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14話 ひまりの一言

 生徒指導室で事情聴取を受けてから10日間が経過した。

慎吾は停学開けから、学校に登校をはじめたが、あまり元気がない。

既に、影の薄い貧弱な男子生徒に、暴力で取り押さえられたことが、噂として広まっている。

これから、彼が暴力を盾に他の生徒を恫喝しても、誰も慎吾のいうことを聞かないだろう。


 慎吾は次に停学を受ければ、停学1週間となり、より重い罰が待っている。

度が過ぎていれば退学処分もあり得る状態だ。

それを知っているだけに慎吾も慎重に行動するしかない。


 少しやりすぎた面もあるが、慎吾に反省を促すには良い機会だったと光輝は思う。


 この1件で、光輝の名前は三雲高校中に広がって、光輝のことを知らない生徒はいなくなった。

そして、いつの間にか、ひまりの彼氏ということで、周知の事実として知られるようになった。

 そのことについて、ひまりは胸に手を当てて、喜んでいる。

まだ、互いに付き合う前に、既成事実だけが出来上がってしまった。


 光輝が思いにふけっていると、隣の席のひまりが顔を覗かせてきた。

その笑顔はまったくの無邪気で、光輝を信頼しきっている笑みだ。



「ねえ、光輝、何を考えているの?」


「この10日間で、自分の立ち位置が随分と変化したなと思って、再確認していたんだ」


「今までの光輝に対する評価がおかしかったのよ……皆、やっと光輝のすごさがわかり始めたのよ。私としては嬉しいわ」



 光輝としては全く良い結果ではない。

小・中・高と影を薄くして暮らしてきたのに、高校2年生になってから、一気に皆に知られることになってしまった。

 これは光輝の計算外の事態であり、今までの計画が無になってしまった。

平穏な学生生活を送っていきたかったと、光輝は目をふせる。



「ねえ……光輝。光輝って1人暮らしなんでしょう」


「ああ……そうだけど何かそれが気になるのか?」


「男子の1人暮らしって、少し興味があるのよね。今度、光輝の家に呼んでよ。私……光輝の家に行きたい」



 学校の平安が崩壊したばかりなのに、1人暮らしの部屋の平安まで崩されたくない。

ここは、ひまりには申し訳ないが、断るしかないだろう。



「俺も光輝の部屋へ行ってみてーな。俺の家は両親共働きだから、妹や弟達がうるさくて、1人になる時間がないんだ。1人の時間が持てる光輝が羨ましいぜ」


「ひまりと雄太が光輝の家に行くなら、俺も行ってみたい。俺だけ除け者にするのは止めてくれよな」



 雄太までが光輝の部屋に興味を持ち始めた。

そして武彦までが一緒について来るという。



「あら、面白い話をしてるわね。ひまり1人を男子3人の中に入れるのは問題があるわ。私もひまりの保護者として一緒に行くわ。それなら大丈夫でしょう」



 渚がひまりの保護者として、光輝の部屋へ来るという。

渚だけが頼りだったのに、その渚も乗り気だ。



「男の1人暮らしなんて、家には何もないぞ。皆の持っているようなゲーム機もないし、パソコンもない。あるのはスマホだけだぞ。あとは生活用具だけだ」


「光輝の部屋に誰も期待してねーよ。ゲーム機なんかは、持参でいいんじゃね。設置するなんて簡単だし」


「俺の家に使わなくなった家庭用ゲームが眠っているぞ。みんなでやるのも楽しいかもしれないな。遅くなったら光輝の部屋へ泊っても問題ないだろ」



 雄太、武彦、頼むからいらないことは言わないでくれ。

男子達は問題なくても、ひまりと渚は女子だから問題あるだろう。



「皆でお泊り会なんて、私、今までしたことないの。夢だったの……やっと実現するのね」


「ひまりが喜ぶなら、保護者としては夜も付き合うわ。私も泊まる用意をして行くわね」



 渚……どうして、ひまりを止めてくれないんだ。

渚も美少女だし……2人共、警戒心が薄すぎないか。



「渚……少しはひまりに自重するように言ってくれよ」


「だって、未だにひまりの告白に答えもだせないような、光輝の部屋でしょう。安全に決まってるじゃない」



 その言葉を言われると何も言い返せない。

ひまりと渚はお泊りの準備に何が必要か、相談を始めている。

雄太と武彦は、皆に見えないようにしながら、小さくガッツポーズを決めている。


 これはダメだ。

今更、反対意見を言っても、誰も言うことを聞いてくれる状態ではない。



「それじゃあ、いつ泊まりにいく? 女子には準備もあるだろう。男子はいつでもいいんだけどさ」



 武彦が率先して、お泊り会のリーダーにおさまった。

それを雄太と渚がサポートする。



「そうね……今度の土曜日に泊まりに行って、日曜日に帰ることにしましょう。そのほうが、ゆっくりするわ」


「それがいいな。俺も弟や妹から解放されて、自由に楽しむことができる。光輝に感謝だな」



 土曜日といえば後2日か。

その間に大掃除をしておく必要があるだろう。

皆が部屋に来た時に、平素の汚い部屋を見せることはできない。

2日で大掃除を終わらせることができるだろうか。

光輝は、大掃除の計画を頭の中で組み立てる。



「せっかく成績優秀な渚も来るんだから、土日の学校の宿題は持ってくるようにな。特にひまりは忘れないように。俺の家にいてもきちんと宿題だけは終わらせてもらうぞ」


「はーい。渚と光輝がいれば楽勝じゃん。家にいる時よりも宿題がはかどるから、助かる――」



 雄太、武彦、ひまり、渚で、お泊り会のスケジュールを作り始めた。

皆、旅行に行くように笑顔で話し合っている。

ただ、光輝の部屋へ遊びに行くだけなのに、すごい盛り上がりようだ。



「今度の土曜日と日曜日……お泊り会を楽しみにしてるからね。光輝も張り切ってね」



 ひまりは、顔を輝かせて、ニッコリと幸せそうに光輝に微笑んだ。

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