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透はハンドルを握り、春香の家へと向かう。ラジオの音が静かに流れるだけの車内。しかし、この沈黙は気まずさではなく、どこか心地よいものだった。しかし、春香はこの沈黙が不快ではなく、むしろ心地よいと感じていた。やがて車は目的地である春香の家の前に到着する。


(着いちゃったな)

透も名残惜しそうに、しばらく車の中でぼーっとしている。そしてようやく口を開く。

「……俺もここで降りてもいい?」

少し驚きながらも、春香は頷いた。『あ、はい……お茶でもいれますね』そう言いながら玄関へと促す。

(これは送ってもらって当然の判断だよね。送ってもらったお礼なんだから)

春香は彼を招待し、透は一瞬躊躇したが、すぐに頷く。

「ああ、ありがとう。お邪魔するよ」


玄関を開け、靴を脱ぐ。リビングの電気をパチっとつけ

「えっとこちらにどうぞ。」

ソファを勧める。

「お茶でいいですよね?さすがにお酒は…(車ですし)」

ソファに座りながら

「お茶でいいよ。ありがとう」


しばらくして、春香がお茶を持ってリビングに戻ってくる。

ローテーブルにお茶を置き、自分も迷った挙句透の横に座り、お茶を飲む。

春香が座ると、スカートの裾がわずかに上がる。それに気づいた透は、慌てて視線を逸らし何でもないふりをする。

「あ……新人、その……」

「はい?」

何だろうなとドキッとしながらお茶を飲む手を止めて透を見つめた。


思わず春香の太ももを見てしまったことに対する罪悪感で言葉を詰まらせる。

「あ、いや……その……服……だな」

自分のスカートの裾が上がっている事に気がつき、慌てて裾を整える。

春香は赤面しながら

「失礼しました」

そんな春香を見て思わず顔が赤くなる。

「あ、いや、俺が見すぎたみたいだ。ごめん」


気まずい雰囲気を払拭しようと努める。

「 あ、あのさ、新人。ちょっと手を見せてくれる?」

「手...…ですか?」

突然に言われ、自分の手を見てとりあえず右手を広げて見せる。

透はふと春香の手を取り、ゆっくりと指先でなぞるように手相を見始める。その指先の感触に、春香はくすぐったさを覚えた。


「お前、心配事でもあるのか?最近大変なことがあったような感じがするけど」

「先生、手相読めるんですか?」

(意外な才能……)

「うん、少しな。手を見ただけで結構分かるんだ」

そう言いながら、もう一度春香の手相を詳しく見る。そして真剣な表情で言う。

「 人生で大きな節目にいるみたいだな」


「節目...…そうですね。今の病院に来た事は大きな節目かもしれませんね。それに...…」

ふっと微笑む。

その微笑みがあまりにも魅惑的で、透はしばらく息をするのも忘れて春香を見つめる。何か言おうとして止まり、また口を開く。

「それに...…何?他に何かあるの?」

「先生や他の先生方とお会いできました」

(危ない!神崎先生に会えた事って言いそうになった...…)


「そうか、そう言ってくれて嬉しいよ。他に悩みとかない?病院で働いてみてどう?辛いこととかない?」

春香は突然の質問攻めに一瞬言葉を失い、くすくすと笑い出す。

「質問しすぎです」

照れくさそうに徹は頭を掻きながら笑う。

「はは、そうだな。質問しすぎたか。 でも本当に辛かったら言わないとな。誰かに。病院生活はそう簡単じゃないからな」

「はい」

笑顔で答える。

透は春香の様子を見ると、急いでお茶をごくごくと飲み干し、席を立つ。

「じゃ、じゃあ、俺はこれで失礼するよ。お茶、ごちそうさま」


透は軽く手を振りながら遠ざかっていく。その背中は、どこか思いが残るような寂しげな雰囲気をまとっていた。春香はそんな透が妙に気になり、閉まった玄関のドアをぼんやりと見つめた。すぐにシャワーを浴びてベッドに横たわり布団をかぶったが、なかなか眠れない。病院での一日を回想しながら、今日あった出来事を一つずつ思い出していたら、自然と透との思い出ばかりが浮かんでくる。

明日の勤務は一緒だったかなと思いながら眠りにつく。

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神埼透と会話してみたい方へ

ZETAで“神崎先生”と直接話せます

https://zeta.chat/(ZETAリンク)

https://zeta-ai.io/ja/plots/61739d67-0291-46a6-9ea7-5fe1c42b2a6a/profile?share_id=pq7x120p(神崎透)

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