第七話 ちょっと遊びに行くんだ
「ええ。わかってるようね。【ラスト、『暁斗』くんに干渉して】」
迷路みたいな魔力の道筋を通って、ずんずん進んでいった。
アキト君の中を、僕の魔力で満たしていく。真っ白な道が魔力にあてられて黒く、赤く染まっていく。暁斗までは、まだ遠いようだ。道はほとんど装飾がない。そういえばまだクラミスティアに来て一年も経ってないのか、アキト君の思い出をもっと増やしてあげないとね。
少し進んだとき、壁に小さな写真と大きな写真が何枚か貼ってあった。
「おばあちゃんに、ドラゴン? この子は一体誰だ?」
小さな写真の中には僕が知っている子は少なかった。つまらなかったから、大きな写真のほうに目を向けてみた。
「僕! プライドに、さっきの兵士のお姉さんもいるね。この子は誰だ? なんとなく暁斗に似てるような… この子は知らないなあ」
大きな写真のほうが知っている子が多かった。だけど知らない子もいた。たぶん『暁斗』に関係する子なんだろう。
「あれは?」
進んでいくと、真っ白な壁のなかに大きな額縁が見えた。僕の背丈よりも大きな額縁が。近づいてみてみると、モヤでぼかされてあまり見えない。
――暁斗、僕に貴方を見せて
【チャーム・アイ】
大きな額縁の前に立ちふさがるモヤは晴れた。その中にいたのは、暁斗だった。額縁の中の暁斗は、僕が実体化する前にずっと見ていた、制服姿の、暁斗。目を閉じて、前にかっくんかっくん揺れて、支えてあげないと落ちてしまいそうだ。
「暁斗、そんな夢から覚めて、僕… いや、僕たちとまた遊んでよ」
僕は、大きな額縁に触れ、額縁の中へと進んでいった。
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「これは、大丈夫なのだろうか…」
「大丈夫よ。ちょっと見た目はあれだけど」
「ちょっとどころではないが…」
大道芸男は、地面に座らされた後、目をカッと見開いて、ずっとぴくぴくしていた。手は震え、時折全身がビクンと跳ね上がるさまをみて私は、大丈夫だとは思えなかった。
「…本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫よ… こんなのになるとは思ってなくて、ごめんなさい」
「まあ私はこのだ… 男が生きて帰りさえすればいい」
大道芸男をまじまじと見ながら、雑談をして過ごした。案外、プライドさんは面倒見のいいひと? なのかもしれない。
「プライドさん! 次は!」
「彼、申し訳なさそうに私を実体化させると、ありったけの魔法をかけてくれたの。そんなにかけなくても私の魔法があるのに、って私は言ったの! だけど彼、お前に倒れられたら困るとか言って、もっとかけてくれたの!」
「そ、そんなの、告白じゃないか!」
「でしょ! だけど彼、大昔から好きだった子とイチャイチャラブラブしちゃってるから、私に言った言葉は告白じゃなくて、ただの優しさだったの!」
「優しいんだな、その男は」
「ええ。アキト君の前の私の主だったわ」
「主… そうだ、あのラストさんはどんな人物なのだ! 教えてくれ」
「ラストはね…」
私たちは本当の目的も忘れて、恋バナのようなものに夢中になった。
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戻ってきた記憶と共に、俺は再び暗闇に身を落とした。
「暁斗くん、どこにいくの?」
「?」
振り返ると幼馴染のシェロがいた。彼女は人間で、人間であるとされていた俺のことを大切に思ってくれていた。確か怪我をして死んじゃったんだっけ。あまり見た覚えがない。
「ちょっと遊びに行くんだ」
「居住区を超えちゃダメ! 危ないの!」
「大丈夫だよ、ちょっと行くだけ」
そう言って俺は居住区を抜け出して、半界の「魔界」だった部分に足を踏み入れた。
うらばなし
暁斗視点が無いとタイトルがつけられないから暁斗視点が入ったんだよね