46話 女子との昼食会
1限目の授業が終わり、光輝は意を決して、雄太と武彦へ話しかける。
「あのさ……今日から正式にひまりと付き合うことになったんだ……2人にはその報告をしておこうと思って」
「ふーん。もう学校の中では公認のカップルになってたしな。いつ、付き合ってもおかしくなかったからな」
「光輝が弱腰だっただけで、ひまりは積極的だったからな。光輝さえ勇気をだせば付き合うことになるだろう」
雄太と武彦は予想外に冷静な答えを返してきた。
もっと慌てふためいたり、焦ったりすると思っていたが意外だ。
2人に反応に光輝が困る。
「今まで光輝が弱腰すぎたんだ。ひまりほどの美少女に言い寄られたら、すぐにOKするのが男子だろう」
「俺には勿体ないとか……関係ない話だろう。向こうが好きと言ってるんだから、素直に付き合えばよかっただけじゃん」
雄太と武彦の容赦のない言葉が光輝の胸に突き刺さる。
2人はそういう風に考えていたのか。
俺だけが弱腰になってビビッていただけなのか。
光輝は初めて、自分だけが違う意見を持っていたことに気づいた。
「それなら、なぜ今まで黙って見てたんだよ。もっと教えてくれても良かっただろう」
「みんな自分の幸せを願ってるんだ。俺は絶対に渚を諦めないからな。光輝のことなんて眼中にない」
「誰が人に幸せな道を教えてやるもんか。光輝の幸せなんて俺は望んでいないの。俺は俺の幸せを望んでるんだ……早く若菜と付き合いたい」
雄太は渚を、武彦は若菜のことで頭がいっぱいらしい。
こんなに簡単に2人に許されるなら、気合を入れる必要もなかった。
「やったじゃん……2人も許してくれてるし、これからは堂々と廊下も一緒に歩けるね」
ひまりは嬉しそうに、光輝に椅子を近づけて、光輝の手を握って、体を寄り添わせる。
それを見た雄太と武彦が悔しそうな顔で、拳を握っている。
「この幸せ者2人め。いつかお前達に、俺達も追い付いてやるからな」
「頑張ってねー……期待せずにまってるし……」
ひまりは嬉しそうに笑って、雄太と武彦の2人を挑発する。
「また、騒ぎになるから、これ以上は止めておこうな」
「はーい」
ひまりは素直に返事をすると、光輝の腕に顔を埋めた。
◇
「光輝……学食へ行くぞ」
「悪い……今日はひまりが弁当を作ってくれて、ひまり、渚、若菜と一緒に弁当を食べるわ」
「「なんだと――!」」
「だから2人と一緒に学食に行けない……今度、付き合うよ」
雄太と武彦は光輝の両腕をつかむ。
なにか怒っているようだ。
さっき、ひまりと正式に交際すると告げた時には何も怒っていなかったのに……なぜだ?
「光輝……お前がひまりとイチャつこうが、俺達は全く関心はない。どうでもいい。ただ……渚と一緒に弁当を食べるというのはどういうことだ?」
「そうだぞ……若菜と一緒に弁当を食べる必要はないだろう。お前だけズルいぞ」
そんなことを言っても、ひまりは常から渚と若菜と一緒に昼食を食べている。
ひまりと一緒に弁当を食べるのだから、当然ながら渚と若菜とも一緒に弁当を食べることになる。
そのことで抗議されても困る。
「仕方ないだろう……ひまりは常から、渚と若菜と昼食を食べてるんだから」
「お前達は付き合い始めたんだろう……2人だけで弁当を食べればいいじゃないか」
武彦が口を尖らせて言う。
そんなことをすれば女子の輪からひまりが外れてしまうことになる。
特に渚と若菜とは仲が良いから、一緒に昼食を食べさせてやりたい。
「それはできない……ひまりにも女友達は必要だし」
雄太と武彦は複雑な顔で光輝を見ている。
そしてハッと気づいたように雄太が目を輝かせる。
「そうだ……明日から母ちゃんに弁当を作ってもらえばいいんだ。そうすれば渚と一緒に弁当が食える」
「なるほど……雄太にしては名案だ。俺も明日は母ちゃんに頼もう」
確か、雄太のお母さんも、武彦のお母さんも、お弁当を作るのがイヤで、学食になっていたと思うが……
本人達が母親に頼み込むというのだから、余計なことは言わないでおこう。
「光輝、残念だったな。明日からは俺達も弁当をもってくる。お前だけを幸せ者にするもんか」
武彦が上機嫌で光輝に言い放つ。
武彦と雄太は肩を組んで、上機嫌で学食へと向かっていった。
◇
机を4つ組み合わせて、1つのテーブルにして、渚、若菜、ひまりと一緒に弁当を食べる。
女子達は嬉しそうに、弁当のおかずを分け合っている。
もちろん、光輝も参加だ。
すると若菜が不思議な顔をして、ひまりと光輝の2人を見る。
「なぜ……2人のおかずは一緒なの? まるでひまりが光輝のお弁当を作ったみたい」
「うん……今日は早起きして、朝から頑張ったんだから」
確かに朝の6時頃から弁当を作ったと、ひまりが言っていたな。
「やっぱり2人はカップルなんだね……いいなー……少し羨ましいです」
「若菜も頑張って彼氏を作りなよ……武彦なんてどう?」
「……あまり武彦のことは知らないの。でも、もっと大人しい人のほうが好みかも」
武彦よ……若菜はお前には無理かもしれない。
「私は大学までは彼氏はいらないわ。だって、面倒そうなんだもん」
雄太よ……渚は大学まで彼氏は作らないらしいぞ。
女子3人と楽しく昼食を食べていたが、若菜と渚の意外な答えを聞いてしまった。
これは、あの2人には絶対に告げられない秘密だ。
女子の昼食会では、男子に話せないことが多く語られていることがわかった光輝だった。




