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3話 突然の出来事

 新井雄太……1年A組で一番の有名人だった彼。とにかく沸点が低く、すぐにカッとなりやすい。

他校生と喧嘩をして停学したこと数回、喧嘩っぱやいことで最も有名な男子だ。


 鋭い目つきが怖い。今でも睨まれているような感じがする。



「そんなに雄太のことを怖がらなくても大丈夫だよ。案外、誤解されやすいタイプだからさ。雄太でも良い部分はあるんだよ」



 ひまりの前の席から男子の声が聞こえてくる。確か……元1年A組で、新井雄太と同じクラスだった山下武彦ヤマシタタケヒコだ。



「雄太は実は照れ屋さんなんだぜ。怒られることには慣れてるのに、褒められることに慣れてないんだよ。だから雄太と上手く話すには、雄太を褒めておけばいいのさ」


「武彦……いい加減にしねーとマジで怒るからな」



 そういって、すでに雄太は武彦の頭を抱えて、ヘッドロックをかけている。

雄太の全力のヘッドロックをくらって、武彦は「痛い 痛い」と悲鳴をあげている。


 それを見たひまりは、初めはクスクスと笑っていたのに、段々とお腹を抱えて笑い出す。



「チョー楽しい。雄太に武彦だね。覚えたわ。2人のコンビは最高ね……ああ…面白い」



 光輝も雄太と武彦の絡みを見ていて、自然と顔の表情が緩んだ。

実に相性の合っている2人だ。

見ていて飽きない。



「私は苑田ひまり(ソノダヒマリ)っていうの。雄太も武彦もよろしくね」


「やった! 雄太のおかげで、美少女1人ゲットだぜ」



 武彦がひまりの前の席で小さくガッツポーズをしている。

なんでも表現してしまうのは武彦の癖だろう。



「私なんて美少女じゃないよ。ちょっとギャルなだけだもん」



 大きく豊満な胸元のボタンは2つまで外されていて、すこし屈めば下着のブラが見え隠れする。

そして明らかに校則を違反しているスカートの丈の短さ。

少し体を回転すれば、すぐに下着が見えてしまいそうだ。

シャツを着ているのに、それでも胸の形の良さが立体に見えてしまう。


 顔も美少女だけど、体形はモデル体型で、胸が豊満にでかい。

学年NO.1ギャルと言われるだけのことはある。

学年でひまりのことを知らない男子はいないと言っていいだろう。



「お前は誰なんだよ? 名前?」



 雄太に促されて、自分がまだ自己紹介していないことに気づいた。

その時、先にひまりが動いた。



「彼は高賀光輝コウガテルキ君、元1年C組。平和主義者で大人しい印象が強いかな。誠実な男の子だよ。私の推し男子だから。隣になれたの超チャンスなの……だから2人共、邪魔しないでね」



 なぜひまりが俺のことを何でも知っているように説明しているのか、誰かに教えてもらいたい。

超チャンス? 邪魔しないでね? 言っている意味がわからない……理解したくない。


 今まで小・中・高と目立つこともなく一般のモブをしてきた。

それなのに、学年NO.1ギャルのお気に入りだったなんて、今まで知らなかった。

顔を少し引きつらせて光輝は、自分が今どんな顔をしているんだろうと考える。



「苑田さんって、光輝みたいなタイプが好きなんだ?」



 すかさず、武彦がひまりに突っ込む。



「下の名前で呼んでいいからね。皆、そうだから。そうだね……私はどうしても目立っちゃうから、彼氏は目立たない、平和主義の男子がいいかな。光輝がその気になってくれると嬉しいんだけど……本気にしてない…みたいなんだよね」



 当たり前だろう。

今日、席替えがありました。

隣に学年NO.1ギャルの超絶美少女が座りました。

その美少女から告白に似た言葉を告げられています。

こんな非現実的なことを信じろと言われても無理があるだろう。

今まで名も忘れられるほどのモブだぞ。

影の薄さには自信がある。



「すぐに信じてなんて言わないよ……絶対に信じてもらうもん。言葉よりも行動で信じてもらう。そのほうが早いから」



 前の席から腕が伸びてきて、いきなり頭をヘッドロックされる。

何かと思えば、雄太が笑顔で腕に力を入れている。


「痛い……痛い……痛い……何すんだよ」


「なんだかムカつくんだよ……クソ。羨ましすぎるじゃねーか」


「やれー雄太! そんな羨ましい男子はヘッドロックだ」



 雄太がヘッドロックを極めて、武彦が応援の声を出す。

雄太のヘッドロックは、さすが力自慢だけあって、すごく痛い。

慌てて、ひまりが動いて、雄太の腕をもってヘッドロックを外す。



「だから言ったよね……私は平和主義が好きなの……これ以上、光輝を虐めるなら2人共、口をきいてあげないよ」



 雄太も武彦もそれぞれにひまりに謝っている。

ひまりは俺の顔を両手で持って、顔を近づけてくる。

その美貌に目が泳いでしまう。

まともに視線を合わせることができない。



「痛かったでしょう……本当に男子って野蛮なんだから」


「大丈夫だよ。俺も男子だし。これぐらいは平気だよ」


「良かった……」



 いつの間にか、光輝はひまりの豊満な胸に顔を埋めるようにして、頭を抱きすくめられていた。

 自分でも今の状況が非常にマズイということはわかるが、柔らかい胸が気持ちいい。

武彦と雄太は何も言わずに、黙ったまま固まっている。


 徐々に異変に気付いたクラスの生徒達が沈黙して、ひまりと光輝を見ていることを肌で感じる。

クラス中の生徒達全員が、今は吸い込まれるように1点を見つめている。

そして、次の瞬間には爆発が起こったような、大騒ぎへと発展した。

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