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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

モニタリング

作者: ざぐまる

 あっ、車が来た。道路を渡ろうとしていた女の子、轢かれちゃいましたね。

 こっちの外国の赤ちゃんは、何かの感染症に罹って生後1年も経たないうちに死んじゃいました。

 安心しますね。



 セキュリティサービスが進歩した昨今、個人情報が流出したくらいでは個人の安全が脅かされなくなりました。

 おかげでこうして他人の人生を簡単に覗き見できるようになったのです。

 もちろん合法ですよ。


 世界の人口は膨らみ続け、今や103億人いると言われています。

 では、一日当たり何人の人が命を落としていると思いますか?

 約22万人だと言われています。

 1秒につきだいたい2.5人が命を落としている計算になります。

 私はこれを知って、とても怖くなりました。

 古来から不老不死は人類の夢でした。

 しかし、これほど科学の進歩した現在でもそれは実現はされず、人類は皆平等に死の前にひれ伏すのです。

 こう話している私だって次の瞬間には死んでいるかもしれない。


 私はこの不安をなんとか解消出来ないかと考えました。

 そして、思いついたのです。

 他人がリアルタイムで死んでいくところを見ようと。

 つまり、自分がその2.5人に入っていないことを確認しようと思ったのです。


 先ほども言ったとおり、現在では個人情報を得ることはとても簡単になっています。簡単というだけで決して安価ではありませんが。

 無作為に他人の人生を覗き見できるパックを購入し、それが死の瞬間であるようにオプションを付けます。

 1秒につき2.5人ですから、本当はこれを3セット購入しようと思ったのですが、0.5人分の空白が生まれると余計な不安を感じることになると気付き、2セットにとどめました。

 2つのモニターで他人が命を落とす瞬間を見続けていると、私は今生きているという安心感をひしひしと感じました。

 2人が死ぬ。私は生きる。2人が死ぬ。私は生きる。


 もちろん私にも仕事や生活があるので、毎秒見続けることは出来ません。

 モニターを眺められない時間は、とても不安です。自分の命が保証されない時間です。

 3時間も空くと、もう居ても立ってもいられなくなるなで、なるべく2時間に1度は見るようにしています。

 重要な商談の最中でも、政府の役人が来ていても、それは変わりません。

 一昔前は個人情報が厳重に保護される時代だったようです。

 私のような不安を抱えた人は、どうやってそれを解消していたんでしょうか。

 他人の死を見られないなんて。

 今の私には考えられません。



 * * * 



 へへっ、他人が死ぬのをひたすら見てるなんて、狂ったオヤジだぜ。

 おっきな会社の社長がこんな重度の性癖を持ってんのに比べたら、俺のなんて大したことねーな。

 あぁ〜あ、他人の性癖見てると安心するぜぇ〜。


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