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異世界修学旅行で人狼になりました。  作者: ていぞう
遭難編
2/263

第2話 化け物 トラウマになりそうだ

第2回目投稿です。




海岸到着後、イツキ達と空を見上げたところ、空には月が二つあった。


大きな赤い月と、赤い月よりは一回り小さい青い月。

月が二つあるなんて、ここは地球じゃないのか?

イツキが不安げな表情で木村先生に向いて話しかけた。


「先生、月が二つに見える現象って聞いたことあります?」


「あー俺は体育教師だからな、天文学は専攻してないぞ、異常気象じゃないか?」


え、これって異常気象って言うの?


木村学は体育教師で2学年担当の主任教諭をしている。

体育教師らしくガッチリした体形で、怒れば怖いが、普段は温厚で、時々笑いの取れない冗談を言う、さっきの「異常気象」も彼独特のジョークかもしれない。


「これって異常気象とは言えないでしょう」

                   

俺たちの担任教師「大下清江」が口を挿んだ。

キヨちゃんは、たぶん30歳前後、本人は20歳代としか言わない。


身長140センチ位やせ型、頭の先から声を出す、とても愛嬌のある人だ。

可愛らしい仕草をすることで生徒からは「キヨちゃん」と呼ばれている。


「そんなことより、他の行方不明の生徒を探しましょうよ。」


生徒会長の島田明人(しまだ あきと)が声を出した。

アキトは生徒会長で頭脳明晰、スポーツ万能、身長183センチ、やせ型、いわゆるジャニーズ系と言われる面立ちだ。

学園内の彼氏にしたい男子生徒NO1をキープしつづけている。


「先生、うちのクラスは全員無事なのですか?」


「ええ、うちは全員無事で、今この場にいるのを私が3度確認しました。」


キヨちゃんが頭の上から声を出して返事した。


「それでも他のクラス、特に飛行機の後ろのほうに居た生徒さんの何人かは、生存を確認できていません。」


「それじゃ、僕たちも協力します。」


アキトが進言する。

木村先生がアキトの前に歩を進め


「アキト、お前の気持ちはわかるが、この暗さだ、更なる被害を出す可能性もある。ここは俺たちに任せてここにいてくれ」


「しかし」


「しかしじゃねーよ、行きたきゃお前だけ行け、俺は動かねーぞ。」


リュウヤだ。

腹の立つ言い方だが、この場合リュウヤの方が正しい。

この暗闇(くらやみ)で海岸から20メートルの飛行機まで泳ぎ、人命救助するのは相当困難だ。

もしかしたら二次遭難だってありえる。


「アキト、言いたいことは分かるけど、俺たちじゃ無理だ、大人に任せようぜ。」


レンがアキトをなだめた。

レンは俺の中学校時代からの親友、柔道部のキャプテンだ。

性格は温厚、いつも笑顔で俺たちをなごませてくれる。


「そうだぞ、アキト、お前の正義感は評価するが、今はこの場を離れずに皆一緒にいることが全員のためだ。」


木村先生はアキトの肩を抱いて慰めている。

アキトは、涙をこぼしていた。

他のクラスの友達を想っているのだろう。


翌朝、再度自分達の状況を確認した。

どこかわからない海岸に飛行機が不時着し、海岸から沖合20メートに座礁している。

機首部分は大破しており、機長、副操縦士の殉職が確認された。


キャビンアテンダント4名中2名は生存していたが、機体後部にいたと思われる2名は亡くなっていた。

学園の生徒と教諭、総勢68名のうち、教諭3名生徒13人の合計16人が行方不明だ。

殆どが水没した機体後部に取り残されていると思われる。

 


夜明けと同時に、大人たちによって機内の捜索が実施されたが、やはり生存者はいなかった。

結局、搭乗員合計75名、うち機長を含めて20名死亡、骨折等の重傷者7名、生存55名、の大惨事だということが判った。


大人達は、遺体の収容も考えたようだが、現在の人手や生徒達への影響を考えて、救助隊に任せることにしたそうだ。


今、俺達がいる場所は、波打ち際から10メートルほど陸よりの岩場混じりの砂浜、海方向には機体、その沖合には、かなり遠方に小島が見える。


陸地側は、30メートルくらいの砂浜を過ぎると、植物の密集地帯(みっしゅうちたい)

植物の密集地帯を過ぎると、高さ20メートルくらいの断崖絶壁になっていて、その断崖は見渡す限り、左右に続いている。


昨夜はクラス全員無事だったことと事故後の興奮もあり、クラスの雰囲気もさほど暗くはなかったが、夜が明けて死者多数の結果を知らされてからは、誰もしゃべらなかった。

女子のうち何人かは声を殺しながら泣いていた。


「救助はまだなの?」


河本希里子(かわもと きりこ)が誰に尋ねるでもなく言い出した。

キリコは女子にしては大柄で身長165センチ位、グラマラスな体つきで宝塚女優のような顔立ちをしている。


キリコは胸が大きい。というか巨大だ。


(今は、そんなことはどうでもいいか・・)


「飛行機の無線は壊れて使えないそうだが、救難ブイといわれるものを使って救助信号は出しているらしい。」


木村先生が答えた。

そんなことを話しているうちにイツキがスマホを取り出した。

防水機能付きのスマホで機能は生きているようだ。


「アンテナ立たない、Wi-Fiもだめだ」


他の生徒も何人かスマホを取り出して確認しているが、どうやら電波圏外のようだ。

俺のスマホは他の荷物と共に機体の中だ。


俺たちは一塊になって、ひたすら救助を待った。

不時着から、概ね20時間は経過しているので、俺たちが乗った飛行機が墜落したことを空港関係者は絶対に知っているはずだ。

今頃、自衛隊が血眼になって探していると思うが、それにしては救助が遅い。


「なんで救助が来ないのよ。」


キリコが怒り出した。


 「河本さん、落ち着いて。救助は必ず来るわ」


「来る来るって、全然来ないじゃないの、お腹は減ったし体は臭いし、何なのよ、この暑さは。」


キヨちゃんが宥めるが、キリコの怒りは一向に収まらない。


「キリコ、やかましいぞ、ただでさえ腹が減ってるのにイラつかせるなよ」


リュウヤがキリコを睨む。

木村先生が身を乗り出す。


「今、スッチーさん達と話し合って、救助が来るまで、食料や医療品を探しに機体まで行くことにした。」


スッチー?キャビンアテンダントのこと?何時の時代の人なんだ、この人は?


「体力のある男子何名かに手伝ってもらいたい。」


アキトが真っ先に手を挙げた。

手を挙げるときに、なぜだかヒナの方へ視線を向けたような気がしたが気のせいだろうか。


「先生、僕が行きます。」


「アキト助かるよ、他に行ってくれる男子はいないか?」


俺はレンと顔を見合わせた。

水や食料は欲しいけど、機体には仏様になった同級生達がいるだろうしねぇ


「手伝いと言っても、生徒を危険な目に遭わせるようなことはしない。機内へは入らずにボートに乗ったまま荷物の積み下ろしをするだけだ。」


機内に入らないのか、それなら行こうかな。

再びレンと目を合わせたらレンが


「いこか?」


と言ったので


「だな」


と答え、俺もレンもゆっくりと手を挙げた。


「ソウ、レン、助かるよ」


木村先生が、俺の肩をバンバンと叩く。


(痛てーよ、怪我人だぞ。)


俺、ソウ、アキト、木村先生、それにキャビンアテンダント2名が、ゴムボートに乗り込み機体へと向かった。


ゴムボートと言っても、20名は収容できる脱出用シューターだから、操船するのに苦労した。

ボートを機体に付け、大人3名が機内へ乗り込み、必要物資を運び出した。


運び出せたものは

 

水 350mlボトル30個入ケース×10

スナック菓子 30個

清涼飲料水ジュースやコーラ 350ml×30個入りケース×3

常備薬セット 1

蘇生器具(AED)セット 1

ドクターズキット 1 (各種注射器や医師資格がないと使えない薬等)



等だった。

国内便なので、機内食はなかった。

これだけの品物を運び出すのに1時間以上かかってしまった。

荷物を積み込んで、船首を岸に向けて漕ぎ出したときに、ボートの後方で、


『ザバン!』


と、大きな水音がしたので振り返ったが、波紋が広がっているだけだった。

キャビンアテンダントの話だと、常備薬や医療器具セットは、もう1セット機内にあるが、機体後方の沈没部分に収納されていて回収できなかったらしい。


俺たちが物資を上陸させると、キヨちゃんと木村先生の指導で全員が大人しく列に並び、水を受け取った。


皆相当に喉が(かわ)いていたので、我先に水を奪い合うかもしれないと恐れていたが、そこはやはり日本人、大人しく秩序正しい。

これが外国人なら、水の争奪戦になっていたかもしれない。


特にリュウヤが大人しく列に並んだのが意外だった。

大人たちは水の配給を終えると医療キットを持って怪我人を見て回った。

怪我人のうち、特にひどい怪我を負っていたのは隣のクラスの池本裕也だった。


おそらく、アバラが折れていて、意識はあるが呼吸は困難のようだ。

他の6人も何処かを骨折して移動は困難な状況だった。


(救助隊が来ないのはなぜだろう。)


俺達の不安は、時間と共に増加していく。

その日は曇り空で、日陰無しでもなんとか過ごせたが、太陽が昇れば海岸に居続けることはできないだろう。


「それにしても暑いなオイ、ハワイまでワープしたか?」


レンがしたたり落ちる汗を手で拭いながら、配給された水を一口飲んだ。


俺は


「ワープなんてあるわけないと、言いたいけど、今まで起こったことを考えると、本当にワープしたのかもな。」


とレンに応えた。

イツキも水を飲みながら


「そうだよねー。ここってなんだか異世界の雰囲気ありますよね。」


とうなずいた。


「カー!、何言ってんだろ、このオコチャマたちは、異世界?そんなもんあるかよ、異世界へ修学旅行に来ったてのか?アホか」


リュウヤは吐き捨てるように言い、ツネオがそれに同調した。


「そうだよ、ここが異世界なら魔法が使えて、魔物もいるってこと?バカみたい。イツキお前そんなのに詳しいだろ、魔法を出してみろ、魔物でもいいぞ。」


えーと、ツネオ君、今、君はとっても危ないフラグを立てたような気がするんですけど・・


「ウワー」

「きゃー」


複数人の悲鳴が上がった。


悲鳴のする方向をみると、電信柱くらいの大きさのウミヘビのような化け物が生徒達を襲っていた。


ウミヘビの太さは電信柱位、長さは7〜8メートル。

そんな化け物が5~6匹いた。


「なに、なに、ええー!!」


ツネオが叫ぶ

ツネオー、お前のせいだかんなー・・・・ホントはちがうけど。


「逃げるぞ。」


我に返ったリュウヤが真っ先にジャングル方向へ駆け出し、ツネオもその後を追って駆け出した。

俺も逃げなければと思いつつも、ヒナが気になった。

ヒナは、俺のすぐ後ろで呆然とその光景を眺めていた。


「ヒナ!ヒナ!!」


「え?はい。」


「何やってんだ逃げるぞ。」


ヒナは一度逃げ出そうとしたが、立ち止まり横たわっていたウタを抱え起こそうとした。

ウタもそれに応えて起き上がろうとするが、動作はにぶい。

それを見かねたレンが


「おりゃ!」


と一気にウタを抱え上げ、米俵を担ぐようにウタを肩にのせた。


「逃げよう」


イツキが駆け出す。


レンがそれに続きヒナ、俺の順でジャングル方向へ逃げ出した。

逃げる途中、振り返ったところ、

隣のクラスの池本がウミヘビに下半身を飲まれていた。


池本は何が起こったのかわけがわからないといった様子で、助けてとも言わず砂浜に両手を伸ばして、何かを掴もうとしていた。



もがきながら、大きく目を見開いた池本と、視線があってしまった。


(たぶんトラウマになるだろうな・・・)


ヒナが振り返りそうだったので


「振り向くな、走れ。」


と大声で叫んだ。

砂浜が途切れてジャングルとの境界線に来た時、海岸線方向を見たが、ウミヘビは追ってきてなかった。

ジャングルへは入らず、その少し手前で腰を下ろし、息をついた。


腰を下ろして周囲を見渡すと、俺たちのすぐそばにリュウヤとツネオ、アキト、少し離れてキヨちゃんと生徒5~6に人がいた。

キヨちゃんに近づくとキヨちゃんはワナワナと震えていた。


「キヨちゃん、大丈夫か?」


「レン君・・先生は大丈夫です。でも池本君たちが・・」


キヨちゃんは目に涙を一杯にためていたが、自分がしっかりしなければと思っているのか、泣き伏したりはしない。

その場に少しの間じっとしていたところ、ジャングルから木村先生をはじめ何人かの生徒が出てきた。


木村先生が人員確認したところ生存が確認できたのは、

    木村先生

    キヨちゃん

    俺を含む生徒 41人

    CA 2人

だった。


後は池本のようにウミヘビに喰われたか、ジャングルへ逃げ込んで出てこないかだ。


「先生これから、どうすんだよ。」


リュウヤの問いに木村先生が振り向いたが、木村先生も、どうしたらいいのかわからないようで、黙ったままだった。


「とにかく今は、ここに固まって動かないようにしましょう。」


キヨちゃんが、震える声で、ようやく言葉を絞り出した。

 それからみんなは一塊になって夜を明かすことにした。


最近、ボートエギングにはまっているのですが。

実際には出てきませんよね。

アイツ

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