ハロウィン
ドン!
「あ痛たたた・・・」
「痛いなぁもう」
「それはこっちの台詞ですよ」
「歩きスマホは良くないでっせ」
「そう言うあなたの手に持ってる物、スマホじゃないですか!」
「キミがぶつかって来たんだ!」
「僕から見たらあなたがぶつかってきた!」
「ああ、もう良い、私は急いでるんだ」
「僕だってです」
「喧嘩はやめにして一つ、道を教えてくれないだろうか?」
「僕も迷ってたとこだったんです」
「さっきからずっと、スマホで地図アプリを開いて位置情報を探しているんだが・・・」
「そうなんです。どうもおかしい・・・」
「現在地が墓地の中なんですよ」
「私のスマホもそうだ。現在地がずっと墓地に居ることになっている」
「大規模なサーバーの故障でしょうか?」
「そうかも知れんね。で、キミはどこに向かって急いでるのかね?」
「重要な会議があるんです。駅へ急いでいたはずなんですが・・・」
「わたしはハロウィン・パーティーの会場だ。娘が魔女の仮装をすると言うのでな」
「ああ、だからあなたもコスプレなんですか」
「私は仮装なんぞしとらんが・・・?」
「足がないじゃ無いですか?」
「あれっ、本当だ!!!!足の先がない!!」
「あれぇっ、!!!!僕もだ!!足がない!!!!」
二体の幽霊は墓地の中、プカプカ浮かびながら目を見合わせ、頭を捻り、何故こんなことになったのか少しずつ思い出した。
「そう言えばあの時・・・」
「スマホを見ながら歩いていて・・・」
「何かにぶつかったんだ・・・」
「・・・車・・・」
「ああ、そうだ・・・私もだ・・・」
「痛かったなぁ」
「いやぁ一瞬でしたけどやっぱ痛かったですね・・・思い出してきました・・・」
「歩きスマホはいかんなぁ」
「僕は自転車スマホでしたが・・・生まれ変わったら絶対しません」
「可愛い魔女に扮した娘にも会えなかった・・・恨んでも恨みきれないよ、歩きスマホをした過去の自分が・・・」
近年墓地に増えている四角いスマホの灯りを手に持った幽霊達。はあぁ・・・と、今夜も彼らの溜息が聞こえてくる。
おしまい!