第九話「血縁と真実」
翌日、いつものように同じ時間、同じ場所で彼らは集まっていた。
「全員、調べてきたかしら?」
「私はばっちりだよ。」
「僕はいまいち収穫はなかったかなあ。」
「…関係があるかはわからないが、気になるものは見つけたぞ。」
「気になるもの?」
「ああ。」
返事しながら鞄の中を漁り、ファイルの中から挟まれていた紙を取り出して、ユネに差し出す。
「本郷谷家の家系図だ。これ、よく見てみろよ。」
ユネは言われるがままに注視した。
「本郷谷アヤと本郷谷シンジの間に、四人の子供がいて、それぞれ、本郷谷トクシゲ、本倉コウウン、本郷谷シオリ、本庄コウ。次男の本倉コウウンと本倉チトセの間に高識セツナと伏谷トウカ。長女の本郷谷シオリと本郷谷ガクの間に本郷谷マドカ。三男の本庄コウと本庄アマネの間に本庄マサキと加治木サクヤ…これって。」
「ああ。この家系図が本物だとしたら、俺らは、本郷谷アヤの血によって繋がっている。」
アキラ以外の全員が唖然としていた。まるで、フィクションのような家系図なのだ。
「まって、それってつまりどういうことなの?」
「私達は、作られた物語の登場人物ってこと…?」
「なにが本物で、何が作り物かわからないねえ。」
頭がうまく働かない。本当に、登場人物だったのか。
「私、どうしたらいい?物語だとしたならば、私達の人生は、どうなってしまうの?」
ユネは酷く動揺してしまっている。今まで自分が生きてきたのはなんだったのか。自分という登場人物の存在意義はなんなのか。頭の中をたくさんの考えが渦巻いている。
「ユネ、落ち着いて。この本に何か手がかりがあるかもしれない。」
ユネは、マコトに渡された本を手に取り、おぼつかない手つきで本のページをめくる。
<あなたは、小説の中の人物の、書かれなかった人生を考えた事はありますか。この本は、物語に描かれる事のなかった登場人物の人生について、考察した本です。>
この文章を読んだユネは、自分の求める答えが、この本に載っているかもしれないと思った。
<物語の登場人物の人生は、設定され、小説や漫画で描かれて続いていきます。では、その人生を終わらせてしまうのは誰なのでしょうか。小説を書いた人?読者?その物語の登場人物の人生の終わりは、読み手や書き手の解釈によるものと考えています。>
ユネは、はっとした。自分の事をあまり考えていない事に気付いたのだ。この物語がもしも綴られているとして、作者がその物語を終わらせたとしても、自分が生きている事に変わりはないのだ。
<例え、自分が登場人物の立場だったとしても、作者の立場だったとしても、物語を続ける方法を考えるのです。自分にとって、人生を続けるというのはどういうことなのか、考えて行動する事が大事なのだと考えられます。>
自分にとって、物語を終わらせない方法を考えればいい。
「物語を、終わらせてはいけない。」
彼女は焦燥感のある声色で呟いた。




