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178 異世界の汚物を消毒しよう! その3

 チュールの露払いとは言い難い程の蹂躙劇が終わり、ぼくはチュールと共に金髪を引き摺りながら城に入った。


「ひいいいぃぃぃぃ、殺さないで、殺さないでぇぇ…」


 金髪は失禁しながら頭を抱えて震えている。まああれを見たらこうなるだろうな。


 ぼくも少し怖いもん。


「ん?ヒーロさん、今何を考えました?」


 なんにも?


 城の中にも残敵が多数居て、10人単位で散発的に襲って来る。その全てが不届き者だの下郎だの言って有無を言わさず襲い掛かる。


 この国の習慣に染み付いている『人を下に見て対等としない』と言うしきたり。


 幾らぼく等が不審者でも、誰なのか、どこから来たのか、何が目的なのか、それを聞かないと情報も無いし根本が解決出来ない。


 ぼく等を虫程度にしか見ていない証明だよね。ただ、家主より数倍強い虫だけど。


 彼等は病気みたいな物、それも不治の病。多分治らない。


「おい、お前の親は何処にいるんだ?」


「ひいいい!ごめんなさい!ごめんなさいぃぃぃぃ!」


 金髪は謝ってばっかりだよ。怖いのは分かるけど最初の威勢の良さはどうした?


「あなた、ヒーロさんが質問をしておられるのです。答えなさい。」


 チュールがちょっとキレ気味で金髪に質問した。何故キレ気味って分かるかって?そりゃあ口調と顔付きが違うでしょうよ。


「ひえええぇぇぇぇ…」


 金髪はそのまま気を失ってしまった。


「チュール、脅かしちゃ駄目だよ。」


「す、すいません。そんなつもりは無かったんですけどね。」


 チュールはちょっとシュンとしてぼくの腕を掴んだ。


 うふふ、めっちゃ可愛い。


「まあいいさ、馬鹿なやつと偉いやつは高い所にいる物さ。それに、何故か偉いやつが歩く所には赤い絨毯を敷きたがるんだよね。」


 ぼくは常々思ってるんだけど、なんで偉い人は赤い絨毯を歩くのかな?権力は流された血の量で強くなるとか言うけどさ、血を流さずに統治をする方が遥かに難しいよね。


 赤は神聖な色だとか言う話もある。古代の時代に王様に妻が赤い絨毯を歩かせようとして、そんな物を歩けるのは神々だけだと断ったとか。中々センス良い王様だな。


 流された血を忘れない様に、って事にしても仰々しいし、緑とかが目に優しいからそうしたら良いと思います。


 今はどっちでもいいか。


 赤い絨毯が敷かれている階段を上がって行くと広間に出た。正面に大きな扉があり、そこに50名程の騎士が並んでいる。


 先頭に居た人がぼく達の前に出て来て話し始める。


「この先は王や国の重鎮の方々がおわす間です。貴方が何者かは分かりません。だが強い。我々では貴方達を止める事は出来無いでしょう。お願いですからどうか矛を納め、出来ればお帰り頂きたい。」


 おっ、ちょっと話が分かりそうな人だな。


「只でとは申しません。我々の生命を捧げます。」


 駄目だ、全然分かって無かった。


「駄目です。それは対話交渉ではありません。」


 ぼくは彼の話を遮る。


「ぼくはヒーロと申します。こちらはチュール、ぼくの妻です。妻は美しいですけどあまりジロジロ見ないで下さいね。」


 少し巫山戯て話してみた。騎士達の反応は無い。つまんないな。


「うふふ、美しいですって!ヒーロさんったら人前ですよ。うふふふふふ。」


 ああこっちにボケが決まってしまった。ボケ返しだし。


 ん、んんん、気を取り直して、と。


「ぼくは目の前に出て来る脅威に対して全力で駆逐します。力で主張しかしない輩は魔物と同じだからです。でも対話を以てぼくを懐柔しようと言うのであれば、ぼくも対話を以てお相手をいたします。対話と言うのはその名の通り対等な話し合いだからです。」


「我々は既に貴方と対等では無いではないですか。我々は弱く、貴方は強い。それでも我が主を守るにはこの生命を捧げるほか無いではないですか!」


「おかしな話だ。」


 ぼくは彼の主張を斬る。


「何故ですか!?」


「あなたの言い分で言えば対等では無いあなたの生命はぼくに対して軽過ぎる。ですからあなた達が自決した後ぼくはあなた達の屍を踏みながら扉の向こうに進みますよ。考慮する必要が無いですから。」


 騎士は少し怒った様にぼくに向かって叫ぶ。


「我々の生命に価値が無いと言うのですか!?貴方を止めるのに我々は生命を掛けるしか無いのに!」


「簡単に生命を掛けるからあなた達の生命は軽く見られ、ぼくと釣り合わないんだと言う事が何故分からないんでしょう?もっと話せばいい、頼めばいい。そうすればどこかに妥協案があるかも知れないんです。それと無償の恩恵が全ての人に共通して通用するとは思わない事ですね。天から降る雨は大地に恵みを与えますが、普段はただ服が濡れる煩わしい物でしか無いのです。」


 騎士はぐっと言葉を飲んだ。言い返せないだろ?言葉とは凄い力を持っているんだ。


「我々はどうすれば良いのでしょうか?」


「分からないから他人の助言を得ようとする事はぼくは有効だと思いますよ。ぼく達のやりたい事はこの国の王に責任を取らす事。彼の言動のせいでひとつの街数千人が滅び掛けたんですから。後はサルの群を掣肘します。この国の貴族制度は崩壊していますから。最後に、蝿の解体ですね。騎士団だったか?あれは不要だ。ゴミの塊。最低でも人間で構成される集団に再構成し直す事ですかね?」


 背後の騎士が叫んだ!


「我々を馬鹿にするのか!!」


「あなたが今馬鹿を露呈しましたよ。他人に図星を指されて激昴するのはそれが真実だからです。蝿の騎士団よ!お前達は私欲の為に情報に踊らされ、手持ちが無いと言って無辜の民から財を奪い、古く勇者が交わした約束を自ら破り、その弱さ故に魔物に破れ、その上助けたぼくの功を我が物にしようとした。お前達は死骸に集る蛆虫なんだ!恥を知れ!馬鹿者!」


 ぼくからドンと音がするかの様に怒気が溢れ出し周囲を押し潰す。


 その怒気によって殆どの騎士達は倒れて動けなくなってしまった。

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