色の濃い芯と、色恋心
放課後の教室で
机と机の頭をくっつけ、向かい合わせに座る
傾き始めた夕陽が窓から差し込んで
君の黒髪にキラキラの粒を落とす
時折ゆらりと揺れる両サイドのおさげと制服のリボン
くくり損ねか、首筋を伝うほんの少しの髪の毛
宿題のプリントに添えられた君の手
ほっそりした指に
綺麗に切り揃えてある清潔感のある爪
きっとマニュキュアも化粧もしていないだろう
問題文を小さく呟き、わずかに動く自然な色の唇
目を奪われていることに、はっと気付いて
またそっと視線を自分のプリントに戻す
ぽきんっ
「芯、また折れたよ?」
相変わらず、今も昔も、少し舌足らずな喋り方
声変わりした俺とは明らかに違う、女の子の声
シャープペンシルをカチカチとノックする
短過ぎるのか出てこない
「新しいの、入れる?」
差し出されたのはB芯
「何でB? 普通、HB使うっしょ」
Bと言いつつ何気なく君のリボン……の下の、胸のふくらみをちらりと見遣る
Hと声に出したことで胸のどくどくが増す
エロは健全、俺は健全
「Bの方が濃いから見えやすくて好きなの」
君の口から飛び出した「好き」の言葉
じゃあ、俺のことは?
いつもより濃い芯を先っちょからゆっくりと差し込んで、またカチカチとノックする
試し書き
プリントの余白に小さな黒い丸を3つ「●●●」
そこに触角と脚を生やして蟻を描き、横に「×10」と追記
君の顔が綻ぶ
淡い恋心はより色濃くなって
俺のエロ心もより色濃くなって
俺の鼓動は一層早くなって
「なぁ、俺のこと好き?」