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19話 お泊り会の昼下がり

 ひまりから静かな寝息が聞こえてくる。

静かに寝ている寝顔を確かめて、光輝は部屋を出る。



「ひまり……大丈夫だったか? 俺達……悪いことしちまったな」


「まさか銃のゲームでパニックになるとは思わなかったよ」



 雄太と武彦がへこんでいる。

あんなパニックを見たのは2人共、初めてのことだろう。

別に雄太と武彦が悪いわけではない。

ゲームに参加したひまりにも問題はある。



「ひまりの個人的な事情だから、詳しくは話せない。2人のせいではないから。これはひまりの問題だから」



 テーブルに座っている渚が雄太と武彦を励ます。



「ひまりの過去に何かあるのか? トラウマになっているようだけど?」


「私もひまりからハッキリしたことを聞いていないの。もし、聞いていたとしても、本人がいない所で話せないわ」



 確かに渚の言う通りだ。

いくら親友だからと言っても、ひまりの個人的な事情を話すことはできない。

光輝も気になったが、今度、話す機会があったら、直接、ひまりに聞こうと思う。


 雄太と武彦はゲームをやり始めた。

渚はキッチンで紅茶を作って、皆にふるまっている。

ダイニングに平安が戻ってきた。

光輝は渚から受け取った紅茶を一口飲む。



「光輝の家って、窓から陽光が入ってきて、とても落ち着く家ね」


「そうかな……毎日暮らしているから、慣れてしまってわからないけど……確かに住みやすい家だね」



 渚は紅茶を一口飲んでテーブルに置く。

その姿はおっとりしていて、清楚だ。



「私とひまりは中学の時に出会って、親友になったの。それから今まで一緒だったんだけど……ひまりが初めて男子の興味をもったのは光輝だけよ」


「……」


「始めは私も影の薄い男子としか思わなかった……けれど、この数週間で光輝という人物を観察して、決して影が薄い男子ではないということがわかったわ……ただ、目立とうとしないだけ」


「目立って良いことにあったことがないんだよ。俺は平和主義なんだ。だから常に中立でいたいんだよ」



 光輝の答えを聞いて、満足したように渚は微笑んで、紅茶を一口飲む。

その姿はとても画になっており、まるで1枚の絵画のようだ。

ひまりも美少女だが、渚も違うタイプの美少女だということを実感する。



「だから喧嘩も強いのに、実力を見せていなかったのね……スポーツも万能なのに平凡なフリをして……そんな光輝だからひまりは惹かれたのかもしれないわね」


「俺としては超絶美少女のひまりが俺みたいな平凡な男子を選んだことを不思議に思うよ。ひまりの前では特に飛び抜けたことをした覚えもないし……」


「光輝は知らないだけ……ひまりは高校1年生の時から光輝を見ていたもの」


「高校1年の時なんて、本当に影が薄かったよ。誰からも話しかけられないぐらいにね……だから友達が少なかった……少数はいたけどね」



 その言葉を聞いて、渚がクスリと微笑む。

こんなにリラックスしている渚を見たのは初めてだ。



「ひまりの告白は保留にしているのに……やっぱり、ひまりのことが気になるのね。光輝って優しいのね。そこまでひまりのことが気になるなら、付き合っちゃえばいいのに」


「俺には勿体ないんだよ。ひまりは眩しいぐらいな美少女だし、性格も明るくて素直だ。とても良い女子だと思っている。だからこそ、俺みたいな男子でいいのか自信がないんだよ」



 毎回、誰かに言っていることだが、このことは本当のことだ。

本気でひまりは自分には勿体ない美少女だと思ってる。

一緒に遊び始めて、内面を知っていく度に、良い子だなと感じている自分がいる。

ひまりの内面についての印象は誰にも話したことはない。



「コラ……ひまりがいるのに渚に近づくな」



 いきなり雄太が立ち上がってきて、光輝の頭をヘッドロックする。

雄太は顔を真っ赤にしている。

相当に渚のことを意識しているようだ。



「お前もゲームに参加しろよ。お前だけ、まだゲームしていないだろう」



 そういえば、光輝がゲームをする前にひまりがパニックを起こしたんだった。

光輝はテーブルの席から立ち上がってテレビモニターへ向かう。

雄太がコントローラーを渡す。

さっきのゾンビが出てくるゲーム。

主人公が銃を乱射してゾンビを倒していくゲームだ。


 光輝はあまりゲームをしたことがない。

しかし、この手のアクションゲームは得意だ。

画面に出てくるゾンビ達を、銃弾1発で狙撃していく。



「スゲーじゃん。俺達よりもゲームが上手いぞ。1回も死なずに進んでる」



 光輝にとって警察官をしていた両親は誇りだ。

爺ちゃんから父さんと母さんは拳銃の名手だったと聞いている。

だから、光輝は銃の名手になりたいと密かに思っていた。


 祖父母に警察官になることだけは止められている。

もう、両親のような悲劇を見たくないと、泣いて説得された。

だから、今の光輝は警察官を目指していない。

しかし、他界した両親のことを誇りに思っている。


 意識が一瞬離れた隙にゾンビに噛まれてゲームオーバーになってしまった。


 後ろを振り返ると、雄太が一生懸命に渚と話している姿が目に入った。

雄太の邪魔をしてもいけない。

コントローラーを武彦に渡して、2人でゲームをすることにした。

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