第五話「放置と嫌悪」
翌日、センの人脈とやらによってアキラと接触出来る事になった。放課後、ユネ、マコト、センの三人は、空き教室でアキラを待っていた。
「本郷谷アキラってどんな人なのかしらね。」
不意にユネが口に出す。それに対してセンは返事を返した。
「誰とも関わりを持たない、一匹狼ってやつかな。学校にはちゃんと来ているようだけど、見かけたことは少ない。ちゃんと姿を確認できるのは集会の時くらいのレアキャラだね。」
「そこまで人との関わりを絶ってるのか…」
「それなのにこっちまできてくれるなんて、どういうことなのかしら。」
「僕にもわからないんだよね。てっきり断られると思ってたし。」
などと雑談をしていると、教室のドアが開いた。
「俺を呼び出した高識ってやつはお前か。」
センとは違って学ランのボタンをきっちりと上まで止めた、赤い髪の男子生徒が現れた。
「ああ、僕だよ。よく来てくれたね。」
そう言いながら、センはアキラに手を差し出す。
「馴れ合いに来たつもりはない。そこの二人は何なんだ。」
アキラは怪訝な顔をしてセンに問う。
「ああ、彼女達にも用事があったからここにいるだけさ。気にしないでくれ。」
「ふん。で、用事ってのはなんだ。」
「君に聞きたいことがある。」
「聞きたいことって何だよ。」
かなり不機嫌そうな態度で聞いてくるが、それに気にも留めず、センは答える。
「単刀直入に聞こう。今朝図書室を荒らしたのは君かなあ?」
その問いを聞いてアキラは顔を伏せる。
「…ははっ。」
一声出したかと思うと、彼はいきなり顔を上げた。
「笑わせてくれるな。生徒会長さん。」
「何かおかしい事でも言ったかなあ。」
口調は穏やかだが、低く、冷たい声色で話す。
「はっ。確かに俺が図書室を荒らした張本人だ。だがそれを知ってどうする?俺に反省文でも書かせる気か?くだらねえな。」
「反省文を書かせようという気はないよ。ただ、君に聞きたいんだよ。何故そんなに本を嫌うのか。」
「俺が本を嫌ってる?馬鹿なこと言うんじゃねえよ。」
アキラはセンを鋭く睨みつける。その目には、おぞましいほどの憎悪が渦巻いていた。
「特別に教えてやる。俺は本が嫌いなんじゃない。本が憎らしいんだ。」
「…それは何故だい?」
センは刺激しないように問う。ユネとマコトは、見守る事しか出来なかった。
「…親父とババアのせいだよ。」
「どういうことかな。」
「さあな。後は自分で探してみろよ。じゃあな。」
吐き捨てるように言い放ち、その場を去っていった。
「…ふうん。興味深いなあ。」
そう思考を巡らせるセンに、ユネは声をかける。
「これから、どうするんですか。」
「あ、ああ。そうだねえ。彼の両親について調べるのがいいと思うよ。」
「アキラの両親か。どんな人なんだろう。」
「僕の情報網によると、彼の親は有名人らしいねえ。」
ユネは、また何か引っかかりを感じた。早く調べたい。そう思って二人に提案する。
「とりあえず、今日はもう遅いし解散して、各自で調べたらどうかしら。」
「賛成!」
「それじゃあ、詳しい調査は明日だねえ。」
「ええ、また明日よろしくお願いします。」
「もちろん。また明日ねえ。」
「また明日!」
彼女らは解散した後、各々の家路についた。
家に帰ったユネは、先ほどから気になっていた本郷谷という苗字を検索してみた。すると、本郷谷マドカ、本郷谷タカシという名前が出てきた。その二人の名前をさらに詳しく調べていくと、二人とも、小説家だということがわかったのだ。マドカは家族愛をテーマに、タカシは少年の未来をテーマに小説を書いているらしい。彼女は、彼らの小説を読んでみようと思い、本屋へと出かけていった。




