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002 プロローグ…夫婦で異世界に来てしまった その2

 ドラゴンらしき生き物の走行速度はとりあえず時速150キロに達することはないようだな。追われるがままに前進したため元の道に戻ろうと思ってもどこから来たかはもう分からない。


 このまま車の速度を落とさず走り続けることができるならなんとかドラゴンを振り切れるようだが、路面は草原なため流石に滑ってスピードを維持しにくい。


 それにドラゴンが飛行してその速度が早かった場合逃げきれなくなる。そして確実に速いだろう。


 どうしよう……


 脱輪や横転覚悟でもっとスピードを出すことは可能だ。もう怖いとかいってられないし、ここは行くしかない!


 ぼくはアクセルを思いっきり踏んだ。ガロォォォっと一際大きなエキゾーストノート。加速感で少し胸が押さえ付けられる。


 奥さんがちょっと心配だなぁ。難しい表情を浮かべながらギュッと車にしがみついているし。いつものちょっと強気なおしゃべり口調も引っ込んじゃってさ。可哀想だけど逃げなきゃどちらにしても無事じゃ済まないし。


 とりあえず今は何も考えずに逃げることに集中!


 そう考えながらミラーで後方を確認したぼくはギョッとする事になる。ミラーから見えたドラゴンは走るのをやめて大きく口を開けていたんだ。喉を大きく膨らませ深呼吸のように息を吸い込んでいる!


 これはもしかして……


 ヤバいヤバいヤバいぃぃぃ!!!


 慌ててハンドルを左に切る。奥さんの身体が運転席のぼくの方まで飛び出て来た。次の瞬間!右側がものすごく熱くなり、視界に青白い輝きが入る。直径3メートルくらいの火の玉が横を通り過ぎ20メートル前方の地面に刺さる。


 今まで見た事の無いとんでもない閃光!凄まじい熱!


 昔見たテレビヒーローの決めポーズを取っている後ろで起こっていた大爆発を思い出した。ヒーローって危ない職業だ!


 グガァァァァン!


 物凄い轟音と震動で車体が大きく揺れた。若干車が宙に浮いてハンドルを取られ、そのまま二、三回転スピンして停車してしまった。


 ドラゴンって本当にブレス吐くんだな!


 あんなもん当たったら確実に消し炭にされちまうよ!なんとか横転は免れたけとこのままじゃ……そう感じながらドラゴンのいた方に目を向けた……けど!


 視界にドラゴンがいない!


 ぼくは辺りを見渡した。このタイミングの目標ロストはかなりやばいぞ!はやく見つけて逃げないと。


 て言うか左下の点滅、気になるぅ!


 その時、一瞬目の前に影が射した気がした。頭の中が真っ白になり背筋が冷たくなる。脳内に警報が鳴り響くような感覚に襲われる。


 まさかドラゴン……空を飛びやがった??


 アクセルを思いっきり踏んで急発進させたる。もう何も考えられない。少しでも移動しないとやられる!


 ギャギャギャギャ!!ホイルスピンしながらも何とか車が発進した……次の瞬間!


 バッギャァァッ!


 物凄い衝撃と破壊音がして愛車の屋根がどこかへ行ってしまった。ついでにリアガラスやスポイラーも吹っ飛んでしまった。ドラゴンが空中から足の爪で車体を掴み引きちぎってしまったのだ。


 一瞬にしてスポーティクーペからカブリオレになっちゃったよ!


 少し前へ進んでいたため直撃は免れる事が出来たけど、もう走行する事は出来なさそうだ。ものすごい風圧と焼け付く匂い、そしてふわっと香る甘い刺激臭を感じたよ。


 この匂い……ガス漏れだ!もうダメだ!車内から出なきゃ。明らかにガソリンが漏れちゃってるよ。もし今ブレスなんか吐かれた日には確実に引火して爆発だ!


 ぼくは自分と奥さんの締めていたシートベルトを外し、彼女を抱えて助手席側から車外に飛び出した。ゴロゴロと転がりながら見えたものは、車に向かってトドメとばかりに空から襲いかかる巨体。


 バギバギバキッ!


 足の爪が車体にくい込んでいくのが見える。ぼくたちより車を攻撃対象にしてくれていたのはラッキーだが、たかだか数メートル前での出来事なので大した違いではないように思える。黒い鉄のボディにトドメを刺さんとするドラゴンの喉元が膨れ上がった。


 距離にしてわずか数メートル先なのに!!


 目の前が真っ白に輝き、物凄い熱さが伝わってきた。ドラゴンの口から吐き出された吐息が車体を焦がした次の瞬間、赤黒い輝きが周囲を包んだ。


 ドムゥッッ!!!


 一瞬空気がピンと張りつめ、直後にとてつもない轟音が響く。このままでは奥さんが、いや、奥さんとお腹の子供の命が……



「家族は、ぼくが守る!」



 ッッヅガガァアァン!!!


 大爆発が起こりぼくたちはは吹き飛ばされた。ゴロゴロ転がりながらもなんとか彼女を庇う様に抱き抱える。そして爆発に対して守るように背を向ける。


 迫り来るとてつもない炎と熱!熱い!苦しい!でも逃げちゃダメだ!ぐうう!


 熱と煙で喉が焼けるようだ。背中はもう痛いかどうかすら分からない。目が痛いし涙が止まらない。周囲は煙でどうなっているかよく分からないけど奥さんは倒れているぼくの腕の中でモゾモゾ動いてる。とりあえずは生きているようだ。


 多分数秒から十数秒しか経っていないんだろうけど、すごく長い時間が経っている気がする。少しずつ周囲の煙が晴れてきた。



 ドラゴンはどうなった?



 ぼくは首を降って辺りを見渡し霞む目を見開いた。


 すると左後ろに小山のような影を見つけた。ピクリとも動いてない。アイツだな。どうやら爆心地のドラゴンも無事では済まなかったみたいだ。


 その時、ビュウと一陣の風が吹き周囲の煙を晴らした。


 ドラゴンの首、顎の下50センチ辺りに何かが突き刺さっている。


 あれは……ボンネット?


 ドラゴンは前足を使って頭を支えようとしたんだけど、なんと頭がポロリと取れてしまった。


 まさにアイツは首の皮一枚繋がっていたんだね。まぁダメだったから意味は違うのか。


 切れた頭部から噴水のように体液を撒き散らしながらゆっくり倒れてくるドラゴン。い、いやいやこっちに倒れてくるんじゃないよ!


 ずずずぅぅぅん!!!


 ドラゴンはぼく達のすぐそばに倒れ込んだ。やった、助かった。危なかったぞ!身体中も既に感覚は無いし胸は焼け付く様だしでもうボロボロだけどとりあえず生きてはいるな。


 奥さんもピクピクしてるからまだ大丈夫みたいだ。良かった。


 はぁ〜


 ぼくは大きく溜息を着いた。


 口から何かがドバッと溢れ出た。

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