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12.悪役令嬢ロゼンダ

 パニウラディア公爵令嬢スレイアとザンブロッサ侯爵令嬢アフロディアーネ。そして今日会話を交わしたネネト。

 他の令嬢たちをかき分けるようにして三人に近づくと、ボクは声をかける。


「あら、どうなさったのでしょうか。パニウラディア公爵令嬢とザンブロッサ侯爵令嬢が何をお話しになっていらっしゃるの?」


 おー、なんか自然な感じで割り込むことができたぞ。さすがは悪役とはついているものの令嬢モード。


 その場に集まっていたご令嬢たちが一斉にこちらを見る。半分以上は驚くような、だけど残りは「誰だこいつ?」と訝しむ視線だ。

 普段のボクならこの時点で蛇に睨まれた蛙みたいに縮こまるんだけど、今は違う。悪役令嬢モードがここからその本領を発揮していく。


「あなた、どこのご令嬢? 公爵令嬢と侯爵家の娘であるわたくしとの会話に割って入れるような家柄の方なのかしら?」

「あら、これは失礼しましたわ。アタクシはギュルスタン子爵家のロゼンダと申しますの」

「ふん、聞いたことないわね……今は子爵家の出番ではなくてよ」

「おーほっほ。出番でないという意味では、このパーティは主催者であるコーデリー伯爵夫人に失礼ではありませんこと? なぜならここにいる皆様は全員コーデリー夫人がご招待した淑女ばかり。ならば全員が主役のようなものではありませんか。ザンブロッサ侯爵令嬢アフロディアーネ様ともあろうお方が、他の方を差し置いて目立とうなんてことはなさいませんわよね」

「うっ、ぐっ」


 このモードの凄いところは、ボクがちょっと思ったことを令嬢口調で上手く話してくれるところだ。

 ボクの口から溢れ出る言葉の奔流を前に、何も言えずに黙り込んでしまうアフロディアーネ。


 いやーすごいすごい、あっさりと会話の主導権を握ることに成功しちゃったよ。

 ただアフロディアーネからは凄い目で睨まれてるんだけど……なんでかな。


「ところでアフロディアーネ様がお持ちのワイン、とっても素敵な香りがしますわね」

「と、当然よ。我がザンブロッサ侯爵領の特産品ですわよ、美味しいに決まってますわ」


 へー、そういう反応が返ってくるんだ。じゃあこの子はやっぱり・・・・知らない・・・・んだな。

 だったら今度はボクの方から仕掛けてみようかな。


「でしたらこのワイン、アタクシが頂いてもよろしいかしら。家柄に関係なく皆が等しくこのパーティの主役であるとお認めいただいた、広くて優しいお心を持ったアフロディアーネ様であればお断りになられませんわよね?」


 ボクの言葉に激しい反応を見せたのは──ネネトだ。

 それまでは見た目や口調が大きく変わったボクに戸惑ってたみたいだけど、急に顔色が真っ青になっていく。


「ロゼンダ、そ、それは……」

「あら、もしかしてネネトール様がお飲みになりたかったのかしら? でもおやめになった方が良いですわね。何せ飲み慣れていない・・・・・・・・あなたでは、きっと酔ってしまいますもの。それに──早くお着替えした方がよろしいのではなくて?」

「で、でも……」

「そのワインは、おぬしにとっても強すぎるものではないのか?」


 色々と言い淀んでいるネネトに代わり、今度はスレイアが鋭い目つきで問いかけてくる。

 だけどボクの答えはもちろん──。


「おーっほっほ、ご安心くださいスレイア様。アタクシ、この手のもの・・・・・・にとても強い・・んですのよ」


 片目でウインクしながら答えると、スレイアの目つきがふっと柔らかくなった──気がした。


 よし、やるなら今だ。


 呆気に取られる様子のアフロディアーネからグラスを受け取ると、ボクは──素早くワイングラスに口を付ける。


 ごく……ごく……。


「あっ──」


 ネネトの戸惑う声を聞きながらボクは一気にワインを飲み干すと、ふぅと酒精に染まった息を吐き出す。

 いやぁ、久しぶりに飲むアルカイドル系の毒は舌にピリッと痺れて心地よかったなぁ。思わずペロリと舌舐めずりしてしまう。


「……美味しゅうございましたわ。さすがはザンブロッサ領の良質なワインですこと」


 さて、これで──無事に毒物の回収・・・・・は完了だ。


「な……な……」


 ボクの突然の振る舞いに目を白黒させるアフロディアーネ。

 きっとこんな失礼なことをされたことがなくて呆気に取られてるんだろうな。淑女のマナー的には最低な部類の振る舞いだと思うけど、問題を解決するためには仕方がない。


 そもそもギュルスタン子爵令嬢ロゼンダは今回限り・・・・の予定だ。

 ボクとしてはもう二度と出番が無い〝ロゼンダ″の風評よりも、毒物を確実に処分・・する方が重要だったからまったく気にして無いんだけどね。


「ロゼンダ、おぬし……大丈夫・・・なのか?」

「おーっほっほ、アタクシであれば大丈夫・・・・・・・ですわスレイア様。ただ少し酔ってしまったようですので、お先に失礼させていだきますわね」


 既にスレイアとアフロディアーネの観察というボク本来の仕事は終わった。もはやこの場に残る意味などないから、さっさと退散してしまおう。


「さぁネネトール様、あなたもお着替えが必要ですわ。一緒に退場させていただきましょう」


 ボクはネネトの腕を引くと、そのままパーティ会場から抜け出す。


「あ、あの──ロゼンダ? あなたは……」

「おーっほっほ、ワタクシのことは気になさらないでくださいませ。ご縁があればまたお会いしましょう」


 しかしこの【 悪役令嬢モード 】、今回はだいぶ助けられたけど「おーほっほ」っていう高笑いだけは勘弁してほしいなぁ。


「あ、待って──」

「ではごきげんよう、ネネトール様」


 ネネトを控室に押し込むと、無理やり扉を閉める。

 そのまま彼女からの追求を避けるため、逃げるように立ち去ったんだ。



 家に戻る馬車に揺られながら、ボクは大きく息を吐く。

 はーっ、それにしても今日は精神的に凄く疲れたよ。早く家に帰って女体化を解いて、お化粧を落としてお風呂にゆっくり浸かりたいな。今日ばかりは、いつもは面倒なエスメエルデのエステも恋しいや。

 そんなことを思いながら、ボクは馬車の揺れに身を任せたんだ。

これにて第二章は完結です!

次からは第三章になります(´∀`)


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― 新着の感想 ―
[一言] 相手を陥れるために死なない程度の毒を仕込んでたのかねぇ?
[一言] 毒に詳しいから飲んでも大丈夫な程度の耐性もある。 スレイア&ネネトールさんは毒に気付いていたみたいですね。 無事に回収できてよかった。
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