第四話 限度ってもんがあるだろ!!
「色欲の悪魔、ラスト様をひっ捕らえようなんて、趣味の悪い貴族にでも買い取られたいのかい?」
「どういう意味だ貴様!」
「わからせられないと、わからないようだね」
―――――――
記憶がない。何をしていたんだ? 俺は。ラストだし、嫌な予感だけはぷんぷんしてるけど。兵士さんに訊いてみよう。
「…俺はさっき、何をしていたんだ?」
「ひぃっ! 許してください!! なんでもしますから!!」
なんか聞き覚えのある言葉が… 『なんでもしますから』だけはどんなときでも言ったらダメだろう!
信じたくはないけど、そんな言葉を使うほどの事がさっき起こったってことだ。
「ラスト、お前は何をしたんだ?」
「久しぶりだったから手加減ができなかったよ」
答えになっていない。だけどなんとなくラストの頬が赤く染まっているような気がする。
「何をしたんだ?」
ちょっと凄みを出して聞いてみた。ラストは、いつもよりも気持ち悪い動きをしながら言う。腰を振るな、腰を!
「ほんと先っちょだけしか挿れてないから!! 安心して、暁斗!!」
「は?」
先っちょだけとか、絶対全部じゃん。絶対そうじゃん!!
だけどまだ俺の身体でやったとはわからない。実体化してやったのかもしれないし。
「そこのお兄さん、聞いていい?」
「ひい…」
どんなひどいことをしたんだ、ラスト。俺は実体化させたラストを俺の横に並べて地面に横たわる兵士たちのうちのひとりに訊いた。
「手を出してきたのは、俺とこいつのどっち?」
「あ、あなた… です」
「最悪だ!! 俺の身体を使って、何やってんだお前!! おいラスト!!」
「何でもするって言ったのは、暁斗だろう? 僕ははじめに言ったよ、『少し身体を借りる』ってね…」
「それにしても限度ってもんがあるだろ!! 俺の純潔を穢しやがってこの野郎!」
俺がそう言うと、ラストはぽかんとして黙った。そして疑問じみた顔で俺を見て一言言った。
「え?」
「なんだよ」
「…暁斗って」
「俺がどうしたんだ?」
「これが『初めて』だったの?」
そりゃそうだろ!! 新しい身体になってからまだ数日しか経ってないし、そんなことできる子がいたら階段から落ちるようなヘマすることなんかなかったし、落ちても受け止めてくれてたよ! …たぶん。
さよなら、俺の純潔。
とりあえずラストは一発殴っておいた。
「ごめんって! 暁斗! 暁斗はかっこいいからもう卒業したものだって思ってたんだよ!!」
「あとで私もこれをぶっ叩いておくから! 機嫌直して、アキト君」
ラストが腹を抑えながら俺を見て言い訳をする。
ちょっと上目遣いでプライドが俺を宥める。そんな顔で見られたら機嫌を直さないわけにはいかない。いや、ただここで機嫌を直さなかったときになにをされるかがわからないからそうしただけで…
「それよりもこの人たち、どうするんだ?」
「ひっ、ひいっ!」
地面に這いつくばる兵士たちを見下ろす形になってしまった。どうしよう、本当にどうしよう。国なんかに目をつけられたら終わりだ!
「あ、あの… 俺はどうすればいいですか?」
「ひ… あ、とりあえずついてきてもらう。王命だ、逆らうことはできない」
「だってよ、ラスト」
「なんで僕にいうのさ」
「すまないが、ついてきてくれ」
王命だとか言ってたし、とりあえずついて行くか。ついて行けば街を探す手間も省けるだろうし。
最悪、ラストとプライドに力を借りてでも脱出すればいいだろう。そう思いながら兵士に連れられ、歩き出した。
あとがき
プライドの強化魔法は神に及ぶレベルで、他のヤツの強化魔法と重ねがけをしたら神に勝てる… かも?