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水色しましまパンツですね!

 高嶺は空気を読まない。そして、先も読まない。思った事を喋るし、やりたいように動くだけ。こいつはそんな動物なのだ。俺はそれを忘れていた。


「あ、准尉、そう言えば私以外の子のおっぱいも揉んだよね? ほら、デコ助エリ絵のちっぱい。ね?」

「ね? じゃねーよ! なんでそういうこと言うのお前!?」


 これには冷静沈着な俺も流石にブチ切れ。アホな味方は優秀な敵より怖いってこれだろ。こういうの、戦場じゃなくてもはっきり分かんだね。


「ええっ!? エリ絵、と言えば、前に特務戦隊で大活躍し、今は昇進、アグレッサーに転属した、あの江吉良エリ絵さんですか!? あの、見た目は子どもみたいな、あんな可愛い子に!? きゃああああ! ロリコーン!」


 これには高学歴女子アナも悲鳴を上げた。ロリコンに何か嫌な思い出があるようですね。もはやプロ意識も吹き飛んでしまった模様。高嶺の攻撃力はホンマに凄まじいもんがあるなあ。はははははは。


 てかこれマジでヤバイわ。俺が社会的に抹殺されるやん。なんで俺が全国ネットでロリコン呼ばわり。なんとかしなければ、なんとか……、あ。


「これ、高嶺に貰ったやつ」


 俺はポケットの中に入れていた物を思い出した。良し、賭けてみる、か!


「いやあの、落ち着いて下さい。おっぱいだのちっぱいだの、なんにしろ事故なんです。本当に私がそんな事をしていたら、部隊が空中分解しているはず。しかし、此度の緊急討伐戦も事なきを得ており、それは私と戦隊員との信頼関係があってこそ。違いますか?」


 とにかくこの女子アナを落ち着かせないと。こんな時は、こっちが努めて冷静に、大人の対応をするのみだ。俺は口には自信があるぞ。なんとしてでも言いくるめてやる。おいこれ詐欺師の思考やないか。


「はっ。そ、そうですね。仰る通りだと思います」


 良し。事実から立証。これが対高学歴に一番効く。ここでトドメだ!


「そこで、これです」

「それは?」


 俺はポケットに入れっぱなしだった高嶺からのプレゼントを取り出した。すっかり忘れてたのでちょっとクシャけてるけどこれはこれで可愛いだろ。


「あ。それ、私が准尉にあげたプレゼント! え、まだ開けてなかったの?」


 高嶺も俺の意のままだ。それを言って欲しかったんだよ。


「まあ、部下から上官へのプレゼントなのですね? なるほど、これは普段から良い関係性が築けている証拠になります」


 女子アナも俺の思いのまま。ふはははは。俺って無敵ぃ!


「ははははは。実はこれ、あの緊急討伐戦の直前に受け取ったのですが。あまりの嬉しさにまだ中身を見てなくて。開けていいか、高嶺三曹?」

「えー? ここで? まあ、私はいいけど……、なんか、恥ずかしいな。キャッ」

「あらあら、微笑ましいですね」

「ははははは。照れるなよ、高嶺三曹。では」


 俺は高嶺と微笑みを交わしつつ小袋のリボンをほどくと、袋を逆さまにして、その中身を手のひらで受け止めた。


「わあ! 何か、凄く触り心地が良い物だな」


 それはさらさらとした感触で、ふわふわとした薄い布のような手触りだった。なんだろう、この素晴らしいフィット感。まるで、夢にまで見たような、いつかはこの手に掴みたかった物であるような気がしてならない。これ、一体何なんだ?


「あ、ああ……」

「ん? どうしました?」


 物を確認しようとしたが、その前にあわあわと青褪めた女子アナの様子が気になった。


「どうかな、准尉? それ、准尉の好みかな?」


 対して、高嶺はわくわくした様子で目をキラキラさせている。


「ままままま、まさか、こんな所で……」


 そして、大藪ミクは汗をだらだらかいていた。


「うん? まあ、お前からのプレゼントなら、好みとか好みじゃないとか、あんまり……!」


 そこで、俺はようやくそれを視認した。


「おわああああああ!!!!!!」


 そして、悲鳴出た。それは。


「パンツやないかーーーーーいっ!!!!!」


 俺はそれを握り締め、頭上高く掲げた。素晴らしい水色しましまパンツだが、なんだこれ意味分からん! これプレゼントなんだよな! 王子聖子も相談に乗ったって言ってたよな! なのに、なんでパンツが出てくんの!? 王子聖子って、俺をどんな目で見てんだよお!


「それ、准尉の好みに合ってたかな? ささ、かぶってみて? 准尉の喜ぶとこが見たいから」


 高嶺が照れ臭そうにはにかんだ。そこ、はにかむとこかな? つーか!


「そんなん答えられるかあああああ!!!!! なんで俺が全国ネットで自分の好みのパンツなんか答えなくちゃならねぇんだよ!!!!! そんでウキウキかぶったりとか、するわけねぇだろおおおお!!!!!」


 お前のその無邪気な笑顔、俺には悪魔みたいに見えるわ! 本気で悪意無くプレゼントしてくれてんのコレぇ!


「み、水色の、しましまパンツ……っ! いやああああああ!! そんなの、もう紛うことなきロリコンよーーーーーっ!」

「なにーーーっ!? ちちち、違う! 違うんだ、これは違う! おちおちおち、落ち着いて下さいいいい!!!」


 とうとう女子アナの精神が崩壊した。いやホント、ロリコンにどんなトラウマ植え付けられてんのこの子!?


 と、ここで俺の目の前にあるオンエアを映すモニターが、美しい風景に切り替わった。画面下には「しばらくお待ち下さい」のテロップが流れていた。そして、


「……帰ってくれ。そして、もう二度と来ないでくれ」


 でかいカメラの向こう側で、偉そうなオッサンが頭を抱えてそう言った。胃も押さえてるし、これは胃潰瘍とかになったのかも知れないな。なんかごめん。


「えー! 私たちの活躍、まだ話してないのにー! 今回の緊急討伐戦、放送予定だって無いんでしょ! そんなのあんまりだよお!」


 そんな苦しそうにしている偉いオッサンにも、高嶺は容赦なく怒りをぶつけた。ダメだこいつ。早くなんとかしないと、この放送のみならず、自衛隊すらぶっ潰す日が来るのかも知れない。


「はわわわわわわあああ……」


 ぶくぶくと口から泡を噴いている大藪ミクを見て、俺は、何となくそう思った。




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