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異世界修学旅行で人狼になりました。  作者: ていぞう
遭難編
3/263

第3話 レン 田中蓮

作者は、昔からサバイバル物が好きでした。

登場人物には少し苦労をしてもらおうと思っています。

不時着3日目


それにしても昨日のウミヘビの化け物は何だったのだろう。

地球上の生物で、あれほど巨大で獰猛な生物には心当たりがない。

やはり、ここは異世界なのだろうか。


そんな事を考えていると、木村先生が目の前に現れて


「ソウ、お前、足が速かったよな」


嫌な予感がする。


「イエイエ俺、走るの遅いですよ、バスケ部のリュウヤ君なんかに比べたら兎と亀ですよ。」


リュウヤがこちらを睨む


「もちろん、リュウヤにもお願いするつもりだが、俺と一緒に海岸線の様子を見に行ってくれないか?どうしても水だけは確保したいんだ。」


俺も水は欲しい。喉がカラカラだ。


「俺が先行して安全を確認したら、お前たちも水を運ぶの手伝ってくれ。」


「アキトおまえも頼むよ。」


アキトは二つ返事で


「もちろん、行きますよ、みんなのためにね。それが生徒会長としての責任というものでしょう。」


と胸を張って言った。

胸を張るとき、チラリとヒナを見たような気がしたが・・やっぱり気のせい?


リュウヤは最初嫌がっていたが、やはり水が飲みたいようで最後には承諾した。

レンは木村先生が顔を向けただけで


「行くよ、オイ気合いだ!」


と元気よく答えた。

男前だよ、レン♪

他にも丈夫な男子生徒10名に声をかけて、合計15人で海岸へ物資を取りに戻ることにした。


「いいか、俺が先に行く、波打ち際まで行って海を見張ってるから、その間に、お前達で物資を運んでくれ。」


「万が一俺が食われても、助けに来るな、俺が叫んだら振り返らずに逃げるんだ。」


木村先生も男前だよ。


幸いなことに、木村先生は喰われなかった。

飲料水と医療品はある程度確保できたものの、食料がほぼなかった。

そこで

    A班 木村先生、リュウヤ、ツネオ等8名

    B班 アキト、俺、レン等合計8名

    C班 留守番をして救助を待つ女生徒達


に班分けをし、A班は崖に向かって右側をB班は左側を捜索して食料や飲み水をさがすことにした。

捜索の結果、A班がバナナやマンゴーのような果物が自生しているのを見つけ、持ち帰った。

俺たちB班は、川を見つけた。

その川は出発点から約2キロの場所にあって、川の上流には崖の頂上から落ちる落差20メートルくらいの滝を見つけた。


その滝の右側には崖が崩れて、なだらかな傾斜のある山道があった。

時間がなかったので確認はしなかったが、おそらく崖の上に出ることができるだろう。


 これで、生き延びるための最低限の物資が整った。


俺と、レン、イツキは木陰で休んでいるウタを見舞った。


「ほれ、お見舞いだ。」


レンが、オレンジ味の炭酸飲料を寝ているウタの手元に置く。


「生ぬるいけど、勘弁しろ。」


「いやよ、勘弁しない。氷の入ったグラスも持ってきて。」


ウタが笑う。


「ああ、帰ったら氷をバケツに入れて背中から飲ませてやるよ。オイ。」


レンもウタに合わせて笑う。


「レン君、ありがとう。貴重なものを。」


レンが差し出した炭酸飲料は、さっき命がけで飲料水等を取りに行った時のレンへの個人的な報酬だった。

それを飲めば、救助が来るまでジュース類を飲むことは出来ないだろう。


「バーカ。そんなもの、帰ったらいくらでも飲めるさ、気にスンナ。」


田中蓮は中学校以来の親友だ。

中学1年生の夏休み、既に友達になっていたイツキと街のゲームセンターで遊んでいた。

俺もゲームセンターなんてしょっちゅう行っていたわけではないが、イツキがゲームセンターへ行ったことが無いというので。


「社会勉強だ。」


と言って、イツキを連れて学校近くのゲーセンに立ち寄り、太鼓のゲームで遊んでいた。

元々俺は、リズム感が乏しいし、反射神経も鈍い方だったので低い得点だった。


イツキにそのゲームをやらせてみると、イツキのリズム感は抜群で、ひ弱な体に似合わないバチさばきで、すぐに高得点をたたき出した。


イツキはそのゲームが気に入ったのか、繰り返し同じゲームで遊んでいた。

俺は、他のゲームで遊んでいて、イツキから目を離していた。


「ごめんなさい。ごめんなさい。やめて。」


イツキの声に気が付いて太鼓のゲームの方向に目を向けるとイツキが3人の男子に取り囲まれていた。


「おめー、ルール守れよ。何おうちゃくこいてんだオウ?」


3人の中で一際大きく、いかつい男がイツキの胸倉を掴んで搾り上げている。

3人の男は俺達より、1~2コ上位の年齢で、全員がスタジャンを着て髪の毛を染めている。

いわゆる街の不良といった、いで立ちだ。


「すみませーん。俺のツレが何かしでかしましたか?」


俺は恐る恐る不良の前に出た。


怖かった。


その時、俺もイツキも中学1年生、スタジャンを着て髪の毛を染めた不良3人を相手にするのだから、やっぱり怖い。


「なんじゃ、テメー。こいつのツレか?じゃ、オメーも同罪だな。」


リーダーらしき男が俺を睨む。


「あのー、イツキが何をしたんでしょう?」


「へーこいつイツキっていうのか、名前覚えたぞ、その制服、二中だな。こいつはな、一人で30分以上、太鼓を独占したんだよ。


俺達が順番待ちしているのを無視してな。ここじゃ一人2回まで、2回遊んだら列の後ろに並ぶのがルールなんだよ。それなのに俺達を無視しやがって。」


(知るわけないだろ、そんなローカルルール・・・)


「あの、すみません。僕、夢中になって・・皆さんに気が付かなくて・・ごめんなさい。」


イツキが謝る。


「ごめんなさいじゃねぇよ。俺達3人、30分も時間を無駄にしたんだ。どうしてくれるんだよ!!」


「どうすると言われても・・・」


ようするにゆすりタカリだ。


「ちょっとこっち来いよ。」


俺とイツキを店の外に連れ出そうと男たちがイツキと俺の背中を押す。

物陰に連れ込んでさらに脅すつもりなのだろう。

どうしょうかと思っていた時


「あーあ、みっともないな、下級生相手に。オイ。」


みるからに上級生で、筋骨隆々、身長180センチくらいでスポーツ刈りの男が俺達と不良に近づき声を出した。


「あんじゃ、おめー」


リーダー格がスポーツ刈りを睨む。


「いやー、かっこ悪すぎて、見ていられなかったんすよ。先ぱぁーい。」


スポーツ刈りがリーダーを見下ろす。

リーダー格の男が、少し引き気味に


「関係ないだろうが。」


と言ったが、スポーツ刈りはひるまず。


「それが関係あるんすよね。こいつら俺のご学友だからな。勘弁してやってよ。ネ、シャバ僧先輩。」


「うるせー!!」


リーダーがスポーツ刈りのボディに拳を叩き込んだ。

スポーツ刈りはビクともしない。

それどころか笑っている。


「で?」


スポーツ刈りがリーダーに一歩詰め寄る。


「あ、こいつ知ってる。テル君、こいつ、あれだ。一年で柔道全国大会準優勝したタナカだ。こないだテレビでやってた。おまけにこいつのオヤジ、刑事だぞ。」


不良グループのうちの一人がリーダーに告げる。


「オヤジは関係ない。!!で、どうすんだ。先輩。え。」


・・・・・


「行くぞ・・」


不良グループが店を出ていった。


「ふー。怖かったぞ、オイ。アハハ」


(怖かったのかよ。・・・)


「ありがとう。助かりました。」


イツキが礼を言う。


「ありがとうね。」


俺も礼を言った。


「いいよ、別に、同じ中学校だしね。あんたら1組だろ、俺3組の田中だ。」


(えー同学年だったの?どうみても先輩だが・・・)


「あ、俺はソウ、こいつはイツキ、同学年だったんだね。助かったよホント」


それから、俺達はマックで昼飯を食べて、学校の事や身の上話など、いろんな事をだべって仲良くなった。


レンのオヤジさんはテレビの警察追跡番組にも出演したことのある刑事で、オリンピックの強化選手に選ばれたこともある有名な柔道家だった。


レンも父親の影響で幼い頃から柔道に親しみ、中学一年生の新人戦で全国大会準優勝をするほどの選手だった。

その事件以来、俺、イツキ、レンの3人が連れ立って行動するようになったのだ。





「ウタ、早く元気になってね。」


ヒナがウタを励ます。

ウタは頷く。


「レン君、ソウ君、イツキ君、今夜はここに居てくれない?女子だけだと不安なの・・」


「もちろん、いるぞ、オイ」


レンが返事をした。

5人は寄り添うように固まって夜空を見上げた。


赤い月と青い月が並んでいる。


女性には優しく。

作者のモットーです。

ホントですよ。

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