暗号解読しちゃいましたね!
「で、これがその暗号なんだけど」
江吉良エリ絵がいなくなったファンシー部屋で、俺は二人に事のあらましと、この暗号が見つかった経緯を説明した。
「『5E:7G』……特務戦隊に関すること、なんだよね?」
「ああ。尾田士長は、おそらく人物を表しているだろうと言ってたけど」
「ふうん。それ、多分デコ助とトーイだよ」
「そうなんだ。全然見当もつかなくて。分かるか、武藤准尉?」
「うーん。いや、僕もこういうの得意じゃなくて」
「だから、デコ助とトーイだってば」
「おい少し黙れよ高嶺。今考えてんだから」
「て、え? なんて言ったの高嶺?」
「だから、デコ助とトーイ。5期生と7期生で、イニシャルでしょ? 二人とも同期いないし」
「え?」
江吉良エリ絵の机に置かれたシルバニアファミリーのおうちで遊びながらさくっと答えを出した高嶺を、俺と武藤晶は呆然と見つめた。
「……なるほど。どちらも単体だと意味を成さないけど、2つ並んで書かれると、確かにそう読み取れるかも」
武藤晶がふむとその小さな顎をつまんだ。
「あ。そう言えば」
俺はスマホでPCと共有しているPDFファイルを開いた。そこには、特務戦隊隊員の名前や出身期などの、簡単なプロフィールが羅列されている。
「大藪ミク、音無カコ、9期生。遠山真也、高嶺ハナ、13期生。もしこの暗号に変換すると、それぞれ9O、13Tか。ここは複数人いるから個人は特定出来ないな。しかし、喜多嶋ユリは8期生だ。雅羅沙冬威は7期生……Gから喜多嶋のKまでの、H、I、Jがごっそりいない。これはどういう事なんだ?」
高嶺の解答、正解かと思ったけど、ちょっと規則性がズレている。アホの高嶺だし、やっぱ違うんじゃないかな?
しかし、これは少し妙でもある。同期生の名字のイニシャルが、全員同じになっているのだ。偶然こんなに揃う事があるのだろうか? その疑問には、高嶺が答えた。
「AからDは全滅。H、I、J。L、M、N、そして、Qの人は最初からいないよ。それは、『欠番』なんだって」
「欠番?」
なんだよそのロットナンバーみたいな言い方は。俺は、人の話をしてんだぞ。
「安定し始めたのが、Oのイニシャルとロットナンバーを持つ9期生からなんだって。その前は、全部失敗したりして、廃棄される事が多かったって」
「……何の、話をしているの?」
シルバニアのうさぎちゃんを滑り台で下ろした高嶺は、こちらを見もせず淡々と話していた。その異様な雰囲気に、武藤晶が問いかける。
「何って、私たちの話だよ? 強化人間の話だよ。私のロットナンバーは、T87。Tは13期生で、87は、何番目に造られたのかって数字だよ」
「なん、だっ、て……?」
武藤晶が絶句した。
「高嶺、T、ハナ、はちじゅう、なな……」
それが、高嶺の名前だった。お、おいおい。そんなの、まるで、機械か何か、ベルトコンベアーで作られてるもんみたいじゃないか。
「で、でもお前、警察署で、ご両親が来ないって、ふくれてて……、あの、家族は? あれは、一体、何なんだ?」
じゃあ、あの家族は何なんだ? 両親と弟は? 富士吉田市にいるはずの、お前の家族は、一体なんだ?
「? 家族だよ? 私を造ってくれたんだから、私の両親だし、弟だってそうだよね? 弟はね、102番で、灯次って言うんだよ。……それって、何かおかしいの?」
何の疑問も無くそう訊ねる高嶺は、俺と武藤晶を凍りつかせるのに十分だった。
この部屋の刻は、俺たちの中では止まっていた。
「ねえ、何か、おかしいの?」




