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第一話「続きと生命」

 はじめまして、私は誹楠<ヒナもしくはハイナ>と申します。仕様により読みはハイナのみですが、どちらでお呼び頂いても構いません。


 活動していたところで小説を公開出来る最後の機会が終わりましたので、前々から気になっていたこちらのサイトに投稿しようと思い、実行させて頂いた次第です。


 この小説は、先ほど述べた公開できる最後の機会に載せた作品に、少々修正を加えたものになります。全十話構成のお話なので、毎日午後九時に投稿しようかと思います。初投稿なので至らない部分も多々ありますが、私の世界をお楽しみくださいませ。

 授業終了を知らせる鐘が鳴る。それと同時に、鞄の中から一冊の本を取り出し、栞が挟まれているページを開く。いつも彼女がとる行動だ。窓から一列離れた一番後ろの席で、読書を嗜む金髪の女子生徒の名は、加治木ユネ。今日も一人、休み時間を全て使って、作られた物語の結末を見届けるのだ。


 昼休みを告げる鐘が鳴り、彼女はまた本を開く。それと同時に、水色の外はねショートカットの女子生徒が彼女に近づく。彼女の名は、伏谷マコト。作られた物語の結末の続きを書いている少女だ。

「ユネ!お昼一緒に食べようよ!」

目を輝かせ、昼食を共にしようと誘う。これは、例の物が出来たというサインだ。

「あら、早かったのね。いいわよ、そこの席とくっつけましょう。」

「うん、今回のは書きやすかったからね。」

そういいながら、どうだと言わんばかりの笑顔を見せている。そうして、彼女達は談話しながら昼食を済ませると、マコトは荷物をまとめる。

「それじゃ、また放課後。その時に渡すね。」

そう言って、彼女は教室を後にした。ユネはそれを見届けると、いつものように残りの昼休みの時間を余すことなく使い、本の続きを読み進めるのだった。


 放課後、荷物をまとめたユネは、マコトの教室へ向かっていた。その途中、生徒達が急に端によけ始める。それに習い、彼女も端によけ、本を読み始める。何故生徒達がそんな事をするのか。それはすぐに分かるだろう。

「生徒会のお通りだぞ!」

「生徒会長様が通る道をあけろ!」

そう、今日は丁度、生徒会長の要望により、行進が行われる日だったのだ。

「やあやあ、みんな元気かなあ?」

制服をだらしなく着て、へらへらと笑いながら手を振るこの男子生徒の名は、高識セン。こんな風貌をしているが、これでも成績はトップクラスなのだという。そして、ユネの前で止まり、口を開く。

「やあ、加治木さん。今日も読書かなあ?」

やや気に障る口調で話しかけるセンに、ユネは顔も見ずに答える。

「そうですけど。」

「はっはっは。そんなぶっきらぼうなところもいいねえ。今度お茶でもどうかなあ。」

ユネは内心、このナンパ野郎。とでも思っていることだろう。

「お断りします。」

「そうかあ、まあ気が変わったら教えてよ。僕はいつでも空いてるからねえ。」

一方的にそう言って、彼は去っていった。何故、彼は彼女にいちいち声をかけてくるのだろうか。ユネは読んでいた本を閉じ、再びマコトの教室へと進んでいく。


 マコトの教室に着き、彼女がいないか覗くが、誰もいないようだった。恐らく、先に下駄箱に行かれてしまったのだろう。ユネは下駄箱へ向かった。


 下駄箱に着くと、原稿用紙を眺めるマコトがいた。

「マコト、お待たせ。」

「ユネ!遅かったじゃんかあ。」

「ごめんなさいね、会長に絡まれてたからどうしようもなくて。」

マコトは、あー、あいつか。というような顔をしてうなずく。

「それじゃ、いつものとこ行きますか。」

二人はそれぞれの下駄箱から自分の靴を取り出し、上履きから履き替えて、校門のほうへと向かっていった。


 三十分経った頃、二人がいつも行くユネの実家の飲食店に着いた。この飲食店は、ユネの祖父母の代から続いていて、地域のお馴染みの店となっている。中に入ると、まだ五時半前だというのに客でいっぱいだった。なんとか空いてる席を見つけ、腰掛ける。

「おや、いらっしゃい。いつもの読み合わせかい?」

彼女達に声をかけた、茶髪の人のよさそうな初老の男性は、ユネの父親の加治木サクヤだ。黄色とオレンジのエプロンがとても似合っている。

「そうよ。だから邪魔しないで。」

「ははっ、分かってるさ。注文が決まったら呼んでくれよ。」

「分かってるわよ、父さん。」

塩っぽい返事をしながら、使い込まれたメニューを開く。そこには、オムライス、ハンバーグ、とんかつ定食、天丼、ナポリタン、日替わり焼き魚定食、バニラアイス、日替わりフルーツゼリー、オレンジジュース、コーヒー、ウーロン茶、サイダーなど、昔から何も変わっていない内容が記されていた。

「今日は私の奢りよね。好きな飲み物とデザートを選んでいいわよ。」

「はーい!じゃあ、サイダーとバニラアイスでお願いね!」

「はいはい。」

ユネはメニューを戻しながら、父親を呼ぶ。

「父さーん!決まったー!」

「はーい!今行くよー!」

遠くのほうからサクヤが返事をする。程なくして、サクヤが二人のテーブルまで来た。

「注文をどうぞ。」

と笑顔で待っている。

「サイダー二つとバニラアイスと日替わりフルーツゼリーでお願い。」

「了解!すぐ作って持っていくよ。」

「ええ。」

注文をとり終えると、サクヤはいそいそとキッチンのほうへ行き、注文を伝える。一方、ユネとマコトは、話を始めていた。

「それで、例の物は?」

「ああ、本倉コウウンのDynamic Suicide Idol.の続きの話でしょ?」

「そう。見せて頂戴。」

「はいはい、どうぞ。」

彼女から原稿用紙を受け取ると、ユネは早速読み始めた。一枚目を読み終わるかというところで、サクヤがサイダー二つとバニラアイス、そして、日替わりフルーツゼリーを運んできた。

「おまたせ、ユネ、マコトちゃん。」

「ん、ありがとう、父さん。」

「ありがとうございます!」

「いえいえ。ゆっくりしていってね。」

最後に伝票を置くと、サクヤはまた仕事へと戻っていった。ユネは運ばれてきたサイダーを一口飲み、再び原稿用紙を読み進める。

 全て読み終わると、原稿用紙を丁寧に整えて、マコトに返す。

「どうだった?」

純粋に好奇心を抱いているかのような表情で問うマコトに、ユネは冷静に返事をする。

「そうね、まだ〈生きている〉と言うには足りないわね。」

「うん。」

「けど、まっすぐに感情が表現されていて、主人公の性格にはかなり沿っていると言えるわ。」

「うん。」

「百点満点で言うなら、八十八点といったところね。」

「八十八点かあ、前よりちょっとあがったな。」

「好みで言うなら前のほうが好きよ?」

「そっか…うーん…難しいなあ。」

マコトは、頬杖をつき、考える素振りを見せる。

「どうする?この話書き直してくる?それとも、新しい話の続きでも書く?」

「そうだなあ、新しい話が書きたいかなあ。」

「わかったわ。じゃあ、マコトが帰るときに本渡すわね。」

「うん、ありがとう。」

そう会話を終えてやっと、ユネはゼリーを食べ始めるのだった。



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