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透明人間のラジオ  作者: 空色
2/3

ラジオ放送は楽しい

 

 ──ラジオ放送は面白い。 


 高校生の喜多見がラジオにはまったのは小学生の頃だ。この当時、ラジオ放送を聞くのが趣味だと言うと奇妙な目で見られて不愉快な思いをしたものだ。しかし、最近、クラスでラジオ放送が流行りだしたおかげでそんな目で見られなくなった。

 今日も家に帰るなり、ラジオ放送を聞き始めた。

 とはいえ、特にお気に入りの番組があるわけではない。

 ラジオのチャンネルを回していると、時折、別の国のラジオ放送が入ってくることがあるのだ。

 言葉は分からないので、ニュースやラジオ番組の意味はわからないが、異国の音楽を楽しむことができる。そんな放送を聞くのが、喜多見の楽しみだった。

 ある時ラジオのチャンネルを回していると奇妙な番組を見つけた。


 ──あはは……。


 ひたすらに人の笑い声が聞こえるのだ。


「何だ?」


 喜多見がラジオをそのままにしておくと、小一時間殆経った頃にぷつりと突然、その放送は終わってしまった。


「放送事故か?」


 不思議に思いながらも、喜多見は深く考えずにいた。


 ──翌日。


 喜多見は学校から帰ると何時もの様にラジオつけた。


 ──にゃあお! 


「うわっ!」


 突如猫の鳴き声がラジオから流れてきた猫の鳴き声に喜多見は驚き、その場に腰を着いた。


「ラジオか」


 チャンネルを見ると昨日のあの奇妙な番組が流れていたチャンネルのままになっている。

 喜多見はこの放送が気になり、チャンネルをそのままにすることにした。また小一時間ほどでぷつりとラジオは途切れてしまった。

 その翌日もその翌々日もその奇妙なラジオ番組は続いた。その内容も奇妙で、動物の鳴き声だったり、人の話声だったり、ただそれが小一時間ひたすら続くというものだ。喜多見は首を捻りながらも、続けて聞いて見ることにしたのだ。

 そして、そのラジオ放送を聞き始めてから、ある暑い日のことだ。

 エアコンが壊れてしまったせいもあり、喜多見は部屋の窓全開にしてラジオを聞いていた。外で遊ぶ子どもの声が聞こえていた。


「〇〇ちゃーん!」


 ──〇〇ちゃーん!


 外とラジオから同時に同じ子どもの声がしたのだ。喜多見は耳を疑った。ラジオから流れて来るのは、やはり、公園で遊んでいる子どもの声らしい。 


「収録でもしているのか?」


 喜多見はこの奇妙なラジオ番組の正体がわかるのではないかと窓から顔を覗かせ、遊んでいる子どもたちを見た。

 しかし、そこには遊んでいる子どもたちしか見えない。


 ──どういうことだ? 隠し撮でもしてるのか?


 流石に喜多見はこのラジオ放送が気味が悪くなってきた。けれど、好奇心もあり、喜多見はその奇妙なラジオ放送を聞き続けた、

 その翌日、ラジオ放送から今度はテレビ番組の声と隣のおばさんの声が聞こえてきたのだ。

 翌日、隣のおばさんにさり気なく聞いて見たところ、確かにそのテレビ番組を見ていたらしい。

 そこで喜多見はあることに気がついた。


 ──近付いて来ている!


 ラジオ放送で流れている内容は前日は隣の家、前々日は公園と喜多見の家へと近付いているのだ。それもよく考えれば、それより前に流れてきたラジオ放送ももしかしたらと思うところがあったのだ。

 それは喜多見が今聞いている()()()()()()()()()場所から喜多見の家までの道順なのだ。

 喜多見のラジオは以前聞いていたものが故障し、修理に出した帰り、たまたままだ使えそうなラジオが捨ててあったのだ。

そこで喜多見は「丁度いい」と拾って来たものだった。

 喜多見は気味悪いとも思ったが、このラジオ放送の正体を掴めるかもしれないという好奇心かが勝って、更に続けてこのラジオ放送を聞いてみることにしたのだ。

 その翌日、ラジオから流れてきたのは食器を洗う音、テレビの音だ。

 一階では喜多見の母親が食器を洗っており、リビングにはテレビがついたままとなっている。次第にリビングのテレビの音が小さくなった。

 これは始めてのことだった。何時もはただ音が流れているだけだった。

 ちょうどリビングのテレビの音が聞こえなくなり、はたと思った。


 ──2階に移動している?


 喜多見の家はリビングと台所の真横に喜多見の部屋がある二階へと続く階段があるのだ。


 ──もしそこを通って移動しているならば……。


 喜多見は背筋が寒くなった。じっと、ラジオの前で自身の部屋の扉を見つめた。

 ラジオからは何も流れず、無音だ。

 その状態で何分経っただろう。

 扉に異常がないことにホッと息を漏らした。喉がカラカラに乾いていることに気付いた喜多見は扉開けた。

 その瞬間。


 ──ああ、やっと開いた。


 男とも女とも言えない声が背後のラジオから流れてきて、喜多見はそのまま後ろを振り返らずに一階に駆け下りた。

 その後、修理に出していたラジオが返ってきたこともあり、()()()()()()はもとの場所に戻した。

 それ以降奇妙なラジオ放送は聞いていないし、喜多見はラジオ聞くことをやめていない。

 それは、ラジオ放送が楽しいからだ。




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