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64話 香織とのカラオケボックス

 スィーツ店を出た後に、カラオケボックスのテナントが入っているビルへ行く。

エレベーターでカラオケボックスの階で降りる。

カラオケボックスのカウンターで、人数と時間を決め、渚が受付票を受け取る。

カラオケルームへ入って、鞄を置いた後に、それぞれ、ドリンクバーで飲み物を持って、部屋へ戻る。


 目をキラキラと輝かせて、一番先に歌を登録したのは若菜だった。

そういえば若菜は歌とダンスが大好きで、大の得意だったことを忘れていた。

普段は静かな若菜だが、ダンスをこなして、歌唱力も完璧だ。

普段の大人しい若菜からは想像もできないほどエネルギッシュだ。


 はじめは圧倒されていた雄太、武彦、香織の3人だったが、段々と調子を取り戻し、武彦はソファの上で跳ね飛んで歌っている。

渚もいつになく熱のはいった美声を聞かせている。


 時には渚、ひまり、若菜、香織の4人が2つのマイクで大熱唱する。

武彦と雄太は女子4人をスマホのカメラで撮るのに忙しい。

光輝はカラオケは苦手なので、なるべく目立たないようにコーラを飲む。



「あー……楽しい……こんなに楽しかったら、もう少し早くきたらよかったな」



渚が珍しく興奮して、リラックスした雰囲気で微笑んでいる。

香織の目から大粒の涙が流れる。



「最後にこんな楽しいカラオケができて、あたしも満足や。思い残すことなく、次の学校へ行ける」



 それを聞いた、皆が驚いて香織を見る。



「本当は皆に言うつもりはなかったんよ。でも、やっぱりキチンと挨拶しとこうと思って……」



 香織は静かに光輝の顔を見る。

光輝は頷いて、香織の後押しをする。



「実はあたし、また転校すんねん。理由は家の都合や。都会の進学高校へ通うことに決まってん。光輝だけには今日、伝えてたんやけど……皆に話すの、ちょっと恥ずかしかったから……黙って転校するつもりやってん……ゴメンなさい」



 それを聞いた渚が頷いて、香織の傍まで歩いていって、香織を抱きしめる。

渚には何か予感がしていたのだろう。

全く驚かずに、香織を受け止めている。


 ひまりは驚いて、大粒の涙を浮かべている。

若菜も一緒だ。


 雄太と武彦も口を開いたまま、驚いている。



「皆に黙っていてゴメン。香織から口止めをされていたんだ。香織が今日、皆と最後に遊びたいと言っていたから、その気持ちを叶えてあげたかったんだ」


「光輝が悪いんやあらへん。あたしが頼んだから……最後に皆で楽しく遊べて、本当に嬉しいわ」


「それならもっと楽しく騒ごうぜ。香織が絶対に忘れられないように」


「それがいい。もっと盛り上がって、香織を送り出してやろうぜ」



 雄太と武彦が明るい歌をドンドンと登録していく。



「皆……ありがとう……皆のこと、絶対に忘れへんから」



 香織は渚からハンカチを借りて、顔を拭いて笑顔になる。

それからは男女入り混じって、大合唱が始まった。

隅に座っていた光輝も捕まって、皆と一緒に大合唱に加わる。


 雄太と武彦がスマホで写真を撮り続ける。

若菜はシャウトやコーラスも担当して、盛り上げる。

ひまり、渚、香織の3人は笑顔で手を取り合って歌っている。


 香織はひまりの隣に来るとこっそりと耳元でささやく。



「ひまり……光輝と幸せになるんやで……あたしもそれを願ってるから」


「うん……ありがとう……絶対に幸せになるね」


「あたしも早く彼氏を見つけるわ……そんで幸せになんねん」



 香織はひまりを見て、嬉しそうに笑顔で抱き着いた。

ひまりも香織にギュッと抱き着いて、2人で微笑み合う。


 カラオケの時間も延長し、皆で別れを惜しむように、香織と抱き合いながら歌っていく。

香織は雄太と武彦とも抱き合っている。

雄太と武彦はビックリして、慌てている。

それを見て香織は笑顔で笑っている。



「光輝……短い間やったけどおおきにな。世話になったわ……ひまりを大事にしたってな」


「ああ……香織こそ、相談したいことがあったら、いつでも連絡してこいよ。相談ぐらいには乗るからさ」


「あかん……光輝にそんな優しいこと言われたら……あたし、泣いてまう……でも、幸せになったら連絡するわ」



 香織は顔を赤らめて照れ笑いを浮かべて、光輝と握手を交わす。

そして、光輝から離れて、若菜達の元へ戻っていった。


 それから1週間も経たない間に、香織は次の学校へと転校していった。

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