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54話 香織の失恋

期末考査のテストが終わり、全員にテスト結果が返却された。

雄太は渚のアドバイスのおかげで赤点を取らずに済んだ。


武彦もひまりも光輝も成績は中の上をキープしている。


渚と若菜はいつものとおり成績上位だ。

意外だったのは、転校してきたばかりの香織が成績上位だったことだ。

編入テストにも合格しているので、頭は良いと思っていたが、上位の成績を取るとは思わなかった。


「これが私の実力や」


香織が雄太と武彦に自分の答案を見せて遊んでいる。

香織の中では、雄太と武彦は遊び相手として定着したようだ。

雄太と武彦は悔しそうな顔をして、黙っている。


「あまり雄太と武彦をからかってやるなよ。あいつ等も頑張ったんだ」


光輝はそう言って、ハシャいでいる香織をたしなめた。

すると香織は、光輝の回答用紙と覗き込む。


「光輝は最近、あんまり勉強してないみたいやね。小学校の時の光輝は頑張り屋さんやったのに」


「昔話はやめてくれ。小学校の時のことなんて覚えてないよ」


「私はちゃんと覚えとるで。だって光輝と一緒におれたんは小学校の時までやから」


そう言って、香織はふと寂しそうな顔をする。

転校した先では、あまり友達は少なかったのだろうか。


「それにしても光輝の成績、手抜きと違うん?」


最近、ひまりと同棲を始めてから、自分の勉強を疎かにしていた結果、あまり成績はよろしくない。

逆にひまりは、光輝に勉強を教えてもらっていたので、飛躍的に成績が伸びた。


「ヤッター! 光輝に教えてもらった問題もでていたし……頑張ったおかげで点数もあがったし……」


隣でひまりが無邪気に成績が上がったことを喜んでいる。

これからは、ひまりに勉強を教えるだけではいけない。

自分の勉強にも集中しようと思う光輝だった。


「ほんまに2人、仲ええな。見ていて羨ましいわ」


そう言って、香織は自分の席へと戻っていった。

その後ろ姿はなんだかションボリとしていた。



普段は香織は自分達の友達グループと一緒にお弁当を食べている。

光輝はひまり、渚、若菜の3名と雄太、武彦の2名と共にひまりの手作り弁当を食べている。

必然的に、昼休憩は香織と光輝達は別行動だ。


早く食べ終わった香織が光輝に声をかけてくる。


「少し光輝と話したいことがあるんやけど……光輝を借りてもええかな」


「うん……いいよ。光輝……早く帰ってきてね」


ひまりはそう言って、手を振って光輝を教室から送り出す。

光輝と香織は昼間に生徒の少ない、部活棟まで歩いてきた。

その間は始終、無言だった。


「光輝はひまりに信頼されてるんやね」


「ああ……そうだな。付き合い始めたのは1学期の始めだけどな」


「私もその頃に転校しておけば良かった……そうすれば……」


香織が何かを言いかけて止める。

珍しく、香織にしては元気がない。

そして誰もいない場所で立ち止まる。


「あんな……ハッキリと言っておこうと思ってん……この学校に転校してきたんは光輝がいたからやねん」


「そのことは以前に聞いたぞ」


「そうやなくて……私にとって光輝が初恋の男子やねん。ずっと好きやってん。中学に入ってからも忘れられへんかった。それで光輝の爺ちゃんに相談したんや」


香織が始めに言っていたことは嘘だったのか。

俺を追いかけて転校までしてくるなんて。

こんなことは、ひまり達には聞かせられない


「転校初日に光輝の顔を見た時には嬉しくて、心臓がドキドキして止まらんかった」


香織は恥ずかしそうに顔を赤くながら話を続ける。


「でも、光輝には、もうひまりという恋人がいた。そのことを知った時、すごいショックやった」


確かに好きな男子に付き合っている女子がいればショックを受けるだろう。


「ひまりは超美少女やし、素直で、元気で、明るくて、女子から見ても可愛いし……あたし、悔しいけど、ひまりのことも好きになってしもてん……だから2人の邪魔できへん」


「ひまりのことも好きになってくれてありがとう」


「ありがとうって言わんといて……ひまりがもっとイヤな女子だったら、力ずくで光輝をアタシのものにしてたんやから」


男子にも女子を選択する意思というものもある。

光輝は香織の彼氏になるつもりはなかった。

しかし、このことは黙っておこう。


「だから……光輝のこと諦めるわ……夏休みに田舎へ戻ったら、両親と光輝のお爺ちゃんとも相談して、これからどうしていくか決めるわ」


「この学校にいればいいじゃないか」


せっかく大変な編入テストまで受けて、転校してきたばかりだ。


「そんなことしたら、いつもひまりと光輝のことを羨ましく思うてまうやん。そんなのイヤやし」


「香織がこの学校をイヤでなければ残ってもいいと思うぞ。それは香織が決めることだけど……」


「ありがとう……光輝はいつも優しいね……そんなに優しくされたら未練が残るやん。もっと毅然として、私のことフッてほしい」


香織がそういうなら、きっちりと言ったほうがいい。

光輝は心を無表情にする。


「俺はひまりが好きだ。だから香織の彼氏になれない」


「おおきに……これでスッキリとしたわ。私……もう少しだけ1人でいたいから、光輝だけ先に教室へ戻って」


自分がフッた相手にかける言葉など見つからない。

何を言っても、香織を悲しませるだけだろう。

部活棟に香織を残して、光輝は1人で教室へと戻った。


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