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侵略勇者 ブレイダー  作者: テスタロッサ
4/17

強面隊長

          A


「そんなわけであの黒い騎士はしばらくの間、私たちの仲間になりました!」

「どういうわけだっ!!」


 帰ってすぐに隊長に報告したところ、いきなり怒鳴られた。解せぬ。


「え? だって私たち身体が一体化してるんですよ? 私が変身しない限りあの騎士は何もできないんですよ? おまけに記憶無くしとる間はこの星を侵略しても意味無いんですよ? 利害は一致してるんやからこんなん答えは決まってるでしょ?」


 隊長はこめかみを押さえながら盛大なため息を吐いた。

「お前はどうしてそうやって大事なことを相談もなしに決めてしまうんだ。それにいくら理屈を説かれても、侵略者であるその騎士をそんな簡単に受け入れられるわけがないだろう」

 隊長の言葉に、ウェールズ、ヘレナ、レーベ、ティーレが何度も頷く。

「そんなん言われても、じゃあ私ごと監禁します? ただでさえ人数少ないのにそれでちゃんと仕事は回ります?」

 私の言葉に隊長の表情は渋くなる。

「それに簡単なメンテぐらいなら技術部門の誰でもできますけど、がっつり修理ってなったり、強い敵が現れたときに新たに武器とか作れるのは私ぐらいですよ? どう考えても私抜きでは遠からず詰むでしょう?」


 少数精鋭と言えば聞こえはいいけど、実際はただの人手不足である。私が技術部門の責任者とSHARKの副隊長を兼任してるのがその証拠だ。


「まぁそういうわけなんで、ブレイダーをこれからよろしくお願いします」

 多少ゴリ押しではあるけど、なんとか話はまとまった。

「しかし、剣士ブレイダーか。上手く名付けたものだ。確かに宇宙船を叩き斬ったあの剣筋はその名に値するな」

「……でしょう?」


 本当は、見た目が勇者ブレイバーっぽいのに実際は侵略者インベーダーなのでそれらを合わせてみたんだけど、なんとなく言い出せなくなってしまった。


「八神は今日は非番だったな。もう行っていいぞ。今後の方針は明日話す」

「はっ!」

 敬礼して、通信司令室を後にする。


『怖ぇおっさんだなぁ。顔といい、あの威圧感といい』

「侵略しに来た星人がその星の住人にビビんなや」

 苦笑しながら答えつつも、心の中で私はブレイダーに同意する。見た目だけならSHARKの隊長よりも悪役の方が似合う人だ。

「でもまぁ、あれでも歳は私と一つしか変わらんからなぁ。それであの貫禄はすごいと思うわ」

『マジかよ……。というかどういう人なんだ? 隊長って呼ばれてるんだからお前たちの上司だってことはわかるけどよ』

「天城浩一隊長。二十九歳。あんたの言う通り私たちの上司や。

 頭が良くて常に冷静。格闘、射撃、戦闘機の操縦、その他諸々たいていのことは人より上手くできるオールラウンダーな人やな」

『まるで絵に描いたような上司だな』

「せやろ? 私もそう思う」


 作戦の立案、仕事の割り振り、事務仕事、訓練時の指導等、隊長の仕事は多岐にわたるが、それらをそつなくこなせる逸材だ。


『とりあえずすげぇ奴だってことはわかった。でもやっぱ怖ぇからあんまり近付きたくねぇな』

「……あんた、よくそんなんで他所の星を侵略しよう思ったな」


 その日の夜、私は飲み物を買いに外に出たところ、一日の勤務を終えた隊長に出くわした。隊長はどうやら軽く飲んでから休むらしい。


「久々にお付き合いしましょうか?」

「少しだけだぞ」


 冗談で訊いてみたら、予想外な返答がきた。

 いつもなら「責任者が二人揃って酒飲んで、そのタイミングで何かあったらどうするんだ!」と言うところである。どうやら私によっぽど何か物申したいらしい。


 基地の近くの居酒屋に入り、それぞれ酒と適当なツマミを注文する。


 それから二十分後――


「本当にさー、あおちゃんは昔からいっつもさー、周りの迷惑とか全然気にしないでさー、オレがどれだけ苦労してきたと思ってるんだよー」


 ――隊長はベロンベロンに酔っ払っていた。私の呼び方も昔の呼び方に戻ってしまっている。

 この隊長はとても他の隊員たちには見せられない。


「今回のことだってさー、普通に出動させたと思ったらさー、侵略しに来た星人と一体化してさー、なんか変身できるようになっちゃってさー、もうわけがわかんないよ、もー!」

『お、おい、あおい……』

「どうしたん? ブレイダー」

『こいつは本当にあの隊長なのか? もはや別人のようだが……』

「まぁ隊長にも弱点はあるっちゅうことや。酒に弱いんのもその一つ」

『はぁ』

「精神的にキツくなると酒飲むんやけど、めっちゃ弱いからすぐこうなんねん。おもろいやろ?」

『面白いっていうか、別人過ぎて気持ち悪いというか。なんかお前の呼び方とか変わってるし昔からどうとか言ってるけど……』

「私と隊長、幼なじみやねん。昔は隊長が私のお世話係やったんよ」

『そ、そうだったのか……』

「おーい、あおちゃん聞いてるー?本当にもう昔からあおちゃんは……」


 なんだかブレイダーが隊長の豹変ぶりにドン引きしてるみたいだけど、どうやら今はそれどころではないようだ。

「はいはい、ちゃんと聞いとるでー。浩ちゃん」

 しれっと隊長の前のグラスを酒から水に入れ替える。そろそろ飲ますのを止めさせないと基地に帰れなくなってしまう。


 しかしこうして隊長の世話をしても、ちゃんと基地に連れて帰れたのはすっかり夜遅くになってからだった。


 ……ブレイダーの隊長への評価、少しは変わったかな?

今回はあおいパートだけです。

これからはこんな感じでキャラ紹介の話が続くと思います。

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