腰を下ろした。
******
「それが・・なぜかは分かりませんが様子が変なのです。いえ、何がどうと言う訳では無いのですが、あの子があの子ではないような・・・いえ、いつも通りです。いつも通りなんですけど・・・あの子が生まれてからずっとあの子を見ていますでしょう。何か・・こう・・何かが違うような感じがしてならないのです。ええ、私の勘違いならいいんですけど・・・ちょっと心配になったものですから。ええ、アレンさんたちがひどい怪我を負ったと聞いてます。あの子は幸いにも大きな怪我が無くてホッとしました。まだ結婚前の娘ですしね。大きな傷跡でも残れば・・ええ、治療院の先生たちからも問題はないと言われています。けれど・・心配しすぎでしょうかね、ふふふ。」
モンテベルティ夫人は腑に落ちない様子で薄く笑った。
「分かりましたわ、おばさま。私も心配しています。誰でも生死の境を彷徨った時には、体に異常が無くとも心を病んでしまうこともあります。」
セリーヌはそう言うと、紅茶を一口飲んだ。
「それにしても、遅いですわね。」
すでに12時を回った深夜である。
前日に夫人から娘の違和感を聞いたセリーヌは、とある提案をした。知人に凄腕の治癒師がいるから、診てもらってはどうかと言う相談だ。
夫人は治療院の治癒師が問題無いと言っているからと、最初は断ったのだが、「セカンドオピニオンという言葉もあるでしょう。」と半ば強引に承諾させたのである。
ギルドの受付嬢としては業務を逸脱した行為ではあるが、ザルツからも<紅の翼>の動向には気を付けるようにと念を押されている。。。と、自分に言い訳をしている。
コンコンコン
と、3回ドアをノックする音が聞こえた。
夫人がそそくさと立ち上がり、ドアを開けた瞬間、悲鳴を上げそうになった。
ドアの外にはドア枠を超えそうになるほどの大男が申し訳なさそうに立っていたからである。
「ちょっと、駄目じゃない。ちゃんと身なりをきれいにしてきなさいって言ったでしょ!」
小声で激しく攻め立てるセリーヌ。
「すまん。これでも;;まあキレイにしてきたつもりなんだけど。。ナ」
大男は消え入りそうな声で言い訳をする。
「大体、遅すぎるのよ! いったい何をしてたの!」
「いや、そのぉ・・なんというか・・・若い女性の自宅に行くってのは・・」
「寝てる間じゃないとダメだって言ってたでしょ!」
「いや、まあ、そうなんだけどね・・・」
「どうぞ。こちらに座って。」
見かねた夫人が笑いをこらえながら、大男を中へと促した。
大男は中に入ると、恐縮したように縮こまって椅子に座った。
「ほら、ちゃんとご挨拶して。」
「おう。いや、はい。俺・・いや、私はメギド・・メギド・ダイムラーといいます。冒険者やってます。D級ですけど・・。」
夫人が目を丸くして驚いたようにメギドを見た。
「まあ、それじゃあなたがリナの先生。娘がいつもお世話になっております。」
と、立ち上がって深々と頭を下げた。
「いや、その、なんというか、いえ、まあ、大したことは教えてないんで・・・」
「ふーん。そーなんだ。」
「いや、魔法だよ、魔法。」
「分かってるわよ。私には教えてくれなかったくせに。」
「いや、それには事情があってだな・・」
「リナの先生なら安心ですわ。」
夫人はにっこりとほほ笑んだ。
「あのぉ。リナはどうなっているのでしょう?」
メギドは少しだけ難しい顔をした。
「魔術師が限界以上に魔力を放出した場合に、時として精神を病む場合があります。ちょっと分かりにくいかもしれませんが、魂と肉体が一致していないというか、ズレのようなものが出来る事があるんです。今すぐにどうということはない・・のですが、放っておくと突然死する場合がある・・んです。」
夫人は目を丸くした。その目には涙が浮かんでいた。
「ですが、御心配には及びません。治せる病です。いや、病ではないんですが・・少しだけ時間をください。」
メギドはにっこりと笑って見せると、夫人の手を取って深く頷いた。
(「ン!! ぎゃああぁあああ!!!!」)
えーと、とりあえず入りかけた所なんですが、私の脳の中にはまだ話は消えていませんので、再開は可能です。ただ、こちらも終わりの見えない話なので7章あたりで完結させるつもりではいます。
僕は本編よりもスピンオフに注力を注ぐ傾向にあるので、あまり本編が進まないという致命的な弱点を抱えてまして・・草。 この作品についてもエピローグの後は、1本スピンオフを書くつもりでいます。まあ、今回のテーマの仕事に出品するつもりだからなんですけどね。メギドも出ますが、本編とは多分深くかかわらない人物の話になります。
では、御機嫌よう。




