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なろうラジオ大賞投稿作

異世界園芸店は花言葉で無双する、と思ったら助手のお陰でちがうムソウになりそうです

作者: こだれ

 魔界には植物を育てるという概念がなかった。弱肉強食の魔界に放たれた植物は異形(いぎょう)と化した。カブを抜けばつんざく叫びを轟かせ、大輪の花は人を食い、顔がある樹木が森を走る。

 異形の植物は人々に忌み嫌われ、魔族ですら手を余し、専ら(もっぱら)駆除の対象とされていた。


 そんな所に異世界転移してしまった園芸店員はピンチだった。


「ウ、アア……」


 雌しべが女性の形をした異形の大輪花アルラウネ。

 花の甘い香りに誘われ、その異形に近づいていく園芸店員。その様子は、アルラウネのいつもの食事の風景になるかと見えたが……



「ほんと、あの時は店員様の事が神に見えましてよ!」

「うう、こんな所に来てまで職業病が出ちゃうなんて……」


「とはいえ、魔界の植物達は店員様のお陰で随分元気に、穏やかになりましたわ!」

「水と肥料をやっただけです……。【花言葉】は予想外でしたけど。アハハ」


 私は苦笑しながら、【助手】のアルちゃんからお茶を貰います。あの時、葉の萎れと黄変を見て、持っていた水と肥料をあげたら、アルちゃんはあっという間に元気なりました。でも、問題は何となくつけてしまった【花言葉】です。


 他の魔界の植物にも水や肥料をやっている時に、アルちゃんがツルで器用に手伝ってくれたので、


「アルちゃんに花言葉があったら【助手】が似合いそうだなあ」


と何となく言ったら、その【花言葉】通り【助手】になってしまいました。


 魔界の植物には【花言葉】はありません。私が付けた【花言葉】は、植物を【花言葉】通りにしてしまう様です。なんて大それた能力……。私はお花を育てたいだけなのですけど……。



「そういえば、魔界でも雑草はあるんですね」

「あら、あの生命力だけは抜群の植物達ですわね」


 お茶を一口飲み溜息をついてしまいます。アルちゃんの蜜の甘さが効いてて美味しい。


「実は花壇に雑草さんが居ると、お花の方の栄養が雑草さんに取られてしまって……」

「それでしたら、雑草に移動してもらえばよろしいのですわ。それと雑草に一つ、【花言葉】を店員様から頂けるかしら?」



 そう言ったアルちゃんが、早速花壇の雑草さんにお話をしてくれました。


「雑草さんはどこに行ったんですか」

「まあ、ちょっとした悪戯ですわよ」



 その日、人の王の城が【根深い】雑草で覆われた。

 魔界の森は雑草一つ一つが名を持ち、【花言葉】を持つ様になっていく。植物がただの()と扱われる事が()い、園芸店員の『無草(むそう)』は始まったばかりだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 鬼気迫る感じからほのぼのに切り替わるところがきれいですね
[良い点] その「ムソウ」か!! 予想できなかった!悔しいです!(>皿<) 夢想かなぁとか思っていた私は凡人の発想ですね。 タイトルの内容が最後の最後までわからないのに、わかったら「座布団一枚!」っ…
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