出逢い
初投稿です。
「さて、勇者グレンよ。魔王を倒すためには強い仲間が必要じゃ。我が国には神より遣わされし聖女がおられる。ぜひとも同行して協力し、1日も早い魔王討伐を願うぞ。」
「……あ、ありがとうございます。」
またメンバーが増えるのか……
日本という国で高校生だった俺は事故で死んだあと、この世界に転生して勇者になり魔王討伐に行く事になった。道中でドラゴンを倒したら、その国の王に城で歓待され、褒美をもらえる事になった。
だが、人が増えるなんて聞いてない!武器とか防具とか役に立つ物をくれ!
いや、魔王相手に人員はいくらいても足りないかもしれないが、今4人女の仲間がいての旅も暗い方の性格の自分には辛いのに さらにもう1人女とか、限界を越えている。根本的に人を信じていない俺にはさらに苦行だった。これから先の旅を考えて憂鬱になる。
心中で盛大なため息をつくグレンだが、傍目には爽やかな青年が神妙に話を聞いているようにしか見えない。王の采配に面と向かって嫌な顔ができない小心者ではあるが、温かい茶色の髪にヘーゼルの瞳が親しみやすい勇者なのだ。
そして、彼の後ろには仲間である4人の女性が付き従っていた。
「聖女様は聖堂にてお待ちです。こちらへどうぞ。」
グレン達勇者一行は謁見の間を出て、広い廊下を女官の案内でついていく。この大陸では主にガストリア教が信仰されていて、王城にも大きな聖堂があるようだった。
「どんな人なんだろうね?聖女様って。」
横から囁いてきたのは、茶色の肩までの髪に緑の目をした幼馴染みのアリアナ。俺が転生した田舎の村の隣の家に住んでいて、6つ年上の兄よりもっと一緒に兄弟のように育ってきた幼馴染だ。
冒険者を目指し故郷を出るとき、ついてくると言ってきかず、なんだかんだで今まで一緒にいる。料理がうまくて助かってるんだが、こいつ戦えないんだよなあ。いろいろ努力して自分の防御はできるようだけど、魔王に会う前に大怪我しそうでホント帰って欲しい。
アリアナの親父さん村の杣人組合の頭領でマジ恐いんだよ。っていうか俺が村を出て同時にアリアナもいなくなった訳で、故郷のみんなにどう思われているのか……責任とれとか言われたらどうしよう……うあああーーーっ村に帰りたくねえーっ!
「わざわざ聖堂まで呼びつけるとは、聖女様は大したものだことっ。」
俺の斜め前を歩くつんとした物言いの、腰までクルクル金髪が長い青い目の美少女は、マルティーヌ。旅の途中で出会った凄腕の魔法剣士だ。生き別れの兄を探しているらしい。
俺がとある村で街道を塞いだ呪いの大岩をぶった切った所に遭遇してから、何を気に入ったのかついてきたのだ。美しく高度な魔術の込められた魔法剣士用の真っ赤な鎧に、言葉遣いや身のこなしから、お嬢様なのではないかとにらんでいる。
高飛車を絵に描いたような感じで上から目線でナチュラルに命令して来るので、何度アリアナと喧嘩になった事か。仲裁も気を使うし、すぐ怒るので精神的に疲れて胃に来る。強い物言いをされると身がすくむようになってきた、明らかにマルティ―ヌのせいで俺の心が弱くなってきている。
付き人を雇うか早急にお兄さんと感動の再開を果たして、とっとと国に帰ってくれっっ!
「あら、その人の噂聞いたことあるわ。この国で上級モンスター討伐の失敗でできた瘴気溜まりを祈りで清浄化したり、瘴気の影響で病んだ人を癒したりしたそうよ。まあ、私より美しいかどうかは知らないけれど。」
いきなりしなだれかかってきたのは、オレンジのロングヘアーに藍色の目の色気のある美人、狼獣人のロヴィーサだ。俊敏な動きの打撃や殺傷力の高い爪での攻撃に、時には離れたところからモンスターの首を落とす不思議な技も持っている。
集団でのモンスター討伐の後の宿でぜひぜひパーティーに加えてほしいと言われ、ロヴィーサの討伐時の活躍を見ていたのでありがたいと頷いたのだが、これがとんでもない女だった。会ったその晩に宿の俺の部屋に夜這いをかけてきたのだ!ビッッッッチ!あばずれ!ヤリマン!
前世での経験から俺は知っている。こういう女は関係を持ったらこっちが浮気した間男だったり、性病を持ってたり、父親の違う子どもを抱かされたりするのだ、そうに決まっている!!
慌てて追い出したものの、野営中にびしょ濡れの肌着でぶつかってきたり、だんだんマントの下の服がどえらいスリットが入ってきたりと色仕掛けに余念がない。そして、そういう状況が起きるとアリアナとマルティーヌがカビの生えたミカンを見るような目で見てくるし、雰囲気がギスギスしてくる。俺は何もしてないのに!辛い……。
「どんな人でも構わない、私の居場所を奪わないでいてくれれば。」
後ろから俺のマントの裾をちょんとつまみながら淡々と述べるのは、エルフの美少女リンだ。透き通るような背中までの白髪に金色の目で、恐ろしく当たる弓矢を操る上に、薬草にも詳しい。
太古の森を通った時に、暴走した大イノシシに狙われ迎え討とうとした所、矢の一撃で倒してくれたのだ。ちょうどエルフの村から一人立ちした所で、一緒に火を囲んでイノシシ鍋をつついているうちに俺になついて離れなくなってしまった。そのままなし崩しにパーティーに入った感じだ。
それはいいんだけど、手を始終つないだりマントに入ってきたりと距離が近すぎる!リンの背丈は俺の胸くらいで、まだまだ子供で甘えたいんだろうが、小学校高学年くらいの女の子にくっつかれていると思うと、「ロリコン!」「変態!」と罵られる声が聞こえるような気がして周りを見回してしまう。なんだか変な汗が止まらなくなって、さりげなく体を離している。しかし無言で距離を詰めてくる。何日かの攻防の結果、マントをつまんで付いてくることで落ち着いた経緯がある。ロヴィーサとはそばにいる位置の取り合いはしたものの、他の2人には子ども枠なのかまあかわいがられている。
「あー、まあ仲良くやっていこう。長い旅で一緒になるんだから。」
なんとも無難な事しか言えないでいるうちに、聖堂前に着いていた。
聖堂付きの騎士達によって、荘厳な両扉が開かれて行く。
その先に、窓からの光が差し込む中たたずんでいたのは1人の少女、と、その周囲を取り巻く3人の男だった。
えっなんか人数多くね……?