プロローグ
魔人……それは人間を殺し人間の魂を食らう者。
魔人のトップである俺は人間だが、魔人の生みの親で魔人を増やし続けている。
魔人の作り方としては、魔人の種となる寄生虫の卵を人間に植え付けると、寄生虫はうなじ部分に寄生し、脳や身体を操るというものになっている。
魔人狩り……それはその名の通り魔人を狩り殺し、魔人の殲滅を目論む者達。
人間と魔人はここ40年間争ってきた。ちなみに全面的に俺ら、魔人側が悪いだけど。
バレなきゃ犯罪じゃないんだわ。
表向きでは俺もその一員だが、俺はあえて弱者を演じている。理由としては、魔人を“弱いから”斬れないと錯覚させるためである。
魔人は俺の野望のために生み出したもので、俺の手駒で、俺の大事な部下である。当然それを傷つける者がいれば腹立たしいし、殺したくなる。
魔人は人間を襲うので、人間側が生きるために対抗してくるのは当たり前だけど、やっぱうざい。
人間の体はやはり面倒くさい。
具体的には、生活習慣の乱れやストレス、遺伝など割とハンデが大きい。
そしてそれが体の表面に出やすいせいか、俺はハゲてしまった。最悪だ。
部下の1人に指摘されて核兵器を落とされたような大ダメージを心に食らってしまった。
薄くなってきたトップの毛を確認すると、さらにストレスを感じてしまい、最終的にはツーブロックが完成した。
普通ならハゲを治すなんて諦めるだろう。でも俺は違う。
こういうこともあろうかと、研究し、部下の一部を実験台にした結果生み出されたのは転生の儀式である。
犠牲の数は絶大であった。
150人もの命を糧に俺はハゲを治すべく転生の儀式を行う。
儀式のために必要なものは、星石と無駄に細かい魔法陣と己の命である。
星石は魔人にとって毒なので、この準備は俺1人でする必要があった。これがかなり重労働。
星石はかなり高価で貴重な物な上に、たった数cmで1kgするという重さのこれらをトラックの荷台がパンパンになるくらい必要となる。
転生の準備を整えた俺は、魔法陣の真ん中に立って自決する覚悟を決める。
1番近くで支えてくれたトップの7人に見守られながら、魔法陣の真っ白な光を俺の頭が反射する。
「来世はハゲませんように……」
俺は剣で自分の心臓を貫いた。
「またな、みんな」
俺は200年後の世界に転生した。
魔人達の寿命は無限なので、魔人狩りに殺られていなければ元気に生きているだろう。
「元気な男の子ですよ」
「うわ〜可愛い!カイラスも抱いてみて」
汗まみれの赤髪の女性が赤子の俺を赤髪の男性に渡した。
恐らくこの人達が俺の生みの親なのだろう。
「私にも抱かせて!」
6歳か7歳くらいの少女が部屋に入り込み、俺を抱きたいと申し出てきた。
両親は口を揃えて断った。
「「フェリアにはまだ早いよ」」
最後に確認しておかねばならないことを確認しておく。
頭の上に手を置いてみるとサワッとした感覚があって最大の安堵をした。
乏毛症ではなさそうだ……
フェリアも俺も赤髪なのは遺伝のせいだろう。かっこよくていい。
それにこの国では赤髪は縁起が良いと言われていて、人間側に潜り込む際には都合がいい。
遺伝ガチャはとりあえず当たりと言ったところで、父親の職業が気になるところだ。
ガッシリとした体付きは、魔人狩りのトップハンターや、騎士団のエース的存在にもなれそうな見た目だ。戦闘能力もかなり高そう。
これが魔人狩りだったら神喰いの七柱が殺られている可能性もある。
俺は会ったばかりの父親に恐怖を覚えた。
読んで頂きありがとうございます!